(家族信託の続き)家族信託制度のメリットとデメリットについて

前回は家族信託について解説しましたが、その続きです。

高齢化する日本社会で安心した老後と家族との関係に大きく寄与する、家族信託とは – 行政書士見山事務所 (miyamashinji.jp)

家族信託は、従来の成年後見制度とは異なる財産管理の新しい手法として、特に高齢化社会において注目されています。以下では、家族信託のメリットとデメリットについて詳しく解説します。

目次

家族信託のメリット

1. 委託者の意向を最大限に尊重

家族信託は、委託者が元気なうちに信託契約を結ぶことで、その後の判断能力低下や死亡に関係なく、委託者の意向に基づいた財産管理が行えます。成年後見制度では、家庭裁判所の監督下で後見人が財産を管理するため、本人の意思が完全に反映されにくい場合がありますが、家族信託では信託契約に基づき、受託者が柔軟に財産管理を行うことが可能です。

2. 財産活用と運用の自由度

成年後見制度では、成年後見人が本人の財産を売却する際や資産運用を行う際には家庭裁判所の許可が必要です。しかし、家族信託では委託者が信託契約を結ぶことで、受託者が財産の売却や運用を自由に行うことができます。例えば、不動産を活用した相続税対策や資産運用も可能です。

3. 信託財産の保全

信託財産は受託者の固有財産とは異なるため、仮に受託者が破産しても信託財産は受託者の債権者から守られます。これにより、信託財産の安全性が確保され、委託者の意図した通りの財産管理が継続できます。

4. 受益権の柔軟な設定

信託契約において、受益権の発生、変更、消滅などを自由に定めることができます。例えば、受益者を連続的に設定することで、民法では実現できなかった数世代先の財産承継を計画することが可能です。これにより、財産の長期的な管理と承継が容易になります。

5. 遺言の撤回リスクを軽減

遺言はいつでも撤回できますが、信託は一度設定すると、信託財産の所有権が形式的に受託者に移るため、遺言のような撤回リスクがありません。これにより、推定相続人間の遺言書き換え合戦(圧力)を防ぎ、委託者の意向を確実に反映させることができます。

家族信託のデメリット

家族信託には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。以下では、家族信託のデメリットについて詳しく解説します。

1. 身上監護権の欠如

家族信託には、成年後見制度における身上監護権(本人のために介護施設との入所契約や介護保険サービスの利用などを行う権利)がありません。したがって、本人の生活支援や介護が必要な場合には、家族信託と成年後見制度を併用する必要があります。

2. 監督機能の不足

信託設定時に信託監督人を選任しない場合、受益者のみが受託者の監督を行います。しかし、受益者に監督能力が欠如している場合や代理人がいない場合には、成年後見制度のような家庭裁判所の監督機能がないため、信託の運用に問題が生じる可能性があります。したがって、信託監督人の選任を検討することが重要です。

3. 税務面の注意点

家族信託には税務面での注意点が多く、専門家のアドバイスを基に信託を設定する必要があります。信託契約の仕方によっては、贈与税やその他の予期せぬ税金が発生することがあります。法律面と税務面の知識がないと、家族信託の利便性が低下する可能性があります。

まとめ

家族信託は、高齢者の財産管理や相続対策として非常に有用な手法です。委託者の意向を最大限に尊重し、財産の活用・運用の自由度を高めることができます。しかし、身上監護権の欠如や監督機能の不足、税務面での注意点も存在するため、家族信託を活用する際には専門家のアドバイスを基に慎重に進めることが重要です。

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