法定相続情報証明制度の利用方法と、交付される法定相続情報一覧図のメリットについて

相続手続きにおいて、従来は複数の機関で相続関係を証明するために、戸籍謄本や住民票などを繰り返し提出する必要がありました。しかし、2017年5月29日から新たに導入された「法定相続情報一覧図」の制度により、この手間が大幅に軽減されました。本記事では、この制度の概要、作成方法、必要書類、そして銀行での相続手続きにおけるメリットについて解説します。

1. 法定相続情報一覧図とは

法定相続情報一覧図は、相続人が戸籍などの原本を提出する代わりに、「法定相続情報一覧図の写し」を利用して相続手続きを行うための制度です。法務局で作成された一覧図は、相続関係を簡潔に示した図式化された書面で、戸籍謄本などを一度取得し、それを元に法務局で認証を受けることで、複数の手続きに同じ書類を使い回せる仕組みです。

従来は相続関係を証明するために、金融機関や不動産登記などの手続きで、各機関ごとに戸籍一式を提出しなければならず、その度に多額の費用と時間がかかることが問題でした。しかし、この一覧図を利用することで、一度法務局で認証された情報を元に、各機関での手続きが可能になり、結果として相続手続きの負担が軽減されます。

2. 法定相続情報一覧図の作成方法

法定相続情報一覧図を作成するための手続きは、次の手順で行います。

2-1. 必要書類の収集

法定相続情報一覧図の作成には、次の書類が必要です。

  • 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本
    被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。これにより、被相続人が誰であるか、そしてその相続人が誰であるかを明確に証明します。
  • 相続人全員の戸籍謄本
    相続人全員の現在戸籍(もしくは除籍)謄本が必要です。これにより、相続人が全員特定されます。
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
    被相続人が最後に住んでいた住所が確認できる住民票の除票か、戸籍の附票を提出します。
  • 相続人全員の住民票
    相続人の現住所を確認するために住民票を提出します。
  • 遺言書がある場合、その写しや検認済証明書
    被相続人が遺言書を残していた場合、それが有効かどうかを確認するための証明書も必要です。

2-2. 法務局への申請

次に、収集した書類をもとに、法務局で「法定相続情報一覧図」の作成を申請します。具体的には、次の手続きが必要です。

  1. 法定相続情報一覧図の申出書の作成
    法務局のウェブサイトなどでダウンロードできる申出書に必要事項を記入し、必要書類を添付します。
  2. 提出書類の確認と申請
    法務局に書類を持参または郵送して、法定相続情報一覧図の認証を依頼します。法務局では、相続関係が正確に記載されているかを確認し、一覧図の写しを交付します。
  3. 一覧図の写しの交付
    法務局が一覧図の内容を確認し問題がなければ、法定相続情報一覧図の写しが交付されます。申請は無料で、写しの交付も原則無料ですが、郵送費などの実費がかかる場合があります。

3. 必要書類

上述の書類に加えて、以下のものが準備されていると、よりスムーズに手続きを進めることができます。

  • 申請者の身分証明書
    相続人であることを証明するため、運転免許証やパスポートなどの身分証明書が必要です。
  • 法定相続情報一覧図の写しの写し請求書
    一覧図を複数の機関で使用するために、法務局に写しの発行を依頼する際には、写し請求書を提出する必要があります。
  • 代理人による申請の場合の委任状
    申請者本人が直接手続きを行わない場合、代理人に委任状を渡し、代理申請が可能です。

4. 銀行での相続手続きにおけるメリット

相続手続きの場面では、銀行口座の解約や名義変更、預貯金の払い戻しなどが必要になります。この際に、法定相続情報一覧図の写しを利用することには多くのメリットがあります。

4-1. 書類提出の簡素化

従来、銀行での相続手続きでは、被相続人と相続人全員の戸籍謄本を提出する必要がありました。しかし、法定相続情報一覧図の写しを利用すれば、戸籍謄本を何度も提出する必要がなくなり、銀行での手続きが大幅に簡素化されます。特に、相続人が多い場合や、被相続人の戸籍が複数の市町村にわたっている場合には、このメリットは非常に大きいです。

4-2. 手続きの迅速化

法定相続情報一覧図の写しを銀行に提出することで、相続手続きが迅速に進められることが期待されます。銀行側としても、戸籍謄本の内容を一から確認する手間が省けるため、通常よりも短期間で手続きを完了できる可能性が高まります。

4-3. コスト削減

銀行手続きのたびに戸籍謄本を取得し直す必要がないため、その取得費用が節約できます。法定相続情報一覧図の写しは無料で交付されるため、複数の手続きを行う際には特に経済的なメリットが感じられるでしょう。

4-4. 安全性の向上

法定相続情報一覧図の写しは、法務局が認証したものであるため、信頼性が高く、不正な相続手続きの防止にも役立ちます。銀行側も公的な認証を受けた書類として安心して受理できるため、手続きの透明性や安全性が向上します。

5. まとめ

法定相続情報一覧図の写しは、相続手続きを効率的に進めるための有用なツールです。法務局での認証を受けることで、複数の機関で繰り返し戸籍謄本を提出する手間が省け、手続きが大幅に簡素化されます。特に銀行での相続手続きにおいては、書類提出の簡素化や手続きの迅速化、コスト削減といったメリットが大きく、相続人にとって非常に便利です。

今後、相続手続きを進める際には、この法定相続情報一覧図の制度を積極的に活用し、効率的な手続き運営を目指すことをおすすめします。

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