相続人以外が遺贈されるとコストが5倍!?不動産を遺贈する場合の登記と税務上のポイント

目次

1.「遺贈」による不動産の取得とは?

まず前提として、「遺贈(いぞう)」とは、亡くなった方(被相続人)が遺言によって特定の財産を相続人または第三者に与える行為を指します。不動産が遺贈の対象となるケースも多く、「○○市の土地を長男に遺贈する」「那覇市のマンションをお世話になった友人に遺贈する」といった内容が公正証書遺言などに記載されます。

遺贈には以下の2種類があります。

特定遺贈

遺産のうち、特定の財産(例:土地や建物)を、相続人または第三者に渡すことを明示するもの。

包括遺贈

財産全体または一定割合(例:全財産の1/3)を指定する遺贈。

今回の記事では、実務で特に重要となる「不動産を特定遺贈する場合」に焦点を当てて解説します。

2.不動産の遺贈に必要な登記手続きとは?

不動産を遺贈で取得した場合、そのまま放置していても法的な所有者になれるわけではありません。法務局で名義変更(所有権移転登記)を行う必要があります。

名義変更登記の必要書類

書類名内容・備考
登記申請書法務局に提出
遺言書(公正証書遺言など)原本または謄本
被相続人の戸籍一式出生から死亡までの戸籍類(死亡の確認)
住民票(被相続人・受遺者)住所・氏名の確認用
固定資産評価証明書課税標準額を記載したもの(各市区町村で取得)
登録免許税の納付書登録免許税は原則「固定資産評価額×0.4%」

不動産の所在地を管轄する法務局へ申請することになります。江東区の不動産であれば「東京法務局」、那覇市の不動産であれば「那覇地方法務局」が管轄になります。

3.遺贈にかかる税金のポイント

不動産を遺贈で取得した場合、「贈与税」ではなく「相続税」がかかります。以下、重要な税務上の注意点を整理します。

遺贈による取得は原則「相続税」の対象

相続税は、「遺言によって取得した財産」も課税対象になります。被相続人が亡くなったことによって発生する財産移転であるため、基本的には相続税として扱われます。

【例】那覇市の土地(評価額2000万円)を遺贈で取得した場合
→ 相続税申告の対象となります(基礎控除の範囲内か否かを確認)。

遺贈された人が相続人以外の場合は注意!

相続人ではない第三者(友人、介護者、法人など)が遺贈を受けた場合、相続税の2割加算の対象となる点に注意が必要です。

これは、「法定相続人以外は優遇されない」という趣旨で設けられた制度です。

登録免許税にも注意が必要

不動産を取得した場合には、登録免許税(登記費用)が発生します。

  • 相続による登記:固定資産評価額の0.4%
  • 遺贈による登記:固定資産評価額の2.0%(相続人以外の場合)

つまり、相続人以外の第三者に不動産を遺贈した場合、登記費用も大きくなるため、登記コストが約5倍になるという点は実務上重要なポイントです。

4.遺贈を受けた側の手続きと対応

遺言により不動産を遺贈された受遺者(受け取る人)は、以下のような流れで手続きを進める必要があります。

遺言の確認

  • 公正証書遺言がある場合:その写しを取得
  • 自筆証書遺言がある場合:家庭裁判所の検認が必要

遺贈の受諾(明示または黙示)

  • 遺贈は「受ける/拒否する」の選択ができます。
  • 明確に拒否しない限り、黙示的に受けたと見なされる場合も。

不動産の名義変更登記

  • 上述の必要書類を揃え、法務局に申請。
  • 登録免許税を納付。

相続税申告(必要がある場合)

  • 10か月以内に税務署へ相続税の申告。
  • 相続財産が基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は要注意。

5.遺贈による不動産取得に関する実務上の注意点

受遺者が登記をしないとトラブルの元に

遺贈された不動産の登記を長期間行わないと、他の相続人が無断で売却・処分したり、第三者が権利を主張する可能性もあります。できるだけ早期に登記を完了させることが重要です。

登記の専門知識が必要なことも

特に以下のようなケースでは、登記手続きが複雑になるため、行政書士や司法書士などの専門家への依頼を検討するのが安全です。

  • 不動産が複数の都道府県にまたがる
  • 遺言の文言が曖昧で、登記内容が判断しにくい
  • 受遺者が法人である場合(登記事項証明書なども必要)

6.まとめ 不動産の遺贈には登記と税務の正確な理解が不可欠

不動産の遺贈には、登記や税務など多くの手続きが伴います。以下の点を押さえておくことが重要です。

  • 登記をしないと正式な所有者とならない
  • 相続税だけでなく、登録免許税にも注意
  • 相続人以外の受遺者は、税負担が重くなる可能性あり
  • 専門家に依頼すれば、登記・税務をスムーズに処理可能

江東区や那覇市では、不動産の価格も高額になりやすいため、遺贈に関する登記や税務対策は特に重要です。遺言書作成の段階で専門家と相談し、登記・相続税・受遺者の意向などを総合的に設計することで、将来のトラブルを防止することができます。

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