認知症になると遺言書は作成できない!?公正証書遺言でも無効になる場合も

現代の日本では、親の認知症や高齢化に伴う相続問題がますます増えています。特に認知症の進行とともに、遺言書の作成や相続手続きに大きな影響を及ぼすことが多いです。沖縄県那覇市や東京都江東区にお住まいの皆様に向けて、認知症が遺言書の有効性にどう関わるか、相続対策を早めに行う必要性について解説します。

1.認知症と遺言書の無効リスク

遺言書が作成された時点での「遺言能力」は、遺言が有効か無効かを判断する重要な基準です。認知症を患っていると、法律行為を有効に行える意思能力を欠いていると見なされる場合があり、その際は遺言書が無効とされる可能性があります。

1-1.認知症が相続対策に及ぼす影響

認知症は脳の機能が低下する病気で、進行に伴って物忘れや判断力の低下が見られ、最終的には他者の言動や行動を理解できなくなることもあります。民法には、「意思能力を有しない者の法律行為は無効である」という旨が記されています。
認知症の程度が軽ければ意思能力があると見なされることもありますが、症状が進むと遺言が無効となるリスクが増すため、親が認知症を発症する前に準備を進めることが重要です。

1-2.相続準備は早めに取り掛かる

内閣府の調査によると、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると予測されています。「自分の親はまだ大丈夫」と楽観視するのではなく、早期に相続の話し合いを始めることが大切です。
親に対して遺言書の作成を促すのは難しいかもしれませんが、まずは家族全員で相続財産の有無や分配方法について話し合うことが良い第一歩となります。不明な点があれば、専門の行政書士等に相談することも有効です。

1-3.任意後見制度の活用

任意後見制度は、認知症や意思能力が低下する事態に備え、あらかじめ財産管理を委任できる人を選ぶ制度です。遺言書と併せて任意後見契約を結ぶことで、認知症が進行しても財産の適切な管理が確保できます。任意後見契約は本人が意思能力を有している時にしか締結できませんので、早めの準備が必要です。

2.認知症でも公正証書遺言は有効か?

公証人によって作成される公正証書遺言は、遺言書の偽造リスクが低く、法的にも有効性が高いとされています。しかし、認知症を患った状態で公正証書遺言を作成する場合は、注意が必要です。

2-1.遺言能力と証明の問題

遺言能力が無ければ、どのような形式の遺言書であっても無効とされる可能性があります。公証人が質問を通じて遺言者の意思を確認しますが、その際の認知症の程度や判断力によっては、遺言が無効とされるリスクが残ります。
通常、認知症の有無や度合いは「長谷川式スケール」などの認知症テストで確認されますが、この評価が遺言能力を完全に証明するものではありません。

2-2.成年被後見人による遺言書作成

成年被後見人が遺言書を作成する際、本人に一定の意思能力がある場合に限り、医師の立ち合いのもとで自筆の遺言を残すことが可能です。成年後見制度を利用する際は、家庭裁判所の判断に基づき、遺言が本人の意思によるものと証明されることが必要です。

3.遺言書が無効とされるケースと対策

認知症の親が遺言書を残していた場合、遺言の有効性に関して親族間で意見が対立することも少なくありません。裁判所が最終的な判断を下す際、遺言が無効となるケースもあります。

3-1.遺言無効確認調停の申し立て

遺言内容に納得できない相続人がいる場合、家庭裁判所に「遺言無効確認調停」を申し立てることが可能です。調停で解決が難しい場合は、訴訟に進み「遺言無効確認請求訴訟」を提起します。
調停は当事者間の話し合いを重視する制度ですが、感情的な対立が深い場合には調停での解決が難しく、訴訟が必要になることもあります。

3-1-1.遺言能力の判断基準

遺言作成時の本人の状態が遺言能力を有するかどうかを判断するのは、医師でも公証人でもなく、最終的には裁判所です。遺言能力の有無は認知症の診断結果や本人の行動・判断力、遺言の内容などを総合的に判断して決定されます。
親族間のトラブルを防ぐためにも、医療記録やカルテの写しなどを日頃から保管し、証拠を揃えておくことが有効です。

3-2.無効時の遺産分割協議

裁判で遺言書が無効と判断された場合、相続人全員で遺産の分割方法について協議する「遺産分割協議」が必要です。協議が整わない場合、弁護士を立てて第三者の介入を求めると円滑に進むこともあります。

4.認知症による遺言の無効とその予防策

親が認知症を発症する前に相続準備を整えることが、トラブル回避のために最も重要です。遺言書は、公正証書であっても認知症が影響する場合がありますので、作成時の確認や準備をしっかり行いましょう。

認知症進行を見越してできること

認知症は一度発症すると進行が止まらないことも多く、徐々に判断力が低下することで相続に関する問題が発生しやすくなります。したがって、財産の分割や遺産に関する希望を遺言書で残すだけでなく、財産管理を任せられる人を決めておくなど、事前にできる対策を講じることが求められます。

沖縄県那覇市や東京都江東区で行政書士等の専門家に相談し、適切なアドバイスを受けながら準備を進めることで、認知症に伴うトラブルを最小限に抑えることが可能です。

目次