
目次
1. 実務経験証明書が必要になる場面とは?
建設業許可を申請する際には、必ず「専任技術者」を営業所ごとに置く必要があります。
専任技術者になれる条件は大きく2つに分かれます。
- 国家資格や検定合格者(例:1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士など)
- 一定年数以上の実務経験を有する者
このうち、資格を持たない場合に必要になるのが「実務経験証明書」です。
つまり、国家資格保有者なら不要ですが、そうでなければ、過去の工事経験を正式に証明しなければなりません。
2. 実務経験証明の基本ルール
実務経験年数
- 原則として、同一業種で通算5年以上の実務経験が必要(業種によっては10年)。
- 「年数」ではなく「月数」で計算(60か月以上)。
証明できる期間
- 実際に工事に従事した期間のみカウント。
- 工期が重複している場合は重複分を除外して計算。
例:- 4月~10月の工事(7か月)
- 7月~9月の工事(2か月)
→ 重複期間は除き、7か月のみカウント
証明できる人(証明者)
- 過去の勤務先での経験 → その会社から証明
- 現在の会社での経験 → 自社で証明
ここが大きな壁になることもあります。
特に那覇市や江東区では、過去の勤務先がすでに廃業している、担当者が変わっているなどで証明印がもらえないケースが少なくありません。
3. 実務経験証明書の書き方(様式のポイント)
実務経験証明書は、都道府県ごとにほぼ同じ様式(第8号)を使用します。
書く欄はシンプルですが、記載内容の正確さが審査通過のカギになります。
(1) 業種の記載
- 1行目の業種欄には、1つの業種だけを記入。
- 例:「大工工事」「造園工事」など。複数業種は1枚にまとめない。
(2) 証明者欄
- 会社名、所在地、代表者名を記入。
- 他社の場合は必ず社印(代表者印)を押してもらう。
(3) 技術者情報
- 氏名、生年月日は様式第8号の「専任技術者」欄と一致させる。
- 異なると別人扱いになる可能性がある。
(4) 使用者の商号・期間
- 実務経験を積んだ会社名と、その期間を記入。
- 雇用契約や在籍証明と一致していることが望ましい。
(5) 職名
- 当時の役職名(例:現場作業員、現場監督、主任など)を正確に。
- 曖昧な表現は避ける。
(6) 実務経験の内容
- 「とび・土工工事」など業種名だけでは不可。
- 具体的な工事名・内容を記載。
例:「〇〇マンション外壁修繕工事に伴う足場組立・解体」
こうすることで、その業種に該当する作業であることが判断できます。
(7) 工期・経験年数
- 工期を正確に記入。
- 重複期間は除外。合計欄で必要月数(60か月等)以上になるように。
4. 江東区・那覇市における実務上の注意点
東京都江東区
- 東京都庁は書類整合性を重視。
- 税務申告書や請求書、契約書などの裏付け資料を求められることが多い。
- 実務経験証明書の記載と契約書上の工事内容が一致しているか必ず事前確認。
沖縄県那覇市
- 県庁の審査は比較的柔軟だが、証明者との関係性を重視。
- 島内企業間の取引が多く、証明者が知人・親族の場合でも形式を整える必要あり。
- 廃業企業の場合、元代表者の実印+印鑑証明で証明可能なケースもある。
5. よくあるトラブルと回避方法
トラブル1:過去の勤務先が証明してくれない
回避策
- 契約書・請求書・注文書・工事写真を組み合わせ、補完資料として申請。
- 第三者証明(元現場監督や元発注者による証明)を利用できる場合もある。
トラブル2:期間計算ミス
回避策
- 工期の重複を月単位で整理する。
- Excelなどでカレンダー形式にして可視化するとミスが減る。
トラブル3:業種分類ミス
回避策
- 建設業法の業種区分表を必ず確認。
- 同じ工事でも、業種によって該当が異なる場合あり(例:造園工事と土木一式工事の境界)。
6. 実務経験証明をスムーズに通すコツ
- 証明者への事前説明
- 書き方例を渡し、印鑑証明や押印の手順も説明しておく。
- 裏付け資料の準備
- 契約書、注文書、請求書、工事写真などを整理。
- 期間の重複チェック
- 月ごとに実績を並べて確認。
- 業種ごとに分ける
- 造園、大工、内装仕上げ工事など、別業種は別の証明書にする。
- 申請前の予備審査
- 東京都庁や沖縄県庁の建設業担当窓口で事前チェックを受ける。
7. 江東区・那覇市でのサポート事例
事例1(江東区)
- 資格なしの内装業者の代表者が申請希望。
- 過去勤務先がすでに廃業。
- 元発注者(ビル管理会社)から工事内容証明を取得し、契約書・請求書とセットで提出 → 許可取得成功。
事例2(那覇市)
- 造園業の個人事業主。
- 兄が営む会社で5年以上勤務していたが、正式な雇用契約はなし。
- 納品書・現場写真・発注書を組み合わせ、兄が証明者として署名捺印 → 県庁審査を通過。
8. まとめ
- 実務経験証明書は資格がない場合に必須。
- 証明者の協力と、裏付け資料の準備が成否を分ける。
- 工期重複は月単位で除外し、必要期間を満たすこと。
- 江東区は書類整合性、那覇市は証明者の形式性に特に注意。