
建設業許可の5要件のひとつに、経営業務管理責任者の設置という項目があります。この要件を満たすためには、申請者が一定の「経営経験」を持っていることを、公的に証明できる書類を提出する必要があります。
その中でも、特に重視されるのが「法人登記記録(登記事項証明書/履歴事項全部証明書)」です。本記事では、建設業許可申請における経営業務管理責任者の「経営経験」を証明するために、登記記録をどのように確認し、収集・提出すればよいかを、東京都江東区および沖縄県那覇市の皆様向けに詳しくご紹介します。
1.経営業務管理責任者とは?
まず基本の確認です。経営業務管理責任者とは、「建設業を営む法人または個人において、一定期間、経営業務に従事した経験がある人」です。
令和2年10月の改正建設業法により、要件が緩和され、「法人の役員」または「個人事業主」等として 通算5年以上の経営経験 があれば、基本的に該当するようになりました(※ただし、補完要件が必要な場合もあります)。
この「経営経験」を証明するための基本資料が、法人の登記事項証明書です。
2.登記事項証明書とは?必要な種類と取得方法
(1)「履歴事項全部証明書」が必要
登記簿にはいくつかの種類がありますが、建設業許可の申請で使用するのは、以下のものです。
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
この証明書には、設立時から現在に至るまでのすべての役員(取締役・代表取締役等)の就任日、退任日、変更履歴などが記載されています。
これによって、申請者が「いつからいつまで役員を務めたか」が明確に証明できます。
(2)取得方法
次のいずれかの方法で取得できます。
- 法務局の窓口
→ 印鑑と身分証明書を持参すれば、当日発行可能。 - 登記情報提供サービス(オンライン)
→ 登記情報を画面上で確認できるが、申請書類としては紙の証明書(原本)が必要なため、確認用途に限る。 - 法務局のオンライン申請(登記・供託オンライン申請システム)
→ 電子証明書が必要。行政書士や司法書士に依頼することも可能。 - 法務局が発行する「登記簿謄本請求書」による郵送取得
→ 必要な法人の名称と本店所在地を正確に記入。
3.どこを見ればいい?登記簿の確認ポイント
履歴事項全部証明書を入手したら、以下のポイントを確認してください。
(1)会社名と本店所在地
まずは、対象法人の正式名称および本店所在地が正確かどうかを確認しましょう。これが一致しないと、他の会社の登記簿と誤解される恐れがあります。
(2)「役員に関する事項」の欄
ここが最重要です。申請者本人が以下のように記載されているか確認します。
- 氏名
- 役職名(例:取締役、代表取締役、業務執行社員など)
- 就任日
- 退任日(現在も在任中であれば、退任日は記載なし)
例:
取締役 山田太郎 平成30年4月1日 就任
(退任記載なし → 現在も役員)
この情報をもとに、役員歴(=経営経験)が何年あるかをカウントします。
4.退任済みの会社や解散済みの法人の記録を確認したい場合
過去の法人での役員歴を証明する場合、以下のようなケースが想定されます。
(1)退任済みの法人
→ 現在も法人が存続している場合、法務局で登記簿を取得すれば「退任日」まで含めて記載されているため問題ありません。
(2)法人が既に解散・清算結了している場合
→ 閉鎖登記簿(閉鎖事項証明書)の請求が必要です。
これは、「既に閉鎖された登記記録」を取り寄せるもので、法務局窓口で「閉鎖事項全部証明書がほしい」と伝えることで取得可能です。
5.登記簿で証明できない場合の補完資料とは?
稀に、法人登記簿で証明できないケースがあります。例えば、
- 役員に就任していたが、登記されていなかった(小規模法人で登記未了)
- 個人事業主としての経営経験である(登記簿自体が存在しない)
このような場合、次のような補足資料で経営実態を証明します。
● 個人事業主の場合
- 開業届控(税務署受付印付き)
- 確定申告書の控(青色申告決算書を含む)
- 取引先との請求書、契約書
- 経営者名義の工事写真や広告チラシ
● 法人役員として未登記の場合
- 株主総会議事録や取締役会議事録
- 請求書や工事契約書に本人名が記載されているもの
- 雇用保険や健康保険などの加入記録
※このような補足資料の組み合わせは「補完制度(経営補佐経験)」として取り扱われる可能性もあるため、個別に行政庁へ相談して下さい。
6.東京都・沖縄県における実務上の注意点
東京都江東区の事業者様向け
- 東京都はオンライン事前確認制度を導入しているため、申請前に「経営経験の証明書類」について相談することができます。
- 原本還付の際は、登記簿に加えて写し+原本を持参し、窓口で確認を受けましょう。
沖縄県那覇市の事業者様向け
- 沖縄県建設業課では、事前相談が必須となる場合もあります。
- 登記簿の取得は那覇地方法務局または名護・宮古・石垣支局など、所在地に応じた出張所で取得可能です。
7.まとめ 登記簿確認は「最初の一歩」だが、慎重に
建設業許可申請において、経営業務管理責任者の「経営経験」を証明する際は、登記事項証明書の確認が第一歩です。これを軽視すると、申請が却下されるリスクや、再提出で大幅に時間がかかるリスクがあります。
特に東京都や沖縄県では、申請の混雑状況により、補正対応まで数週間かかることも珍しくありません。だからこそ、申請前に登記記録の内容をしっかり確認しておくことが、最短での許可取得につながります。