近年、家族信託(民事信託)は、財産管理や承継の手段として注目を集めています。特に、沖縄県那覇市や東京都江東区のような都市部では、高齢化や相続に関する課題が深刻化しており、多くの家庭が家族信託を活用しようと検討しています。しかし、家族信託にはメリットだけでなく、注意が必要なデメリットも存在します。本記事では、家族信託の主なデメリットとその対策についてわかりやすく解説します。
1. 意思能力を喪失した後では利用できない
家族信託を設立する際、契約の成立には委託者(信託財産を預ける人)の意思能力が必要です。認知症などで意思能力が欠如している場合、契約は無効となり、家族信託を利用できません。
- ポイント
初期段階の認知症であれば契約が可能な場合もありますが、症状の進行具合は予測困難です。そのため、意思能力が十分にある段階で早めに信託契約を検討することが重要です。 - 対策
家族信託を検討する際には、信託契約書を作成する前に医師の診断書を取得し、意思能力を証明しておくと安心です。
2. 損益通算ができない
家族信託を利用した場合、信託財産から得られる収益と、それ以外の財産の収益との間で損益通算ができません。
- 例
収益不動産を信託している場合、その不動産で発生した赤字を他の収益で補填することはできず、税負担が増加する可能性があります。 - 対策
修繕費がかかる不動産や収益性の低い資産を信託する場合は、事前に税理士へ相談し、損益通算の影響を把握しておくことが大切です。
3. 節税対策にはならない
家族信託は節税対策としては直接的な効果がありません。むしろ、税金に関する誤解がトラブルを招くケースもあります。
- 注意点
家族信託を設定することで、信託財産に関する課税対象が変わる場合があります。特に、不動産を信託した際の登録免許税や不動産取得税が発生する点に注意が必要です。 - 対策
節税を目的とする場合、信託だけでなく、遺言や生命保険などの他の手段と組み合わせる方法を専門家に相談すると良いでしょう。
4. 信託できない財産がある
家族信託では、すべての財産を信託できるわけではありません。
- 主な信託不可の財産
- 農地(農地法の制約あり)
- 年金受給権(ただし、年金振込口座を信託財産に含めることは可能)
- 対策
信託契約を締結する前に、信託可能な財産をリストアップし、必要に応じて法的な確認を行うことが必要です。
5. 成年後見制度でしかできないことがある
家族信託は財産管理に特化した制度であるため、生活支援や医療契約といった「身上保護」には対応していません。
- 解説
意思能力を喪失した場合、医療契約や施設入所契約などは成年後見制度が必要になることがあります。 - 対策
家族信託と任意後見制度を併用することで、財産管理と身上保護の両方をカバーできます。
6. 税務申告の手間がかかる
信託財産から年間3万円以上の収入が発生する場合、受託者には税務申告が必要です。
- 必要な書類
- 信託計算書
- 信託財産に関する明細書
- 対策
税務申告が複雑になるため、税理士にサポートを依頼することで負担を軽減できます。
7. 長期間にわたる受託者の拘束
信託契約が開始されると、受託者は契約内容に基づいて財産を管理する義務を負います。これは場合によっては数十年続くこともあります。
- 注意点
長期間の財産管理により、受託者の負担が大きくなる可能性があります。また、家庭内のトラブルに発展するケースもあります。 - 対策
信託内容を簡素化し、受託者の負担を軽減する設計を行うことが重要です。必要に応じて専門家に相談しましょう。
8. 受託者が暴走するリスク
家族信託では受託者に大きな権限が与えられますが、その権限を乱用されるリスクもあります。
- 例
委託者の意図に反した財産運用や管理が行われる可能性があります。 - 対策
受託者の選定時には、信頼できる人物を選び、監督者を置く仕組み(受益者代理人や第三者監督人)を導入することが効果的です。
9. 遺留分侵害額請求の対象となる可能性
家族信託契約が法定相続人の遺留分を侵害する場合、遺留分侵害額請求が行われるリスクがあります。
- 注意点
遺留分を侵害する内容の信託契約は無効とされる可能性があります。 - 対策
遺留分を考慮した信託設計や、生命保険を活用した代替手段の検討が有効です。
結論 専門家のサポートでデメリットを克服
家族信託は財産管理や承継に非常に有効な手段ですが、デメリットも多く存在します。信託を成功させるためには、事前の計画と専門家のサポートが欠かせません。沖縄県那覇市や東京都江東区にお住まいの方で、家族信託をご検討中の方は、ぜひ当事務所にご相談ください。適切なアドバイスとサポートで、家族の将来を安心して託せる仕組み作りをお手伝いいたします。