建設業における各技術者の兼任・複数の現場の兼務に関する解説

建設業界における技術者の役割は非常に重要であり、特に専任技術者や主任技術者、監理技術者といった職務に関するルールは複雑です。沖縄県那覇市や東京都江東区で建設業を営む事業者の皆様にとっても、技術者の役割やその兼務に関する正確な理解が、事業のスムーズな運営や法令遵守に大きく寄与することでしょう。本記事では、技術者の兼任や複数の現場を担当する場合のルールについて詳しく解説いたします。

1. 営業所の専任技術者と主任技術者・監理技術者の兼任はできない

まず最初に押さえておきたいポイントとして、営業所に専任する技術者が、現場の主任技術者や監理技術者と兼任できるかどうかという問題があります。結論から言えば、専任技術者が主任技術者や監理技術者を兼任することはできません

営業所の専任技術者には、その営業所に常勤し、請負契約の締結に関する技術的なサポートを提供するという責任があります。したがって、物理的に現場に出て主任技術者や監理技術者の業務を行うことは、営業所の業務に支障を来たす可能性があるため、原則として不可とされています。

ただし、例外として以下の条件を全て満たす場合に限り、専任技術者が主任技術者や監理技術者として兼任できることがあります。

  • 現場に専任が求められない工事であること
  • 所属する営業所で契約締結した建設工事であること
  • 営業所から近接した工事現場であり、職務を適正に遂行できること
  • 営業所と常時連絡が取れる状態であること

これらの条件を満たしている場合に限り、専任技術者が現場業務を担当することが可能ですが、非常に限定的な状況でのみ適用されることに注意が必要です。

2. 主任技術者の複数現場兼務は可能か

次に、主任技術者が1人で複数の現場を担当できるかという点について解説します。一般的には、請負金額が4,000万円未満(建築一式工事の場合は8,000万円未満)の工事であれば、現場への専任が求められないため、1人の主任技術者が複数の現場を担当することが可能です。

しかし、請負金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)になると、現場に専任技術者が必要とされるため、原則として複数の現場を兼任することはできません。ただし、以下の条件を満たす場合に限り、1人の主任技術者が2つの工事現場を兼務することが許されます。

  • 密接な関係のある2つ以上の建設工事であること
  • 同一の建設業者が同一の場所または近接した場所で施工する工事であること

「密接な関係のある工事」とは、例えば一体性や連続性が認められる工事、または資材調達や工程調整が相互に関連している工事を指します。こうした場合には、1人の主任技術者が複数の現場を兼務することが可能ですが、必ずしも広範な適用が可能というわけではなく、個別の状況に応じた判断が必要です。

3. 監理技術者の複数現場兼務について

監理技術者の場合、さらに厳しい条件が課されます。監理技術者が配置される工事とは、元請けとして受注した工事で、下請金額の合計が4,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)となるものです。監理技術者は基本的に1つの現場に専任する必要があり、複数現場の兼務は原則不可です。

しかしながら、次の条件を満たせば、1人の監理技術者が2つまでの現場を兼務することが可能です。

  • 監理技術者補佐を各工事現場に専任で配置すること
  • 監理技術者補佐が主任技術者の資格を有し、監理技術者の資格を持つこと

監理技術者補佐は、国家資格を有する技術者や実務経験のある者に限られます。また、監理技術者と現場の間で連絡が常時可能であることが必要です。この制度を利用すれば、複数現場での監理技術者の兼務が実現できますが、補佐を置くなどの特別な手続きが必要であり、実際の運用には注意が求められます。

4. 技術者を他の営業所の工事に配置できるか?

例えば、東京都江東区の本社に所属する技術者を、沖縄県那覇市の支店で受注した工事の主任技術者や監理技術者として配置することはできるのでしょうか。結論として、可能です。主任技術者や監理技術者は、営業所の専任技術者とは異なり、所属する営業所に縛られることはありません。

そのため、次の要件を満たしていれば、どの営業所で契約された工事であっても、技術者として配置することができます。

  • 必要な資格や実務経験を有していること
  • 建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係があること

このように、技術者が複数の営業所をまたいで活躍できる体制が取れることは、地域ごとに異なる建設需要に柔軟に対応するための重要なポイントとなります。

5. 技術者不足への対策と兼務制度の見直し

昨今、建設業界では技術者不足が深刻な問題となっており、これを背景に技術者の兼務に関する制度の見直しが検討されています。具体的には、次のような見直し案が議論されています。

  • 現場技術者同士の兼務を2現場まで認める
  • 営業所専任技術者と現場技術者の兼務を、1営業所+1現場まで許可する(特定条件下)
  • ICT機器を活用した現場の状況確認や意思疎通の実施
  • 現場の近接性を条件とし、監理技術者補佐の配置を要件とする

これにより、技術者不足の状況に対応しつつ、業務の効率化が図られることが期待されています。ただし、このような見直しが実際に導入されると、競争が激化する可能性や、不適格な業者の参入といった懸念もあります。

6. まとめ

今回の記事では、建設業における技術者の兼任や複数現場の兼務について詳しく解説しました。特に営業所の専任技術者と現場技術者の兼任が難しい点や、条件を満たせば主任技術者や監理技術者が複数の現場を兼務できる可能性については、業界内でも重要なポイントです。技術者不足が懸念されている現在、こうした制度が見直されることにより、より柔軟で効率的な運用が可能となることが期待されていますが、法令遵守の観点からも慎重な対応が求められます。

沖縄県那覇市および東京都江東区の建設業者の皆様においても、技術者の兼任や複数現場の兼務を適切に理解し、実務に反映させることが求められます。特に、技術者の配置に関しては、法令に基づいた正しい運用が不可欠です。

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