複数業種を同時に追加する際の効率的な建設業許可申請方法について

建設業を営んでいると、時代の変化や取引先からの要望に応じて、新たな工種へ事業を拡大する機会が出てきます。
たとえば「とび・土工工事業」に加えて「鋼構造物工事業」や「舗装工事業」を追加したい、「内装仕上工事業」と「塗装工事業」を同時に取得したい、といったケースです。

このように複数の業種を同時に追加する場合、申請の方法を工夫することで、手続きの負担を軽減し、審査期間を短縮することが可能です。
本記事では、東京都江東区および沖縄県那覇市での建設業許可申請を想定し、複数業種を効率的に追加するための実務的な方法と注意点を詳しく解説します。

目次

1. 複数業種を同時に追加できる理由とメリット

建設業許可は、業種ごとに許可を受ける必要があります。
ただし、同一法人または個人事業者であれば、一度の申請で複数の業種をまとめて申請することが可能です。

同時申請の主なメリット

  1. 書類作成や提出の手間が一度で済む
     各業種で共通する書類(登記事項証明書、納税証明書、財務諸表など)は1部で足ります。
  2. 審査が同時に進むため、全業種が同時に許可される
     業種ごとに別々の時期に申請すると許可時期がずれますが、同時申請ではすべての許可が同一日付で発行されます。
  3. 将来の更新・決算届の管理が容易になる
     許可の有効期限を揃えられるため、「許可の一本化」を別途行う必要がなくなります。

事業拡大を計画的に進めたい場合、業種追加を分けて行うよりも、同時にまとめて申請する方が効率的で管理もしやすいといえます。

2. 複数業種追加の基本的な流れ

複数業種の追加申請も、基本的な流れは単一業種の追加と同じです。
ただし、業種ごとに要件を確認し、専任技術者を確保する点が大きな違いとなります。

  1. 追加したい業種の決定
     まず、どの業種を追加するかを明確にします。建設業許可は29業種に分かれています。
  2. 業種ごとの要件確認
     経営業務管理責任者(経管)、専任技術者、財務基盤、欠格要件などを業種ごとに確認します。
  3. 技術者・経管の選任
     各業種に対応できる技術者を配置し、必要な資格や経験を証明します。
  4. 申請書類の作成・添付資料準備
     業種ごとの工事内容や技術者資格を明記し、法人証明書・納税証明書・決算書などを整えます。
  5. 本店所在地を管轄する都道府県へ申請
     東京都江東区であれば「東京都都市整備局」、沖縄県那覇市であれば「沖縄県土木建築部 技術・建設業課」に提出します。
  6. 審査・許可
     書類審査後、要件がすべて確認できれば許可証が交付されます。

3. 専任技術者をどう配置するかがポイント

複数業種を同時に追加する場合、最も重要なのは専任技術者の配置計画です。
原則として、各業種に1名ずつ専任技術者を配置する必要があります。

ただし、次のような場合には1人の技術者で複数業種を兼任できるケースもあります。

〔兼任が可能なケース〕

  • 同一資格で複数業種に対応している場合
     (例)「建築施工管理技士」は建築工事業と内装仕上工事業を兼ねられる
  • 一部の業種間で実務内容が近い場合
     (例)とび・土工工事業と鋼構造物工事業など

このような「技術者資格の重複活用」をうまく設計することで、
技術者の人数を増やさずに複数業種の追加が可能になります。

ただし、資格の適用範囲は業種によって異なるため、申請前に必ず担当課や専門家に確認することが大切です。

4. 経営業務管理責任者の要件確認

経営業務管理責任者(経管)は、会社の経営経験を持つ役員または個人事業主本人である必要があります。
複数業種を追加する際も、経管は全業種について経営経験を有しているかどうかが確認されます。

もし追加する業種に関連する経営経験がない場合、

  • 新たに経営経験を持つ役員を迎える
  • 経管の経験を補完するための証明書類を準備する

といった対応が必要になる場合もあります。
特に建設業種間で関連性が薄い場合(例:電気工事業と舗装工事業など)は、審査が厳格になります。

5. 財産的基礎と書類の共通化

複数業種を同時に追加しても、財務要件は一度の確認で済みます。
同じ法人内であれば、決算書や納税証明書を共通資料として提出できます。

提出書類の例:

  • 法人の履歴事項全部証明書(写し1部)
  • 財務諸表(貸借対照表・損益計算書・完成工事高内訳書)
  • 納税証明書(法人税・消費税)

また、役員全員の身分証明書・登記されていないことの証明書も共通で利用できます。
これにより、個別に業種追加を行う場合と比べて提出書類の数を大幅に減らせるのが大きな利点です。

6. 書類作成を効率化するコツ

複数業種の追加申請では、書類の量が膨大になります。
効率的に進めるためには、次の3点を意識することが重要です。

  1. Excel等で工事経歴書を統合管理する
     追加する業種ごとに代表的な工事実績を整理し、表計算ソフトでまとめると転記ミスを防げます。
  2. 資格証・実務証明書を一覧化する
     どの技術者がどの業種に対応しているかを一覧表にすると、審査担当者にもわかりやすくなります。
  3. 各業種ごとに添付資料を仕分ける
     同一書類を複数業種に添付する場合、コピーを使うよりも、添付資料一覧で共有資料を明示する方が効率的です。

このような整理を事前に行うことで、申請後の補正依頼や書類差し替えを防げます。

7. 審査期間とスケジュールの考え方

複数業種を同時に追加する場合、審査の負担が増えるため、
1業種追加よりも若干時間がかかる傾向にあります。

東京都や沖縄県の例では、

  • 単一業種追加:おおむね1〜2か月
  • 複数業種追加:2〜3か月程度

が目安となります。
工期や契約スケジュールがある場合は、少なくとも3か月前には準備を始めておくのが安全です。

8. 東京都・沖縄県での申請窓口と対応の違い

東京都江東区の事業者の場合

  • 提出先:東京都都市整備局 建設業課
  • 受付方法:事前予約制・窓口申請
  • 特徴:各業種の技術者資格について事前相談が必須

沖縄県那覇市の事業者の場合

  • 提出先:沖縄県土木建築部 技術・建設業課
  • 受付方法:窓口
  • 特徴:添付書類の簡略化に柔軟な対応があるが、資格証明は原本確認が原則

どちらも、同時申請の場合は窓口での事前相談が非常に重要です。
提出前に要件の適合性を確認することで、補正や再提出を防ぐことができます。

9. 許可後の管理と「一本化」の必要性

複数業種を同時に追加した場合、すべての許可の有効期限は同じになります。
そのため、後から「許可の一本化」を行う必要がありません。

ただし、将来的にさらに新しい業種を追加する際は、
その追加分の許可年度がずれてしまうため、再度一本化を検討することになります。

また、複数業種を持つと「決算変更届」も複数業種分をまとめて提出することになるため、
毎年の書類管理体制を整えておくことが重要です。

10. 効率的な申請のまとめ

複数業種を同時に追加する際のポイントを整理します。

  • 一度の申請でまとめると、書類作成・更新管理が効率的
  • 専任技術者の資格を重複活用できるかを確認する
  • 経営業務管理責任者の経歴が全業種に通用するかをチェック
  • 提出書類は共通部分を整理し、一覧化して準備
  • 申請前に東京都または沖縄県の担当課へ事前相談を行う

複数業種追加は、単に許可を増やすだけでなく、企業としての信頼性を高める経営戦略の一環です。
効率的に準備を進めることで、余計な時間やコストをかけずに事業拡大を実現できます。

11. まとめ ― 計画的な業種追加で事業の幅を広げる

複数業種の追加は、建設業者にとって大きなチャンスです。
取引先からの要望に柔軟に対応できる体制を整えれば、元請としての受注拡大にもつながります。

東京都江東区や沖縄県那覇市のように、建設需要が安定している地域では、
「得意工種+関連工種」を組み合わせる形での申請が特に効果的です。

複数業種を一度に追加する場合、申請書のボリュームが増えますが、
共通資料をうまく整理すれば、手続きは驚くほどスムーズに進みます。

新たな業種に挑戦する際は、まず現在の技術者体制や経営経験を整理し、
効率的な申請プランを立てることが成功の第一歩となります。

建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所へお気軽にご相談下さい。

目次