
建設業許可を申請する際に必ず確認される重要な要件の一つが「専任技術者」です。
専任技術者とは、営業所に常勤し、請け負う工事に関して必要な技術的知識と経験を有する責任者のことを指します。
建設業法上、各営業所ごとに少なくとも1名の専任技術者を置くことが義務づけられています。
この記事では、東京都江東区および沖縄県那覇市で建設業許可を取得・維持する事業者の方々に向けて、
専任技術者に認められる資格の一覧と、1人の技術者で複数業種を担当できる「複数業種対応資格」について、
実務的な観点から詳しく解説します。
1. 専任技術者とは何か
専任技術者は、建設業許可を受ける上で「技術的能力があること」を証明するための要件です。
建設業法では、次のように定められています。
- 一般建設業では、資格または実務経験(10年以上)を有する者
- 特定建設業では、より高度な資格(1級施工管理技士等)または一定年数の指導監督的実務経験を有する者
つまり、専任技術者は現場の技術責任者であり、許可業種に対応できるスキルと経験を公的に証明できる人物であることが求められます。
営業所に常勤していることが前提であり、他の会社との兼務や現場常駐などにより常勤性が疑われる場合には、許可が認められないこともあります。
2. 専任技術者に認められる2つの要件のパターン
専任技術者として認められるためには、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
(1)資格による要件
建設業法施行規則で定められた国家資格等を保有している場合です。
例として、「施工管理技士」「建築士」「電気工事士」「管工事施工管理技士」などがあります。
資格を有していれば、原則として実務経験は不要です。
(2)実務経験による要件
資格を持っていない場合でも、許可を受けようとする業種に関する10年以上の実務経験があれば認められる場合があります。
ただし、工事経歴を客観的に証明できる資料(契約書、請求書、発注書など)を提出する必要があります。
3. 専任技術者資格の主な一覧(一般建設業)
以下は、主要な建設業種と、それぞれに該当する主な資格の例です。
この一覧は東京都および沖縄県でも共通して利用されます。
| 業種名 | 主な専任技術者資格の例 |
| 土木工事業 | 1級・2級土木施工管理技士、技術士(建設部門) |
| 建築工事業 | 1級・2級建築施工管理技士、建築士(一級・二級) |
| とび・土工工事業 | 1級・2級とび技能士、1級・2級土木施工管理技士 |
| 石工事業 | 1級・2級建築施工管理技士(仕上げ)、1級・2級石材施工技能士 |
| 屋根工事業 | 1級・2級建築施工管理技士(躯体)、1級・2級かわらぶき技能士 |
| 電気工事業 | 第一種・第二種電気工事士、1級・2級電気工事施工管理技士 |
| 管工事業 | 1級・2級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者 |
| 塗装工事業 | 1級・2級建築施工管理技士(仕上げ)、1級・2級塗装技能士 |
| 防水工事業 | 1級・2級建築施工管理技士(仕上げ)、防水施工技能士 |
| 内装仕上工事業 | 1級・2級建築施工管理技士(仕上げ)、内装仕上施工技能士 |
| 造園工事業 | 1級・2級造園施工管理技士、技術士(建設部門:造園) |
| 機械器具設置工事業 | 1級・2級機械器具設置施工管理技士 |
| 清掃施設工事業 | 1級・2級管工事施工管理技士、技術士(上下水道部門) |
このほかにも、資格と業種の組み合わせは細かく定められています。
資格証明書の写しを提出し、申請時に確認を受ける必要があります。
4. 複数業種に対応できる代表的な資格
建設業の世界では、1つの資格で複数の業種に対応できるケースが少なくありません。
この「複数業種対応資格」を把握しておくことで、同一人物を複数業種の専任技術者として配置でき、効率的な許可管理が可能になります。
代表的な例を以下に挙げます。
| 資格名 | 対応可能な主な業種 |
| 1級・2級建築施工管理技士(建築仕上げ) | 建築工事業、内装仕上工事業、塗装工事業、防水工事業、左官工事業、屋根工事業など |
| 1級・2級土木施工管理技士 | 土木工事業、とび・土工工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、水道施設工事業など |
| 1級・2級管工事施工管理技士 | 管工事業、水道施設工事業、清掃施設工事業(内容による) |
| 技術士(建設部門) | 土木、建築、造園、鋼構造物工事業など、広範囲に対応可能 |
| 第一種電気工事士 | 電気工事業の専任技術者および主任技術者(兼任可) |
| 造園施工管理技士 | 造園工事業、土木工事業の一部(外構関連) |
| 建築士(一級・二級) | 建築工事業、内装仕上工事業、屋根工事業など |
このような資格を保有していると、1名の専任技術者で複数の業種追加が可能となり、
人的リソースの節約や許可維持の効率化に繋がります。
5. 専任技術者を兼任できる条件
複数業種を同時に取得する場合でも、必ずしも業種ごとに専任技術者を置く必要はありません。
ただし、兼任が認められるのは次の条件を満たす場合に限られます。
- 同一営業所内で、兼任する業種間に技術的な関連性がある場合
たとえば、塗装工事業と防水工事業、内装仕上工事業と建築工事業など。 - 1人の技術者が常勤し、業務を十分に行えることが明らかである場合
常勤性が損なわれるような兼任(現場常駐など)は認められません。 - 資格が兼用可能であることが明示できる場合
資格証明書や関連資格の範囲を示す資料を添付して説明します。
なお、都道府県ごとに解釈の違いがあるため、東京都および沖縄県では事前相談を推奨します。
- 東京都では「建設業課(東京都都市整備局)」が資格範囲を明示した一覧を公表しています。
- 沖縄県では「土木建築部 技術・建設業課」で個別相談が行われ、特に技能士資格の取扱いに柔軟性があります。
6. 特定建設業の専任技術者に必要な資格
特定建設業の場合は、下請契約の総額が4,000万円(建築一式工事では6,000万円)を超える工事を請け負うことが想定されるため、
一般建設業よりも高度な技術力が求められます。
そのため、次のいずれかを満たす必要があります。
- 1級施工管理技士(または技術士)
- 建設業法上の指導監督的実務経験(一般建設業専任技術者として5年以上)
特定建設業の許可を目指す場合、資格取得を計画的に進めることが重要です。
7. 専任技術者選任に関する実務上の注意点
- 資格証明書は原本確認が原則
提出は写しでよいが、申請時に原本提示が求められます。 - 実務経験を証明する場合は資料の整合性に注意
契約書、請求書、注文書などの名義や内容が一致していることが必要です。 - 常勤性を確認される
社会保険加入証明、給与支払報告書などで常勤を証明します。 - 技術者が退職した場合は速やかに変更届を提出
2週間以内の届出義務があり、空白期間が生じると許可要件を満たさなくなります。
8. 東京都・沖縄県での申請対応の違い
東京都江東区の場合
- 担当:東京都都市整備局 建設業課
- 特徴:資格と業種の対応関係を詳細に確認されるため、申請前相談が推奨されています。
- 技能士資格の扱いも厳格で、実務経験の裏付けが求められるケースが多いです。
沖縄県那覇市の場合
- 担当:沖縄県土木建築部 技術・建設業課
- 特徴:資格の確認基準は国土交通省基準に準じるが、地域事情により柔軟な運用も見られます。
- 一人親方・中小規模事業者の相談にも丁寧に対応しており、事前相談が有効です。
9. 複数業種対応資格を活かした効率的な許可管理
複数の業種を取得する際、資格の重複をうまく活かすと次のような効果が得られます。
- 専任技術者の人数を最小限に抑えられる
- 営業所人員の効率的な配置が可能になる
- 将来的な業種追加の際にスムーズに対応できる
ただし、兼任には限界があり、常勤性が確保できないと判断されると却下されることもあるため、
申請前の確認と書面整備が重要です。
10. まとめ ― 専任技術者の資格戦略が許可取得の鍵
専任技術者は、建設業許可の根幹を支える存在です。
資格の種類や適用範囲を正しく理解し、将来的な業種追加や事業拡大を見据えて資格戦略を立てることが、
安定した経営の第一歩となります。
東京都江東区および沖縄県那覇市では、いずれも建設業の需要が高く、
技術者資格の確保と効率的な許可管理が事業拡大の成否を左右します。
複数業種対応資格をうまく活用し、常勤性を確保した上で、
計画的に専任技術者を配置することで、手続きの効率化と経営安定の両立が可能になります。
建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所へお気軽にご相談下さい。

