建設業許可の専任技術者における学歴・指定学科と実務経験の関係、学校証明書の取り寄せ方

建設業許可を取得する際に避けて通れないのが、「専任技術者」の配置です。これは各営業所に必ず1名、一定の資格や経験を有する職員を常勤で配置することが求められる制度です。

第3回では、この専任技術者の要件のうち、「学歴・指定学科」と「実務経験」の関係性に焦点を当て、その要件を証明するために必要な「学校証明書」の取り寄せ方法や注意点について詳しく解説します。

目次

1.専任技術者の要件と学歴の位置づけ

専任技術者として認められるには、基本的に以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 国家資格等の取得者
  • 一定期間以上の実務経験者(例:10年以上)
  • 学歴(指定学科)+短縮された実務経験年数

このうち、資格取得や10年以上の実務経験がない方にとって有効な選択肢となるのが「学歴+短縮された実務経験」というパターンです。ここで重要となるのが、「どの学校を卒業したか」「どの学科を履修したか」という学歴と学科の確認です。

2.学歴により短縮される実務経験期間

学歴と指定学科に該当する場合、必要な実務経験年数が以下のように短縮されます。

学歴の区分必要な実務経験年数
高校・1年制専門学校の指定学科5年以上
短大・高専・大学・2年制専門学校の指定学科3年以上
旧実業学校卒業程度検定合格者5年以上
旧専門学校卒業程度検定合格者3年以上

たとえば、工業高校で建築学科を卒業した方が、大工工事の実務経験を5年以上積んでいれば、専任技術者として申請可能です。資格を持たずとも、「学歴+短縮実務経験」で道が開けるのです。

3.指定学科とは何か?

指定学科とは、建設業法で「この学科を修了していれば技術的な裏付けがある」とされている学科のことです。業種ごとに認められる学科が異なり、代表的なものとして以下のようなものがあります。

  • 建築工学科
  • 土木工学科
  • 電気工学科
  • 機械工学科
  • 建設工学科 など

注意すべきは、学科名は学校によって若干異なるため、形式的な名称の一致だけでは判断できないことです。例えば「建築設計科」「環境デザイン科」などのように似た名称でも、内容が大きく異なる可能性があります。したがって、実際に指定学科かどうかを判断するには、学校から「履修科目証明書」を取り寄せて確認する必要があります。

4.証明書類の収集方法と実務

指定学科に基づく実務経験によって専任技術者になろうとする場合、以下のような書類が必要になります。

必須書類

  • 卒業証明書(卒業年・学科が記載されているもの)
  • 履修科目証明書(学科内容が明記されたもの)
  • 実務経験証明書(従事した工事業種と期間を証明)

これらの書類を通じて、申請先の都道府県や国土交通省は「この人は指定学科を修了していて、かつ所定の実務経験を積んでいる」と判断します。

書類の取り寄せ手順

  1. 卒業校に連絡
     まずは卒業校の「事務局」または「教務課」に電話またはWebで問い合わせを行い、必要書類の発行手続きについて確認します。
  2. 申請用紙の取り寄せ・記入
     多くの学校では「卒業証明書」「履修科目証明書」などの申請書式があり、郵送または窓口で申請できます。手数料も数百円程度が一般的です。
  3. 本人確認書類の添付
     免許証やマイナンバーカードの写しを同封することが求められることがあります。
  4. 発行期間の確認
     証明書発行までに2~3週間かかることもあるため、申請スケジュールには余裕を持って動くことが重要です。

5.注意すべきポイントと実務の工夫

学科名の相違と自治体の判断

学科名が「建築設計科」「住環境科」などのように表記が異なる場合、判断は提出先の自治体に委ねられます。この際、「履修内容」が判断材料になります。よって、履修科目証明書には具体的な講義内容(例:「建築構造」「施工管理」など)が記載されていることが望ましく、できる限り詳細に明記された証明書を取り寄せましょう。

卒業から長期間経過している場合

卒業から20~30年以上経過していると、履修科目証明書が発行できないケースもあります。そうした場合でも、学校によっては当時のカリキュラムに基づく概要証明を出してくれることがあります。あきらめずに学校側と相談しましょう。

海外の学校を卒業している場合

海外の大学や専門学校を卒業している場合、日本国内の指定学科と同等であるかどうかの判断が必要です。これは自治体や国土交通省の判断に委ねられるため、専門の行政書士などに早期に相談することをお勧めします。

6.よくある誤解と事例

「専門学校=指定学科」ではない

2年制以上の専門学校であっても、その学科が建設業法上の指定学科でなければ要件は満たしません。たとえば「インテリア科」や「デザイン科」のような学科は一見建築に関連していそうでも、指定外とされる可能性があります。

「高校は普通科だけど、現場経験は十分にある」場合

このような場合は、10年以上の実務経験により専任技術者になる道が残されています。したがって、学歴だけに頼らず、「経験ルート」での申請が可能かどうかも併せて検討する必要があります。

7.まとめ 学歴と実務経験の「両輪」を活かす申請戦略を

東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業許可を目指す企業や個人事業主にとって、「専任技術者の配置」は極めて重要なステップです。学歴や指定学科に関する正しい理解と、必要書類の丁寧な収集は、スムーズな許可取得に直結します。

とくに中小の建設業者様にとっては、「国家資格を持つ人材がいない」ことが許可取得の障壁になりがちですが、学歴と実務経験を適切に証明できれば、その壁を乗り越えることが可能です。

行政手続きは、細かい証明書類の内容で合否が分かれるケースも少なくありません。不安な点があれば、地域に精通した行政書士など専門家に相談しながら進めることが、許可取得への近道となるでしょう。

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