建設業許可の「類型」とは?江東区・那覇市の事業者様へ向けた丁寧な解説

建設業を営むにあたり、一定の規模や内容の工事を請け負うには「建設業許可」を取得する必要があります。その際、申請者である事業者の営業実態や工事の発注・請負形態に応じて、取得すべき「許可の類型」が異なります。

この記事では、建設業許可における「許可の類型」について、東京都江東区および沖縄県那覇市で事業を行う方に向けて、わかりやすく・丁寧にご説明いたします。


目次

1.許可の類型とは?

建設業許可には大きく分けて2つの区分が存在します。

  1. 国土交通大臣許可と都道府県知事許可
  2. 特定建設業と一般建設業

この2つの組み合わせにより、最終的には以下の4類型に分かれます。

  • 大臣許可 × 特定建設業
  • 大臣許可 × 一般建設業
  • 知事許可 × 特定建設業
  • 知事許可 × 一般建設業

それでは、それぞれの区分について詳しく見ていきましょう。


2.大臣許可と知事許可の違い

判断基準は「営業所の所在地」

まずは、「大臣許可」と「知事許可」についてです。この区分は、会社がどこに「営業所」を構えているかによって決まります。

  • 大臣許可:2つ以上の都道府県に営業所がある場合
  • 知事許可:1つの都道府県内にのみ営業所がある場合

例えば、東京都江東区に本店があり、沖縄県那覇市にも支店を構えている場合、これは2都道府県に営業所があると見なされるため、「大臣許可」が必要になります。

逆に、東京都内にしか営業所がない場合(例:江東区のみ)、または沖縄県内だけで事業をしている場合(例:那覇市のみ)であれば、「知事許可」で足ります。

ここでいう「営業所」とは?

「営業所」とは、単なる事務スペースではありません。次のような実質的な建設業務を常時行っている拠点を指します。

  • 工事の見積り
  • 入札手続き
  • 請負契約の締結
  • 工事の施工管理 など

つまり、倉庫、資材置き場、現場事務所、一時的な連絡所などは「営業所」には該当しません。また、建設業と関係のない業務(例:飲食、物販など)を行っているだけの店舗も営業所とは認められません。

この点は意外と見落としがちです。たとえば、那覇市に「建設業とは関係ない」支店があっても、それだけでは大臣許可は不要です。あくまで建設業務を常時行っている営業所が複数都道府県にある場合に限って、大臣許可が必要になります。


3.特定建設業と一般建設業の違い

次に、「特定建設業」と「一般建設業」の区分です。

判断基準は「下請への発注金額」

この区分は、元請として工事を受注したときに、どの程度の金額で下請業者に再発注するかによって判断されます。

  • 特定建設業:1件の工事において、下請への発注金額が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上)
  • 一般建設業:上記未満、またはそもそも下請に発注しない場合

よくある勘違い:自社が元請でない場合

ここで重要なのは、「自社が元請業者であること」が前提条件であるという点です。

たとえば、ある建設会社が他社から受注して1億円の工事を下請けで行う場合、その会社がさらに下請業者に作業の一部を発注しても、それは「特定建設業」に該当しません。

なぜなら、その会社は「元請」ではなく、「一次下請」だからです。

つまり、「特定建設業」が必要になるのは、元請業者として契約を締結し、その工事を大きな金額で下請けに発注する場合だけです。

自社で施工する場合は「一般建設業」

仮に、自社ですべての工事を施工し、下請業者に一切発注しない場合は、発注金額は「0円」です。このようなケースでは、当然「一般建設業」として扱われます。


4.4つの類型に整理

これまでの説明をまとめると、建設業許可は以下の4つのパターンに分類されます。

類型許可の種類特徴
a大臣許可 × 特定建設業複数都道府県に営業所があり、かつ下請発注が一定金額以上
b大臣許可 × 一般建設業複数都道府県に営業所があるが、下請発注が少ないまたはない
c知事許可 × 特定建設業一都道府県内に営業所があり、下請発注が一定金額以上
d知事許可 × 一般建設業一都道府県内に営業所があり、下請発注が少ないまたはない

5.知っておきたい重要な制限

建設業許可には、以下のようなルールもあります。

  • 同一の業種について、一般と特定を同時に取得することはできません
  • 同一の事業者が、一部の業種を「大臣許可」、他の業種を「知事許可」とすることもできません。

たとえば、建築一式工事は「特定建設業」で許可を取り、内装仕上工事は「一般建設業」で許可を取るという形は認められません。また、建築工事は東京都で、内装工事は沖縄県で、というような形で「大臣許可」と「知事許可」を使い分けることも不可です。


6.江東区・那覇市の事業者が気をつけるべき点

東京都江東区と沖縄県那覇市は、どちらも都市開発や観光関連のインフラ整備が盛んで、建設業の需要が高い地域です。両エリアでの事業展開を検討している場合、複数都道府県にまたがる営業所の設置となるため、原則として「大臣許可」が必要になります。

また、公共工事や大規模民間工事を元請として請け負い、かつ下請業者に発注する金額が高額になる場合は、「特定建設業」の取得も視野に入れる必要があります。


まとめ 自社に合った許可を選ぶことが最初の一歩

建設業許可の取得は、事業の安定的な運営や信用力の確保に欠かせません。しかし、その出発点である「許可の類型」を誤ると、思わぬトラブルや再申請の手間が発生する可能性があります。

ぜひ、自社の現状――営業所の所在、工事の受注形態、下請発注の金額など――を見直し、適切な類型を判断することが重要です。

江東区、那覇市の事業者様で、建設業許可についてお悩みの方は、まずは一度、制度の基本をしっかり押さえたうえで、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

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