【行政書士が解説】公正証書遺言作成に必要な「出生から現在までの戸籍」の集め方

公正証書遺言を作成する際、公証役場から「遺言者の出生から現在までの戸籍一式を提出してください」と言われることがあります。しかし、「出生から現在までの戸籍」と言われても、具体的にどう集めればいいのか、戸惑う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、行政書士が実務で行っている戸籍の収集方法について、わかりやすく解説します。相続人の特定に欠かせない大切な手続きですので、ぜひ最後までご覧ください。


目次

1.「出生から現在までの戸籍」とは?

戸籍制度では、婚姻や転籍、法改正のたびに新しい戸籍が作られることがあります。そのため、現在の戸籍だけでは、本人の出生や家族関係の全てを把握することはできません。

「出生から現在までの戸籍」とは、本人が生まれたときから現在の戸籍に至るまでのすべての戸籍(改製原戸籍・除籍謄本を含む)を、時系列でそろえたものを指します。

これにより、親子関係や兄弟姉妹の有無など、相続関係を明確に確認することが可能となります。


2.取得すべき戸籍の種類

戸籍を集める際には、以下の3種類を理解しておきましょう。

1. 現在戸籍(戸籍謄本)

現在有効な戸籍で、本人が今所属している戸籍です。

2. 除籍謄本

婚姻や転籍などで、その戸籍に誰も属さなくなった場合に「除籍」となります。過去の履歴を追うために必要です。

3. 改製原戸籍(かいせいげんこせき)

昭和や平成の法改正で戸籍の形式が変更された際に作られた古い戸籍です。出生当時の情報が記載されていることが多く、必須の資料です。


3.実際の戸籍収集の流れ

Step 1:現在戸籍の取得

まずは本人の「本籍地」を確認します。運転免許証には記載されていないため、住民票を「本籍記載あり」で取得すると確認できます。

本籍地のある役所に以下を提出し、現在戸籍(戸籍謄本)を請求します。

  • 申請書
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 手数料(450円前後)
  • 委任状(代理人が請求する場合)

郵送請求も可能で、その場合は定額小為替と返信用封筒を同封します。

Step 2:前の戸籍の本籍地を確認

現在戸籍には、過去の転籍や改製の履歴が記載されています。

例:

平成2年3月1日 東京都江東区○○から転籍

この記載をもとに、次に取得すべき戸籍の本籍地と市区町村を特定し、さらに戸籍を請求します。

Step 3:出生までさかのぼる

取得した過去の戸籍にも、さらにその前の本籍地の情報が載っていることが多いため、それを手がかりに出生当時まで遡ります。

戸籍は「つながり」が確認できることが重要ですので、抜け漏れがないように一つひとつ確実に取得していきます。


3.注意点と落とし穴

本籍地ごとに別の役所へ請求が必要

転籍を繰り返している場合は、それぞれの本籍地の役所に個別に請求する必要があります。全国に散らばっていることもあります。

改製原戸籍は読みにくい

手書きの旧字体で書かれていることが多く、解読に慣れていないと読み違えが発生するリスクもあります。

家族構成によって戸籍の数が増える

被相続人に配偶者・子がいない場合は、兄弟姉妹や甥姪が相続人になります。この場合、親や兄弟姉妹の戸籍も必要になり、収集すべき戸籍が大幅に増えます。


4.行政書士に依頼するメリット

「戸籍は自分でも集められる」と思われる方もいますが、実務では次のようなトラブルが少なくありません。

  • どこの自治体から取り寄せるべきかわからない
  • 戸籍の繋がりがうまく見えない
  • 相続関係説明図を作成できない
  • 手続きに時間がかかり、遺言作成が遅れる

行政書士に依頼すれば、これらの煩雑な作業をすべて任せることができます。相続関係を証明するための戸籍の完全収集と整理、相続関係説明図の作成、公証人との調整まで一括で対応できます。


まとめ

公正証書遺言を作成するにあたり、「出生から現在までの戸籍」の提出は避けて通れない重要なステップです。しかし実際には、戸籍の改製や転籍の履歴が複雑に絡み合い、一般の方が一人で収集するのは時間と労力を要します。

戸籍の収集に不安がある方は、行政書士にご相談いただくことで、迅速かつ正確に対応することができます。安心して公正証書遺言の準備を進めるためにも、専門家のサポートをうまく活用してみてはいかがでしょうか。

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