今まで検討もしてこなかった、突然の建設業許可取得要求への対応方法について

「長年取引してきた元請けから、突然『建設業許可を取得しないと、今後取引ができない』と言われた」という相談を受けることがあります。このような状況に直面すると、困惑する方も多いでしょう。これまで許可がなくても問題なく取引が続いていたのに、なぜ急に建設業許可が必要だと指摘されたのか。その背景には、建設業界全体の規制強化や、取引先のリスク管理の観点からくる変化があるのです。

建設業許可が必要な場合

まず、基本的なルールとして、1件あたりの工事金額が500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上)の工事を請け負う場合、建設業許可を取得しなければなりません。この許可制度は、工事の品質確保や消費者保護を目的とし、適切な経営能力や技術力を持つ事業者が参入することを確保するものです。建設業許可を持っていない場合、これらの金額を超える工事を行うことは法律で禁止されています。

許可が不要な場合もあるが

一方で、1件あたり500万円未満(建築一式工事の場合は1,500万円未満)の工事であれば、許可は不要です。特に、小規模なリフォームや修繕を主に行っている業者の場合、建設業許可を取得しなくても事業を続けることが可能な場合もあります。許可がなくても、これまでは問題なく取引を続けていた業者も多いでしょう。

しかし、近年の業界全体の動向を見ると、元請業者や発注者側が許可を持つ事業者との取引を優先する傾向が強まっているのです。

発注者が建設業許可を求める理由

建設業許可を持つ事業者は、一定の要件を満たし、経営面や技術面、管理体制において国や自治体から「お墨付き」を受けています。これにより、発注者にとっては信頼性の高い事業者と取引することができるという安心感が得られます。

同じ条件であれば、許可を持つ事業者を選ぶのは自然な流れです。特に元請業者は、自分の下請け業者に対する信用度や工事の品質確保に非常に敏感です。そのため、たとえ法律上は許可が不要な小規模工事であっても、取引先が建設業許可を持つ事業者であることを望むケースが増えています。

許可が求められる風潮が増している

近年、特に大手元請業者や公共事業の発注者からの取引条件として、「建設業許可を持っていること」が前提とされるケースが増加しています。この背景には、業界全体の健全化や不正行為防止の取り組み、またコンプライアンスの強化が影響しています。特に元請業者にとっては、許可を持っている下請業者との取引がリスクを減少させるため、安心して工事を任せることができるという利点があります。

実際、許可を取得している事業者であれば、適切な管理体制が整っていると見なされ、工事の進行中にトラブルが発生した際にも迅速に対応できる能力があると考えられます。そのため、発注者は許可を持つ事業者を選ぶことで、安心して工事を発注できるのです。

継続的な取引を確保するために

人間関係や信頼関係がしっかり築かれている場合、建設業許可を持たない事業者でも元請けと良好な取引を続けられることがあります。しかし、業界全体の流れとして、許可を持つ事業者との取引を優先する傾向が強まっているため、長期的に見れば、許可の取得を検討することが望ましいでしょう。

許可を取得することによって、単に法律を遵守するだけでなく、事業の信頼性や取引先からの評価を高めることができ、結果的に新たな取引先の獲得や事業の拡大にも繋がります。

許可取得のプロセス

では、実際に建設業許可を取得するにはどのような手続きが必要なのでしょうか。まず、許可を取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

1.経営者の経験:建設業の経営において5年以上の実務経験が必要です。

2.技術者の配置:工事を担当する技術者が必要であり、一定の資格や経験を持つ人材が求められます。

3.財産的基盤:自己資本が500万円以上であることが条件となります。

4.適切な管理体制:事業を適切に運営するための管理体制が整っていることが求められます。

これらの要件を満たしている場合、申請書類を作成し、管轄の都道府県知事または国土交通大臣に提出します。許可が下りるまでには数ヶ月を要するため、早めの準備が必要です。

許可を持つことのメリット

建設業許可を取得することで、法的に大規模な工事を受注できるようになるだけでなく、取引先からの信頼度も向上します。特に元請業者からの受注機会が増えることや、新たな取引先の開拓が容易になるといったメリットがあります。

さらに、許可を持つことで、公共工事の入札に参加できるようになるなど、事業の幅が広がる可能性もあります。公共工事は一般的に単価が高く、安定した収益が期待できるため、許可を持つことで事業の安定性が大きく向上します。

まとめ

「建設業許可を取得しないと取引ができない」と突然言われた場合、まずは冷静に状況を把握することが重要です。許可が必要な場合とそうでない場合があるため、具体的な取引内容を確認し、それに応じて対応策を検討しましょう。建設業許可を取得することで、取引先からの信頼度が高まり、今後のビジネスチャンスを広げる可能性があります。

特に、今後ますます元請業者や発注者からの許可要求が増加することが予想されるため、早めに許可取得の準備を進めることが、事業の発展に繋がるでしょう。

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