経審P点の全体構成と加点戦略、X・Y・Z・W点のバランスと評点Pの伸ばし方

公共工事に参入するための関門である経営事項審査(経審)。その中で最終的に算出されるのが総合評定値(P点)です。
このP点は、公共工事の入札参加資格に直結する極めて重要な指標です。

本記事では、P点の仕組みと、それを構成するX点(規模)、Y点(技術力)、Z点(社会性)、W点(経営状況)について解説し、実務上どの項目に注力すれば効果的にP点を伸ばせるかを、戦略的にご紹介します。


目次

1. 経審P点とは?―公共工事参加のための基準値

P点(総合評定値)とは、公共工事に参加する建設業者が、どの程度の能力や信頼性を持っているかを数値化したものです。

このP点に基づいて、自治体や国は入札参加資格のランク付けや、参加可否を判断します。

評点Pの構成式(令和6年時点)

P点=(X1 + X2)× 0.25 + Y × 0.15 + Z × 0.2 + W × 0.25 + 絶対評価点

  • X点(X1+X2):経営規模(完成工事高+自己資本など)
  • Y:技術力(技術者数、元請実績)
  • Z:社会性等(ISO、防災協定、建退共など)
  • W:経営状況(財務指標)
  • 絶対評価点:業種ごとに異なる、全国一律の調整項目

このように、複数の点数が加重平均されてP点が算出されるため、いずれか一つが突出していても高得点にはなりません。
バランスよく底上げする戦略が必要です。


2. 各構成要素の解説と戦略的な加点方法

(1)X点:経営規模の評価(配点25%)

  • X1:完成工事高(直近2年平均)
  • X2:自己資本額・利益額・従業員数などの経営体力

対策ポイント:

  • 完成工事高は、元請実績を含む正確な計上が不可欠
  • 人件費・使用人数が極端に少ないと点が伸びにくい
  • グループ会社との取引や外注比率に注意(見せかけ売上と判断されないよう)

(2)Y点:技術力の評価(配点15%)

  • 有資格の専任技術者・監理技術者の人数
  • 元請としての完了工事実績(過去3年)

対策ポイント:

  • 技術職員を増やし、資格取得を支援
  • 公共工事の元請実績を確保することで確実に加点
  • 建設キャリアアップシステム(CCUS)登録やCPD(継続教育)の実施も有効

(3)Z点:社会性等の評価(配点20%)

  • 防災協定の締結
  • 建退共加入状況
  • ISOやCPD
  • 障がい者・若年者雇用
  • 継続年数・法令遵守状況

対策ポイント:

  • 形式的な取り組みでも、証明書類を提出すれば得点対象
  • 年に一度の経審前に、Z点加点対象項目をすべて棚卸しすることが重要
  • 特に中小建設業者はZ点で差がつきやすいため、取りこぼさないことが鍵

(4)W点:経営状況(配点25%)

  • **財務健全性(流動比率、自己資本比率、売上高経常利益率など)**に基づく点数
  • 決算書に基づき客観評価

対策ポイント:

  • 金融機関と連携し、決算書の見せ方を最適化
  • 経審特化の税理士や行政書士と協力し、経審用決算を整える
  • 代表者貸付金や仮払金の圧縮、利益計上の調整が重要

3. P点を伸ばす戦略的アプローチ

【戦略1】まずはX点とY点を固める

X点とY点は、売上規模と技術者数・実績で構成され、直接的な実力値に直結します。

  • 安定的に元請実績を積み上げる
  • 技術者の資格取得(特に1級施工管理技士)を支援
  • 業績を伸ばして、正規の人員確保と黒字決算を実現

これらは時間はかかりますが、最も確実にP点を押し上げる方法です。


【戦略2】Z点は“書類で取れる”加点、確実に押さえる

Z点は、比較的容易に対策できるのに、見落とされやすい項目です。

  • 退職金共済(建退共)の加入と証紙貼付記録
  • ISOやCPDの取得・実施状況の記録
  • 防災協定は団体締結でも加点可能

事前にチェックリストを作成し、毎年更新を確認する運用が有効です。


【戦略3】W点(財務指標)は“見せ方”と“準備”で変わる

W点の高得点は、経営の健全性の証です。

  • 自己資本比率を高める
  • 短期借入金の圧縮や不要資産の除却
  • 「仮払金」「貸付金」の計上には特に注意(マイナス評価になりやすい)

建設業に強い専門家と連携し、毎年の決算を経審用に最適化することが重要です。


4. P点の目安と目標設定

P点の目安入札ランク例(自治体による)
900点以上上位Aランク(大型工事参加)
800点台Bランク(一般的な中規模工事)
700点台Cランク(小規模工事)

公共工事を主軸に据える企業は800点以上を目標にするとよいでしょう。
Z点やW点を適切に積み上げれば、中堅企業でも900点台に届く可能性は十分あります。


5. まとめ ― P点は総合戦略でバランスよく積み上げる

P点は、単一の項目で一気に伸びるものではなく、各構成要素を計画的に積み上げることで強化される“総合評価”です。

  • 売上や技術者数といった基礎体力(X・Y点)
  • 財務の見せ方(W点)
  • 書類で取れる加点の取りこぼし防止(Z点)

これらを並行して改善し続けることで、安定したP点を維持し、公共工事の受注に向けた確かな足場を築くことができます。

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