
外国人の方が日本で働き続けるためには、期限が切れる前に「在留資格(就労ビザ)」の更新を行う必要があります。一見すると単なる「更新手続き」と思われがちですが、実際には申請内容に応じて審査の難易度や必要書類、審査期間が大きく異なるケースがあります。
この記事では、在留資格更新の際によく見られる2つのパターン――「①単純な更新」と「②転職している場合の更新」――について、行政書士の立場から、実務的な観点も踏まえて詳しく解説します。
1. 単純な更新:前回と同じ勤務先・同じ仕事内容
最もシンプルなケースがこの「単純な更新」です。以下のような状況に該当する方が対象になります。
- 前回と同じ会社に勤めている
- 職務内容(仕事内容)も変更がない
- 勤務先の名称・住所・代表者・業務内容などにも変更がない
つまり、「在留資格の活動内容に全く変化がない」場合です。
単純更新の特徴
このようなケースでは、出入国在留管理局の審査も比較的スムーズに進む傾向があります。必要書類も最小限で済み、特別な事情がなければ1〜2か月程度で許可されることが多いです。
単純更新で必要な主な書類(例)
- 在留資格更新許可申請書
- パスポート・在留カード
- 雇用契約書(更新前と変わりがない旨が明記されたもの)
- 勤務先の会社概要書またはパンフレット
- 源泉徴収票(前年分)
- 納税証明書(市区町村役所で取得)
- 会社側の決算書類(直近1期分)
※個々の状況により追加資料が求められる場合があります。
江東区・那覇市にお住まいの方へ
東京都江東区や沖縄県那覇市など、外国人就労者が比較的多い地域では、地元の税務署や役所でも在留資格関連の書類取得に慣れていることが多いため、事前に必要な資料を確認し、スムーズに準備を進めましょう。
2.転職後の更新:勤務先が変わった場合の更新
次に多いのが、就労期間中に転職をし、勤務先が変わった場合の更新です。この場合でも、「在留資格の種類(技術・人文知識・国際業務など)」自体が変わらなければ、「変更申請」ではなく「更新申請」として扱われます。
ただし、審査の実態としては「新規申請と同じくらい慎重」に行われます。
転職後の更新で審査が厳しくなる理由
以下の点が新たに確認されるためです。
- 新しい勤務先が在留資格にふさわしい業務を提供しているか
- 転職後の仕事内容が、現在の在留資格の活動内容と合致しているか
- 新勤務先が安定した経営状況にあるか
- 労働条件が適正か(違法労働や名ばかり雇用ではないか)
これらの確認があるため、書類の分量が増え、審査期間も長くなります。実際、通常の単純更新より1〜2か月長くかかるケースも珍しくありません。
転職後の更新で必要な主な書類(例)
- 在留資格更新許可申請書
- パスポート・在留カード
- 新しい雇用契約書
- 新勤務先の会社概要書・登記事項証明書・決算書類
- 直近の給与明細(転職後)
- 転職理由書(提出が求められる場合あり)
- 源泉徴収票(前職分)
また、提出書類において「職務内容の説明」や「会社の業務内容との関連性の説明」など、日本語での論理的な文章作成が求められる場面もあります。専門家の助言を受けることで、内容の不備を防ぐことができます。
3.「就労資格証明書」で更新をスムーズにする
転職してから更新を迎える場合に有効なのが、「就労資格証明書」の取得です。
これは、転職後に新勤務先での業務内容が現在の在留資格に適合しているかどうかを、事前に出入国在留管理局が審査して証明するものです。
就労資格証明書を取得するメリット
- 在留資格更新時に審査がスムーズになる
- 雇用主側も安心して雇用を継続できる
- 更新時の審査が単純更新に近い扱いとなることがある
つまり、転職後すぐに「就労資格証明書」を取得しておけば、更新時のリスクを大幅に減らすことができます。
就労資格証明書の申請タイミング
理想的には、転職後1〜2か月以内に申請するのが望ましいです。会社が外国人雇用に慣れていない場合などは、行政書士が間に入って説明や書類作成をサポートすることで、雇用主側の不安も軽減できます。
4.更新申請のポイントと注意点
- 有効期限ギリギリの申請は避ける
→ 転職後の更新は特に審査が長くなる傾向があるため、できれば3か月前には準備開始しましょう。 - 前回と違う点は明確に説明する
→ 在留資格と職務内容が合っていることを丁寧に説明することが大切です。 - 雇用先企業の経営状況も審査対象
→ 赤字決算や法人設立直後などの場合、追加資料や補足説明が必要になることがあります。 - 更新申請中にビザが切れても最大2か月は在留可能
→ ただし、審査結果が「不許可」になった場合は退去のリスクが生じます。更新に自信がない場合は専門家への相談が重要です。
まとめ
就労ビザ(在留資格)の更新は、「①単純な更新」と「②転職後の更新」に大きく分かれ、それぞれに必要な準備や注意点が異なります。特に転職後の更新は、新規申請に近い審査となるため、時間と労力がかかります。
しかし、事前に「就労資格証明書」を取得しておくことで、更新時のハードルを下げることも可能です。江東区や那覇市といった都市部では、外国人就労者向けの支援も整ってきていますが、個別のケースに応じた対策を講じることが大切です。
必要に応じて行政書士などの専門家に相談し、余裕を持って申請準備を進めることで、日本での就労生活を安心して継続できるようにしましょう。