相続で遺産分割協議書の作成を先延ばしにするデメリットとは~江東区・那覇市の皆さまへ~

相続が発生すると、まず行うべき大切な手続の一つが「遺産分割協議」です。
そして、その結果を正式にまとめる書類が「遺産分割協議書」です。

ところが、現実には「家族間で揉めるほどのことでもないから」「忙しいから」「とりあえず今のままでいい」といった理由で、遺産分割協議書の作成を後回しにしてしまうケースが少なくありません。
しかし、遺産分割協議書を作成しないまま時間だけが過ぎてしまうと、想像以上に大きな不利益が生じることがあります。

この記事では、東京都江東区や沖縄県那覇市で相続手続きを行う方に向けて、遺産分割協議書を先延ばしにすることの具体的なデメリットを詳しく解説します。

目次

1. 遺産の名義変更ができない

相続財産には、預貯金・不動産・株式・自動車など、名義の変更を必要とするものが多くあります。
それらを相続人の名義に変更するためには、原則として「遺言書」または「遺産分割協議書」が必要です。

遺言書があれば、そこに従って手続を進めることができますが、遺言書がない場合には、相続人全員で話し合い、合意内容を「遺産分割協議書」としてまとめなければなりません。
つまり、遺産分割協議書がなければ、実際に名義変更を行うことができないのです。

例えば、不動産の場合、法定相続分(民法で定められた割合)でそのまま相続登記を行うこともできますが、実際には「長男が自宅を引き継ぐ」「預貯金は母が使う」といった合意がされることがほとんどです。
このような分け方をするには、遺産分割協議書が必要になります。

また、銀行口座についても同様です。金融機関は「誰がどれだけの金額を相続するのか」を確認するために、遺産分割協議書の提出を求めます。これがないと、預金を引き出すことも、解約することもできません。

遺産分割協議書を作らないままにしておくと、結果的に以下のような問題が起こります。

  • 預貯金が凍結されたまま使えない
  • 不動産の名義が故人のままで固定資産税を払い続けることになる
  • 相続人の一部が亡くなると、さらに複雑な相続関係になる(後述)

法的には名義変更に期限はありませんが、放置すればするほど手続が煩雑になり、関係者も増えていくのが実情です。
特に不動産の場合、登記を放置している間にも固定資産税の負担が続き、将来的に売却や活用が難しくなることもあります。
したがって、「後でやろう」と考えるメリットはほとんどありません。

2. 相続税の申告期限に間に合わないと、いったん法定相続分で申告・納税する必要がある

相続税が発生する場合、相続開始(被相続人の死亡)から10か月以内に、申告と納税を行わなければなりません。
この期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税などのペナルティが発生します。

しかし、10か月というのは意外と短く、葬儀や各種手続、遺品整理などで時間がかかるうちに、あっという間に過ぎてしまうものです。
そして、もし10か月以内に遺産分割協議がまとまらない場合、相続税は「とりあえず法定相続分」で計算して申告・納付しなければなりません。

たとえば、本来は「自宅を母がすべて相続する」と話し合っていたとしても、協議が未了のままだと、法定相続分(配偶者1/2、子ども全体で1/2など)での計算となります。
この場合、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、有利な税制を適用できない可能性もあります。

もっとも、相続税申告の際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に提出しておけば、後日遺産分割が成立した際に修正申告を行い、正しい税額に調整することが可能です。
とはいえ、これはあくまで「後から修正できる救済措置」であり、当初の申告時に余分な税金を納める必要があることに変わりはありません。

また、税理士など専門家に依頼する場合、二度手間になるため費用も余分にかかります。
相続税が発生するようなケースでは、早めに遺産分割協議を整え、正確な相続割合で申告を行うことが最も合理的です。

3. 相続人の一人が亡くなると、関係が複雑化してしまう(数次相続)

遺産分割協議書の作成を先延ばしにする最大のリスクの一つが、「数次相続」の発生です。

数次相続とは、ある相続の手続きが終わる前に、相続人の一人が亡くなり、その人の相続が新たに発生することをいいます。
つまり、相続が“二重・三重”に起こる状態です。

例えば、お父さんが亡くなり、相続人が母と長男・二男の3人だったとします。
遺産分割協議をしないまま1年ほど経過し、その間に二男が亡くなってしまった場合、二男の相続分は二男の配偶者や子どもが引き継ぐことになります。
この時点で、お父さんの相続に関して新たに二男の妻・子が「代襲相続人」として登場し、遺産分割協議に加わる必要が出てきます。

つまり、協議に参加する人が増えるのです。
人数が増えれば、全員の同意を得るまでに時間がかかり、印鑑証明書の取得や実印押印も手間が増えます。
また、協議書の作成も複雑になり、相続登記など後続の手続にも影響を与えます。

さらに、遠方に住む相続人が増えたり、連絡が取れない人が出たりすると、手続が何年も止まってしまうこともあります。
東京都江東区や沖縄県那覇市など、家族が地理的に離れて暮らしている世帯では、このようなケースが実際に少なくありません。

そのため、相続人全員が健在なうちに、なるべく早めに遺産分割協議を終えることが、将来のトラブルを防ぐ最大のポイントです。

4. 家族間の信頼関係が損なわれることもある

遺産分割協議を先延ばしにすると、法的な不利益だけでなく、心理的・人間関係の面でも悪影響が生じることがあります。

たとえば、「預貯金の管理を一時的に長男がしている」「不動産をとりあえず母の名義にしておく」といった状況が長期間続くと、他の相続人が「自分の取り分を勝手に使われているのでは」と不安や不信を抱くことがあります。
これが原因で家族関係が悪化し、話し合いがさらに難しくなることもあります。

また、時間が経つにつれて、記憶の食い違いも起こりやすくなります。
「誰が何を希望していたか」「どんな合意をしていたか」といった内容が曖昧になり、後から「そんな話は聞いていない」と揉めるケースも少なくありません。
こうしたトラブルを防ぐためにも、早い段階で協議内容を明文化し、全員の署名・押印をもって正式な形にすることが重要です。

5. まとめ 遺産分割協議書は「早めの作成」が最善の選択

ここまで見てきたように、遺産分割協議書の作成を先延ばしにすることで生じるデメリットは数多くあります。

  1. 預貯金や不動産の名義変更ができず、財産を活用できない
  2. 相続税の申告期限に間に合わないと、余分な税金や手間が発生する
  3. 相続人の一人が亡くなると、数次相続で関係が複雑化する
  4. 家族間の信頼関係が損なわれる可能性がある

これらはいずれも、「時間が解決してくれるもの」ではなく、「時間が経つほど悪化するもの」です。
相続が発生したら、できる限り早期に遺産の内容を整理し、相続人全員で話し合い、協議書を作成しておくことが安心への第一歩です。

東京都江東区では、区役所や法務局での不動産登記・預貯金手続きが多く発生します。
また、沖縄県那覇市の場合、親族が県外に散らばっているケースも多く、書類のやり取りや実印の取得に時間がかかる傾向があります。
そのため、地域事情に合わせて早めに専門家に相談し、円滑に手続きを進めることをおすすめします。

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