投資信託がある場合の遺産分割協議書とは?~相続トラブルを防ぐために押さえるべきポイント~

相続手続の中でも、相続財産の内容が多岐にわたるケースでは、遺産分割協議書の記載に特別な注意が必要になります。その中でも特に注意を要するのが「投資信託」です。現金や預貯金と異なり、投資信託には日々の基準価額の変動があるため、正確な財産評価や受け取り方法に関する合意を怠ると、後のトラブルにつながりかねません。

本記事では、東京都江東区および沖縄県那覇市にお住まいの皆様に向けて、投資信託が含まれる相続の場合に、どのように遺産分割協議書を作成すべきか、具体的な記載方法や注意点をわかりやすく解説します。

目次

1. 投資信託とは?相続手続にどう影響するのか

投資信託(ファンド)は、投資家から集めた資金を専門家が複数の株式や債券に分散投資する金融商品です。預貯金とは異なり、時価(基準価額)が日々変動するため、遺産分割の段階での「評価額の決定」が重要になります。

投資信託が相続財産に含まれていた場合、その口座を管理する証券会社や銀行で名義変更や解約の手続きが必要になりますが、その前提として、誰がその投資信託を相続するのかを明確に示した遺産分割協議書が不可欠です。

2. 遺産分割協議書に記載すべき基本情報

投資信託が相続財産に含まれている場合、遺産分割協議書には以下の情報を正確に記載する必要があります。

取扱い証券会社(金融機関)・支店名

相続の手続きでは、対象となる投資信託がどこの金融機関に預けられていたものなのかを明確に記載します。

例:
「野村證券株式会社 銀座支店における…」

商品名(ファンド名)

投資信託にはさまざまな名称があります。類似の名称も多いため、正式な商品名を記載します。

例:
「野村日本株投資信託(安定型)」

銘柄コード

証券会社が商品を識別するためのコードです。記載しておくことでより明確になります。

例:
「銘柄コード:12345678」

口数(保有量)

投資信託は「口数」という単位で保有します。遺産分割協議書には、相続対象となる口数を記載します。

例:
「10,000口」

価値算定基準日

投資信託は日々基準価額が変動します。そのため、「遺産分割協議を行った時点の金額」で合意してしまうと、後で「価値が下がって損をした」といったトラブルになる可能性があります。

そこで「どの時点での評価額に基づいて分割するか」を明記します。

多くの場合は「被相続人の死亡日(相続開始日)」を基準とすることが一般的です。

3. 書き方の具体例

以下に、投資信託を相続財産として遺産分割協議書に記載する際の具体的な書き方の例を示します。

記載例(遺産分割協議書の本文の一部)

被相続人〇〇〇〇(令和6年〇月〇日死亡)の有していた以下の投資信託については、相続人〇〇〇〇が全てを相続するものとする。

  • 金融機関名:〇〇証券株式会社 〇〇支店
  • 商品名:〇〇・グローバル株式ファンド
  • 銘柄コード:12345678
  • 保有口数:20,000口
  • 価値算定基準日:令和6年〇月〇日(被相続人死亡日)

4. 遺産分割協議書に基づく実務上の注意点

名義変更または解約に必要な書類

遺産分割協議書が完成した後、実際に金融機関で手続きを行うには、以下の書類が必要です。

  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人の戸籍(出生から死亡までの連続したもの)
  • 相続人の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(原本)
  • 相続人全員の本人確認書類(免許証など)

金融機関によって提出様式に違いがあるため、事前に確認しておくことが重要です。

解約による現金化か、そのまま相続するか

投資信託は、現金に換えて分割する(解約)か、そのまま口数ごとに相続する(名義変更)かの選択が可能です。ファンドによっては部分的な分割や名義変更ができない場合もありますので、遺産分割協議前に証券会社へ確認しましょう。

5. 揉めないための工夫 ~相続人間での合意と確認~

投資信託は、現金や不動産と異なり、「目に見えない財産」であるため、相続人間の認識のズレが発生しやすい項目です。以下のような点に注意しながら合意形成を進めることが望ましいです。

  • 基準日を明確に定めておくこと
  • 相続人全員の口頭同意ではなく、文書による明示
  • 金融機関の規約確認と現実的な手続スケジュールの共有

また、証券会社から発行される「残高証明書」や「取引報告書」を活用することで、保有内容の正確な把握が可能になります。

6. 専門家に相談すべきケースとは?

以下のような場合には、行政書士や弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

  • 相続人同士で意見が食い違っている場合
  • 投資信託の口数が複数人に分割できない場合
  • 海外のファンドが含まれている場合
  • 税務上の取り扱いが複雑になるケース(特に相続税)

東京都江東区や沖縄県那覇市の金融機関では、地域ごとの運用ルールや書式の違いもあり得ますので、地域に詳しい専門家に相談することでスムーズな相続が可能になります。

まとめ

投資信託を含む相続では、その変動性や評価方法の違いから、遺産分割協議書への正確な記載と、相続人全員の納得が不可欠です。以下の3つのポイントを押さえましょう。

  1. 証券会社・商品名・口数・評価基準日などを明記する
  2. 評価基準日は相続開始日が一般的
  3. 遺産分割後の手続きの流れを金融機関と確認しておく

遺産分割は人生で何度も経験することではないため、些細なことでトラブルに発展しがちです。少しでも不安があれば、地域に根差した行政書士など専門家への相談をおすすめします。

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