親が急に遺言を作成すると言い出した時の正しいサポート方法について

ある日突然、親から
「遺言を書いておこうと思う」
と言われたら、あなたはどう対応するでしょうか。

相続の現場では、このような場面は決して珍しくありません。病気をきっかけにした場合もあれば、友人や親族の相続トラブルを見聞きしたことが理由になることもあります。一方で、子ども側としては「縁起でもない」「まだ早いのではないか」「どう対応すればいいのか分からない」と戸惑ってしまうケースも多く見受けられます。

しかし、親が自ら遺言を作成したいと言い出した時こそ、家族として適切なサポートができるかどうかが、将来の相続トラブルを大きく左右します。ここでは、親の意思を尊重しつつ、正しい形で遺言作成を支えるためのポイントを整理して解説します。

目次

1.まず大切なのは「止めない」こと

親が遺言を作成したいと言い出した時、よくある反応が
「まだ元気なのに」
「そんなこと考えなくていい」
と、話を止めてしまうことです。

しかし、遺言は亡くなる直前に作るものではありません。判断能力が十分にあるうちに作成するからこそ、法的にも実務的にも有効な遺言になります。特に高齢になるほど、将来の認知症リスクや体調変化を考えると、「今はまだ大丈夫」という判断が後々大きな後悔につながることもあります。

親が自ら言い出したということは、少なからず不安や考えがあってのことです。まずは否定せず、真剣に話を聞く姿勢が重要です。

2.内容に口出ししすぎない姿勢が重要

遺言はあくまで「親本人の意思」を残すためのものです。子ども側が
「こう書いた方がいい」
「公平になるようにしてほしい」
と強く誘導してしまうと、後から遺言の有効性が争われる原因になることがあります。

特に注意すべきなのが、「特定の相続人が関与しすぎた遺言」です。後日、他の相続人から
「無理やり書かせたのではないか」
「判断能力がなかったのではないか」
と主張されると、遺言無効確認訴訟に発展する可能性も否定できません。

サポートの基本は、内容を決めるのは親本人、子どもは環境を整える役割に徹することです。

3.遺言の種類を一緒に整理する

遺言には主に
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
の二つがあります。

親が「自分で紙に書けばいい」と考えている場合でも、そのまま任せるのではなく、それぞれの特徴を整理して伝えることが大切です。

自筆証書遺言は費用がかからず手軽ですが、方式不備や紛失、内容の不明確さといったリスクがあります。一方、公正証書遺言は公証人が関与するため、方式不備がなく、原本が公証役場で保管される安心感があります。

江東区や那覇市では、高齢の方が自筆で長文を書くこと自体が負担になるケースも多く、実務上は公正証書遺言を選択する方が多い傾向にあります。どちらが適しているかを一緒に検討する姿勢が、正しいサポートと言えるでしょう。

4.財産の整理を手伝うことが最大の支援

遺言作成で最も時間がかかるのが「財産の洗い出し」です。不動産、預貯金、有価証券、保険、借入金など、親自身が把握しきれていないことも少なくありません。

この段階で子どもができるサポートは、
・固定資産税の納税通知書を一緒に確認する
・通帳や証券の存在を整理する
・不動産が江東区、那覇市のどこにあるか確認する
といった事務的な部分です。

財産を正確に把握できていない状態で遺言を書くと、書かれていない財産について結局遺産分割協議が必要になり、遺言を作った意味が薄れてしまいます。

5.判断能力の問題を意識する

遺言作成で非常に重要なのが、作成時点での判断能力です。特に高齢の親の場合、後から
「認知症が始まっていたのではないか」
と疑われることがあります。

この点でも、公正証書遺言は大きな意味を持ちます。公証人が本人と直接面談し、意思能力を確認した上で作成するため、後日の紛争リスクを大きく下げることができます。

親が「まだ自分で判断できる」と思っているうちに動くことが、結果的に家族全体を守ることにつながります。

6.遺言作成後の保管と家族への伝え方

遺言を作成した後、その存在が分からなければ意味がありません。特に自筆証書遺言の場合、見つからない、あるいは見つかるまで時間がかかると、相続手続が大きく遅れます。

遺言をどこに保管するのか、誰に存在を伝えておくのかについても、事前に親と話し合っておくことが大切です。法務局の自筆証書遺言保管制度を利用するのも一つの方法です。

7.まとめ

親が急に遺言を作成すると言い出した時、それは不安の表れであると同時に、家族を思う気持ちの表れでもあります。その気持ちを尊重し、正しくサポートできるかどうかで、将来の相続が円満に進むかどうかが決まります。

止めないこと、口出ししすぎないこと、環境を整えること。この三点を意識しながら、遺言作成を前向きな家族の取り組みとして進めていくことが理想です。

江東区、那覇市のように不動産を含む相続が多い地域では、遺言の有無が相続の難易度を大きく左右します。親が動き出したそのタイミングこそ、家族にとって最も重要な準備の機会と言えるでしょう。

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