会計ソフトと建設業許可申請、一般会計と建設業会計の違いに注意!

建設業許可を申請するにあたり、避けて通れないのが「財務諸表」の提出です。最近では弥生会計やfreee、マネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを活用して記帳している事業者様も多く、日常の経理処理には非常に便利なツールとして広く利用されています。

しかし、建設業許可の申請で求められる「財務諸表」は、通常の「会計ソフトから出力される決算書」とは異なり、建設業会計の考え方に基づいて再構成しなければならない点が多々あります。本記事では、一般会計と建設業会計の違いや、会計ソフトから出力した財務諸表を建設業許可用に変換する実務上のポイントを詳しく解説します。

目次

1. 会計ソフトで作成される財務諸表の特徴

まずは、弥生会計やfreeeなど一般的な会計ソフトで出力される財務諸表の前提を確認しておきましょう。

これらのソフトでは、以下のような書類が主に出力されます。

  • 貸借対照表(B/S)
  • 損益計算書(P/L)
  • 販売費および一般管理費内訳書
  • 勘定科目内訳明細書 など

これらは税務申告(法人税や所得税)のために作成されるものであり、「一般会計」と呼ばれる会計基準に準拠しています。一方、建設業許可申請では、これとは別に「建設業会計」の考え方に基づいた財務諸表が求められます。

2. 建設業会計の特徴と、一般会計との違い

建設業には、製造業や卸売業など他業種とは異なる特殊な事情があります。

  • 1つの工事に時間がかかる(数ヶ月〜数年)
  • 請負契約に基づく売上の認識タイミングが異なる
  • 完成前でも支出が発生する

こうした特徴に対応するため、建設業会計では「工事契約会計」の原則が用いられます。

主な違いは次のとおりです。

会計項目一般会計建設業会計(許可申請)
売上の認識工事完成時(完成基準)または進行基準完成基準を前提(中小業者)
売掛金「売掛金」で処理される建設工事の場合は「完成工事未収入金」へ修正
買掛金「買掛金」で処理される建設工事に関するものは「工事未払金」へ修正
在庫「商品」「製品」など「未成工事支出金」などに置き換え

このように、同じ金額でも使われる勘定科目が異なるため、会計ソフトから出力したままの財務諸表では許可申請に適合しない場合があります。

3. 建設業許可申請に必要な財務諸表の種類

建設業許可申請(新規・更新・決算変更届など)において求められる財務諸表は、以下のとおりです。

貸借対照表

企業の資産、負債、純資産の状況を表す書類です。工事に関する未収入金や未払金を適切に分類・記載する必要があります。

損益計算書

売上(完成工事高)や売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益等を記載する書類です。一般会計上の「売上高」ではなく、「完成工事高」に読み替える必要があります。

完成工事原価報告書

工事の原価を費目別(労務費、材料費、外注費など)に集計した書類です。一般会計には存在しない独自の様式です。

4. 会計ソフトから建設業会計へ変換する実務ポイント

(1)勘定科目の読み替え

次のような修正が基本になります。

  • 売掛金 → 完成工事未収入金
  • 買掛金 → 工事未払金
  • 前払費用 → 未成工事支出金(工事に関するもの)
  • 売上高 → 完成工事高
  • 仕掛品 → 未成工事支出金

会計ソフト上の元帳や試算表を確認し、どの取引が工事に関するものかを識別する必要があります。

(2)内訳書・補足資料の作成

一般会計では省略されがちな内訳(例えば借入金の相手先、工事外収益など)も、建設業会計では詳細な記載が必要です。特に次のような書類が重要になります。

  • 借入金の明細(長短別、金融機関名など)
  • 未成工事支出金の内訳
  • 完成工事原価の明細

(3)科目の統一単位に注意

建設業許可用の様式は、「千円単位」(一部は百万円単位)で記入することになっており、ソフトから出力した財務諸表をそのまま使用する場合は単位換算が必要です。

5. よくある間違いとその対処法

(1)一般会計と建設業会計の混在

弥生会計やfreeeでは、「売掛金」「買掛金」が基本科目であるため、そのまま出力すると建設業の許可様式にそぐわない内容になってしまいます。必ず「建設業仕様」に転記し直すことが必要です。

(2)「未成工事支出金」の過小記載

工事の進行中にかかった費用(労務費、材料費、外注費等)は「未成工事支出金」として資産計上されるべきですが、これを損金計上してしまうと「赤字決算」となり、許可要件を満たさない可能性があります。

(3)完成工事高と売上高の不一致

売上高と完成工事高は必ずしも一致しません。工事以外の収益(例えば不動産収入)がある場合、それらを明確に区別する必要があります。

6. 専門家のサポートを受けた方が良い場面

建設業会計は、独特の用語・会計処理・様式があり、通常の税務会計とは大きく異なります。以下のような場合は、行政書士や建設業専門の税理士と連携することが非常に有効です。

  • 経審も見据えた会計処理が必要な場合
  • 決算内容が複雑で、内訳の整理が難しい場合
  • 赤字決算の回避を図る必要がある場合

7. 東京都江東区・沖縄県那覇市での実務的アドバイス

東京都江東区・沖縄県那覇市の事業者様にとって、会計ソフトと建設業許可の両立は悩ましいポイントです。とくにfreeeやマネーフォワードはクラウド型で汎用的な設計になっているため、建設業特有の勘定科目に弱い傾向があります。

そのため、会計ソフトは日々の記帳管理用と割り切り、建設業許可の財務諸表は別途エクセルなどで手作業で再構成する方が現実的なケースも少なくありません。

まとめ

建設業許可の申請で提出する財務諸表は、単に会計ソフトで出力した決算書を添付すればよい、というものではありません。建設業会計の考え方に基づいて科目の読み替えや内訳の整理を行う必要があります。

日常的に使用している会計ソフトは、建設業会計には最適化されていない場合が多いため、提出前に専門家のチェックを受けることで、申請書の精度を高めることができます。

東京都江東区・沖縄県那覇市で建設業を営んでおり、会計ソフトの活用方法に不安がある場合は、ぜひ地域に精通した専門家に相談してみてください。

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