経審で求められる財務指標とは?自己資本比率・売上高経常利益率などの評価と対策

建設業許可を取得し、公共工事に参入する際に避けて通れない「経営事項審査(経審)」。この審査では、会社の経営状況を「点数化」することにより、経営の健全性を評価されます。その中でも特に重要なのが「財務指標」に関する評価です。

本記事では、経審において求められる代表的な財務指標とその算出方法、点数化の仕組み、さらには対策のポイントまで詳しく解説します。東京都江東区や沖縄県那覇市など、地域の中小建設業者様にとって実践的な視点を重視しています。

1. 経営事項審査(経審)とは何か?

経営事項審査とは、建設業者が国や地方自治体の公共工事に参加するために必要な客観的評価です。以下の5つの観点で評価され、総合評定値(いわゆる「P点」)として点数化されます。

  • 【X1】経営規模(完成工事高)
  • 【X2】経営規模(技術者数等)
  • 【Y】経営状況(財務指標)
  • 【Z】技術力
  • 【W】社会性等(法令順守、雇用状況など)

この中で「Y点」が、今回のテーマである財務指標に基づく評価です。

2. 財務指標で評価される7つの指標

経審で評価される「財務指標(Y点)」は、以下の7項目です。それぞれの数値から経営の安定性や健全性を評価します。

項目番号評価指標名内容(何を評価しているか)
自己資本比率資本構成の安定性
流動比率短期の支払能力
債務償還年数借入金返済能力
売上高経常利益率本業の利益体質
総資本売上総利益率資産の効率的運用状況
労働生産性従業員1人当たりの利益水準
利益剰余金長年にわたり蓄積された利益の蓄え

それぞれの数値は点数化され、合計で60点満点中、得点率に応じてY点として経審に反映されます。

3. 主要な財務指標の意味と改善のヒント

以下では、実務で特に重要とされる4つの指標について詳しく解説します。

(1)自己資本比率:安定した資本構成が問われる

定義:自己資本 ÷ 総資本 × 100

自己資本比率は、自己資本(資本金や内部留保)が総資産に対してどれほどの割合を占めているかを示す指標です。一般的には 30%以上が望ましいとされます。

改善策

  • 利益剰余金の積み増し(毎期黒字経営を続ける)
  • 借入依存の削減
  • 増資による資本増強

赤字が続くと自己資本比率は急激に低下するため、損益管理も重要です。

(2)売上高経常利益率:利益体質の強さを示す

定義:経常利益 ÷ 売上高 × 100

建設業において利益率は低い傾向にありますが、それでも 3~5%以上を目指したいところです。この数値が高いほど、安定した利益を生む体質であると評価されます。

改善策

  • 工事原価の見直し(過剰な外注費や材料費の削減)
  • 高収益案件の受注強化
  • 金利負担や保険料などの経常費用の見直し

(3)流動比率:短期資金繰りの健全性を測る

定義:流動資産 ÷ 流動負債 × 100

流動比率は、短期(1年以内)の債務に対して現金化しやすい資産で対応できているかを測定します。目安は 150%以上

改善策

  • 売掛金の早期回収
  • 不必要な短期借入金や買掛金の圧縮
  • 流動資産の積み増し(現金・預金等)

(4)債務償還年数:借入金の返済力を評価

定義:有利子負債 ÷ 営業キャッシュフロー

借入金の返済に何年かかるかを示す指標で、一般的に 10年以内であることが望ましいとされます。

改善策

  • 借入金の繰上返済
  • キャッシュフローの改善(黒字化・減価償却費の活用)
  • 無利子の補助金等の活用

4. 財務指標の点数化の仕組み

経審では、各財務指標を0~10点で採点し、合計60点満点として評価されます。この60点を100点満点に換算して「Y点」として用います。

例えば

  • 各項目で満点 → 60点 → Y点:100点
  • 各項目で平均5点 → 30点 → Y点:50点

つまり、全項目で少しずつでも改善すれば、トータルスコアが大きく向上する構造となっています。

5. 経審の点数が実際に与える影響

経審で高評価を得ることで、以下のようなメリットがあります。

  • 入札参加資格のランクアップ
  • 公共工事の受注機会の拡大
  • 銀行や取引先からの信用向上

とくに東京都や那覇市のように公共工事の競争が激しい地域では、1点の違いが受注に直結することも珍しくありません。

6. 経審に備えた財務指標の整備・実務対策

(1)顧問税理士との連携

財務指標の多くは決算書の数値をもとに計算されるため、税理士との連携が不可欠です。経審対策として意図的に利益を残すことを目的とした財務調整も検討されます。

(2)資金繰り・借入対策の見直し

無計画な借入や過剰在庫は、財務指標の悪化を招きます。借入の目的や期間、金利条件の精査が必要です。

(3)利益を残す経営の仕組みづくり

粗利率の改善、販管費の見直し、従業員の生産性向上など、利益率を確保する企業体質を作ることが根本的な対策になります。

まとめ

経営事項審査において、財務指標は単なる「数値」ではなく、企業の経営体質を評価する重要な指標です。特に中小建設業者にとって、日頃の経理や経営の積み重ねがそのまま経審の点数に反映されます。

東京都江東区や沖縄県那覇市をはじめとする地域で公共工事に参入を目指す事業者様は、経審対策として財務指標の改善に早めに取り組むことが重要です。正しい知識と的確な準備が、経審点数の向上と安定した経営の鍵を握ります。

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