
不動産を相続したものの、忙しさや話し合いの難しさから「相続登記を後回しにしている」というケースは決して珍しくありません。実は相続登記をしないまま放置すると、想像以上に大きな問題が発生します。令和六年四月からは相続登記が義務化され、登記を行わない場合には過料の対象となる可能性があり、今後は「放置する」という選択が大きなリスクへと変わりつつあります。
この記事では、不動産の相続登記を放置した場合に実際に起こり得る問題や、江東区および那覇市で特に注意すべきポイントについて、できる限り分かりやすく整理して解説します。
1.相続登記を放置する根本的なリスク
相続登記を怠ると、法律上、その不動産は相続人全員の「共有状態」のままになります。共有状態の間は、不動産を売ることも担保に入れることも基本的にできません。不動産の管理や処分をめぐって意見が対立し、話し合いが進まない事例も多くあります。
共有状態の問題は時間が経てば経つほど複雑になります。相続人の一人が亡くなれば、次の世代の相続人が増えていき、登場人物が増加して話し合いが困難になってしまいます。相続を放置するということは「将来のトラブルを確実に増やす」という行為に近いと言えます。
2.売却できなくなる可能性
相続登記をしていない不動産は、所有者の範囲が明確でないため、不動産会社や買主側からすると安心して売買契約ができません。売却を進めたくても、相続人全員の署名押印が必要になり、一人でも連絡がつかない場合は手続が止まり、売却が不可能となります。
特に東京都江東区では、今後の再開発や都市整備によって不動産価値が影響を受ける可能性があり、好条件で売却する機会を逃してしまうことがあります。沖縄県那覇市では、土地の持ち分が複雑化しやすい地域柄もあり、早期の登記が実務上とても重要です。
3.相続人が増えて話し合いが困難になる
例えば、相続人が三人だけの段階では比較的協議が進めやすいかもしれません。しかし、十年、二十年と時間が経つと、相続人の一人が亡くなり、その子供が新たに相続人となります。相続人の世代交代とともに人数が増え、十数人、場合によっては数十人になることもあります。
協議を行おうにも、誰がどこに住んでいるのか分からない場合や、海外に居住している相続人への連絡が取れない場合には、遺産分割協議そのものが成立しません。結局、裁判所で遺産分割調停を申立てることになり、時間・費用・労力の負担が一気に増大します。
4.固定資産税の負担が重くなることがある
相続登記がされていない場合、市区町村は従来の所有者に対して固定資産税を課税します。つまり、亡くなった方の名義のまま固定資産税納付書が届き、相続人が代わりに負担しているというケースが全国で多数見られます。
固定資産税は、不動産を利用できず売却もできない状態であっても毎年かかるため、放置すればするほど支出だけが増え続けます。江東区や那覇市では、自治体独自の施策によって土地利用が進んでいるため、相続後の不動産管理は早期に検討すべき課題です。
5.第三者に所有権を主張できなくなる可能性
相続登記がされていない不動産は、相続人が実際に使用していたとしても、登記簿上の権利関係が明らかでないため、所有を法律上主張しにくくなります。第三者からの権利侵害やトラブルが発生した際に、不動産を守る法的手段が限られてしまう恐れがあります。
不動産は「登記によって権利を守る」という制度で運用されています。登記がなければ所有権を対外的に証明することができず、結果的に財産の価値が大きく損なわれることになります。
6.相続登記をするための具体的な流れ
相続登記には次の手続を行います。
1.法務局で登記申請の準備をする
2.相続人を確定するための戸籍一式を収集する
3.遺産分割協議書を作成する
4.固定資産評価証明書を取得する
5.登記申請書を作成し法務局へ提出する
戸籍収集は本籍地ごとに取り寄せる必要があり、特に相続人が江東区と那覇市にまたがる場合には注意が必要です。遺産分割協議書については、相続人が一人でも欠けると無効となるため、正確な作成が求められます。
7.まとめ
相続登記を放置すると、時間の経過とともに問題の規模が大きくなり、解決が難しくなります。令和六年施行の相続登記義務化により、今後は放置自体が法令違反の対象にもなります。
相続が発生したら、早めに登記を行うことが将来のトラブルを防ぐ最大のポイントです。不動産の価値を守り、相続人間の負担と争いを少なくするためにも、必要な手続きはできる限り迅速に進めることが重要です。

