
相続対策の中心となるものが遺言書です。自分の財産を誰にどれだけ残すかを明確にしておくことは、残された家族の負担軽減につながり、円滑な相続の第一歩となります。しかし、遺言書は書けば必ず役に立つものではありません。内容に不備があると、むしろトラブルの原因となり、相続人同士の関係が悪化したり、相続手続が長期化したりすることがあります。
ここでは、相続の現場で特に問題になりやすい遺言書の作成ミスについて、具体例を挙げながら詳しく解説します。東京都江東区および沖縄県那覇市で相続を検討されている方の参考になれば幸いです。
1.財産の特定があいまいになっている遺言書
遺言書で最も重要なのは、財産を「特定できるかどうか」です。どの財産を誰に渡すかが不明確だと、相続手続きが進みません。
たとえば「自宅不動産を長男に相続させる」という記載は一見問題なさそうですが、不動産を特定する最低限の情報である所在、地番、家屋番号などが記載されていなければ、法務局で登記申請ができません。
江東区のマンションや那覇市の一戸建て物件でよくあるのが、マンションの部屋番号や土地の地番を省略してしまうケースです。この場合、遺産分割協議書の作成で補足する必要が出てきたり、再度遺言書を作り直す事態にもなりかねません。
財産の特定は、固定資産税納税通知書や登記事項証明書などを手元に置き、記載内容を正確に書くことが重要です。
2.遺言執行者が決められていない遺言書
遺言書には「遺言執行者」を指定しておくことが強く推奨されます。遺言執行者とは、遺言の内容を実際に手続に移す役割を担う人です。
遺言執行者がいない場合、名義変更や預金解約などの手続は相続人全員の署名や押印が必要になります。相続人が多かったり、遠方に住んでいたり、連絡がつきにくい人がいる場合、それだけで手続が大きく遅れます。
特に那覇市では、兄弟が本土と沖縄にそれぞれ居住しているケースが多く、連絡調整だけで時間がかかることがあります。遺言執行者を指定しておけば、手続を一元管理でき、相続人の負担を大幅に軽減できます。
遺言執行者としては、信頼できる親族でも構いませんが、より確実を求める場合は親族と併せて行政書士等の専門職を指定する方法もあります。
3.相続人以外への配慮が不足している遺言書
遺留分に関する配慮が不足している遺言書は、後々争いになる可能性があります。遺留分とは、法律で保障された最低限の取り分のことです。
例えば、全財産を長男に相続させると記載し、他の子や配偶者の取り分がゼロになってしまう場合、遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。これがきっかけで相続人同士の関係が決定的に悪化してしまうことも珍しくありません。
江東区でも那覇市でも、実務上頻繁に見られるのが「特定の子だけに大きく偏った内容の遺言」です。理由なく偏りすぎた遺言は争いの原因となるため、財産のバランスは慎重に検討する必要があります。
4.内容が古く、現状に合っていない遺言書
一度作った遺言書は未来永劫有効というわけではありません。財産状況や人間関係は時間とともに変化します。新しい財産が増えたり、相続人が結婚したり、逆に死亡したりすることもあります。
例えば、不動産を長女に相続させると遺言書に記載していたが、その後、同じ不動産を売却してしまったというケースがあります。この場合、その部分の遺言は無効となり、別途協議が必要になります。
また、江東区で新築マンションを購入した、那覇市で土地を取得したなど、相続財産に変動があった場合には、遺言書の見直しが不可欠です。遺言書は作成した時点で終わりではなく、定期的な見直しを行うことが重要です。
5.財産をすべて列挙していない遺言書
財産は目に見えるものだけとは限りません。預金、証券、不動産などのほかに、借入金や保証債務などの負債も相続財産に含まれます。
遺言書に不動産しか書かれていない場合、預貯金については別途遺産分割協議が必要になります。これにより協議書の作成や相続人全員の実印、印鑑証明書が必要となり、大きな負担になります。
江東区や那覇市では、金融機関の口座が複数存在することが多く、漏れが発生しやすいため、財産調査をしっかり行った上で遺言書を作成することが望まれます。
まとめ
遺言書の作成ミスは、そのまま相続のトラブルに発展します。財産の特定が曖昧、遺言執行者の不在、遺留分の問題、財産の漏れなど、事前に注意すべきポイントは多数あります。
遺言書は「書けば安心」ではなく「正しく書いて初めて効果が発揮されるもの」です。自分の意思を確実に残し、相続人に余計な負担をかけないためにも、内容のチェックや定期的な見直しは欠かせません。
遺言は将来の争いを防ぎ、家族に安心を残すための大切な書面です。江東区、那覇市にお住まいの方で遺言の作成や見直しを検討されている場合は、専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。

