
将来の判断能力低下に備えて、自分で信頼できる人を後見人に選んでおける任意後見制度。
認知症対策や老後の財産管理、生活支援のために活用する方が年々増えています。
しかし実際に利用しようとすると、
「費用はどれくらいかかるのか?」
「契約後に予想外の出費はあるのか?」
「安く抑える方法はあるのか?」
といった疑問が必ず出てきます。
この記事では、任意後見制度の費用相場と内訳、そして契約前に押さえておくべき注意点を、江東区・那覇市での実務経験を交えて解説します。
1. 任意後見制度の費用構造は「3段階」
任意後見制度は、契約して終わりではありません。
実際にかかる費用は、以下の3つの段階に分けて考えるとわかりやすいです。
- 契約締結時の費用(公正証書作成)
- 制度開始時の費用(家庭裁判所申立て)
- 開始後の継続費用(後見人・監督人の報酬)
2. 契約締結時にかかる費用
(1) 公正証書作成費用
任意後見契約は公正証書で作成する必要があります。
全国共通ですが、公証人の手数料は法律で決まっています。
- 基本手数料:11,000円(1契約)
- 財産額に応じた加算(例:5000万円で+23,000円程度)
- 正本・謄本の発行:数千円
相場:2万~5万円程度
(2) 専門家報酬(任意)
行政書士や司法書士、弁護士などに契約書案作成やアドバイスを依頼する場合の費用です。
江東区や那覇市では以下のような相場が見られます。
- 行政書士・司法書士:5万~15万円
- 弁護士:10万~20万円
→ 契約内容が複雑(不動産売却可否、複数後見人など)な場合は高くなります。
3. 制度開始時にかかる費用
契約後すぐに任意後見が始まるわけではありません。
本人の判断能力が低下し、家庭裁判所に申立てを行って任意後見監督人が選任された時点で開始されます。
(1) 家庭裁判所申立て費用
- 申立手数料(収入印紙):800円
- 連絡用郵便切手:3,000~5,000円(裁判所により異なる)
- 医師の診断書:5,000~20,000円(医療機関による)
相場:1万~3万円
(2) 専門家に申立書作成を依頼する場合
- 行政書士・司法書士:5万~15万円
- 弁護士:10万~20万円
※書類の作成だけでなく、裁判所への同行や面接対応まで依頼する場合は高額になります。
4. 開始後にかかる継続費用
任意後見が開始されると、家庭裁判所が選任した任意後見監督人の監督下で後見が行われます。
この監督人に対して、毎月または年単位で報酬を支払う必要があります。
(1) 任意後見監督人の報酬
- 東京家裁(江東区管轄):月1万~3万円が多い
- 那覇家裁(沖縄県):月1万5千~2万5千円が多い
※財産額や事務の複雑さによって変動。高額資産の場合、月5万円以上の事例も。
(2) 任意後見人への報酬
- 家族が任意後見人の場合は無報酬が多い
- 専門職が任意後見人の場合は月2万~5万円程度
5. トータル費用の目安(江東区・那覇市の実務例)
項目 | 江東区の例 | 那覇市の例 |
公正証書作成 | 約3万円 | 約3万円 |
専門家報酬(契約時) | 10万円 | 8万円 |
裁判所申立費用 | 1.5万円 | 1.2万円 |
専門家報酬(申立時) | 10万円 | 8万円 |
監督人報酬(月額) | 2万円 | 1.8万円 |
年間維持費 | 約24万円 | 約21.6万円 |
6. 費用面での注意点
注意点① 長期になるほど負担増
任意後見は一度始まると、本人が亡くなるまで続くのが原則です。
10年以上継続すれば、監督人報酬だけで200万円以上になることもあります。
注意点② 「後からの契約変更」はほぼ不可能
開始後に契約内容を変更することはできません。
「もっと安くできた」「別の人にすればよかった」と思っても遅いので、契約前の設計が重要です。
注意点③ 専門職後見人は高コスト
後見人も監督人も専門職にすると、月4万~8万円の費用がかかる場合もあります。
江東区では不動産管理や賃貸物件収入があるケースで、監督人・後見人とも専門職という事例が多く、費用がかさみます。
7. 費用を抑えるための工夫
- 契約時の設計でシンプルにする
財産管理の範囲や権限を絞ると、監督人の業務が軽くなり、報酬も下がります。 - 家族を任意後見人に、専門職を監督人に
監督人だけ専門職にすることで、費用と安心感のバランスが取れます。 - 家族信託との併用
大きな資産は信託で管理し、任意後見は生活支援部分だけにする方法も有効です。
8. まとめ
任意後見制度の費用は、
- 契約時:数万円~20万円程度
- 開始時:1万~20万円程度
- 開始後:月1万~5万円程度(監督人報酬)
が相場です。
しかし、契約内容や資産規模、後見人の人選によって総額は大きく変わるため、事前の設計と見積もりが非常に重要です。
江東区・那覇市の実務感覚としては、
「最初に制度設計をしっかり固めること」
「後見人と監督人の役割分担を明確にすること」
が、費用面でも安心面でも最大のポイントです。