
相続相談の中で特に多いのが、「相続財産が自宅不動産しかない」というケースです。被相続人(亡くなった方)がご高齢の親世代の場合、預貯金よりも自宅不動産の方が財産価値としては大きく、その他の財産がほとんど無いというケースが珍しくありません。
この状況は、江東区や那覇市でも非常に多く見られ、特に地域ごとの住宅事情も絡むため、どのように分けるかで相続人間の意見が割れやすいポイントでもあります。本記事では、相続財産が自宅不動産しかない場合の分け方について、その法的ポイント、具体的な方法、相続人間の調整の注意点を詳しく解説します。
1 自宅不動産だけの場合に起きやすい問題
相続財産が不動産だけというケースには、次のような問題が起こりやすくなります。
- 不動産は物理的に分けることができない
- 価値が大きいため、相続人の取り分に不公平感が生まれやすい
- 現金がないため、代償金(他の相続人へ支払う現金)の準備が難しい
- 不動産を売却するのか、誰かが住み続けるのかで意見が対立しやすい
- 遺産分割がまとまらないと相続登記ができず、相続が長期化する
特に江東区や那覇市では、相続する自宅が親世代の持ち家として地域に根付いているケースが多く、「住み続けたい相続人」と「平等に分けるため売却したい相続人」との意見の対立が起きやすい点に注意が必要です。
2 自宅不動産しかない場合の分け方は大きく三つに分かれる
自宅不動産しかない場合の代表的な分け方は、次の三つです。
- 不動産を相続人の一人が取得し、他の相続人へ代償金を支払う
- 不動産を売却して現金を分ける
- 相続人全員で共有名義にする
それぞれメリットとデメリットがあるため、相続人の意向や経済状況、将来の管理負担を踏まえて決める必要があります。
3 一人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を払う方法
これは最も多い分け方です。
不動産に住み続けたい相続人がいる場合や、その相続人が生活の基盤として自宅を維持する必要がある場合に選ばれます。
しかし、代償金を支払うには大きな金額が必要となるため、現金を持っていない相続人は金融機関から借り入れる場合もあります。
代償分割のポイントは次の通りです。
- 評価額は固定資産税評価額や不動産会社の査定など複数から検討する
- 代償金の金額や支払い時期を遺産分割協議書で明確に記載する
- 分割払いとする場合は、トラブル防止のため支払い方法を細かく決める
- 不動産取得者は相続税の負担にも備える必要がある
江東区のように不動産価値が高い地域では、代償金が非常に高額になり、借入れを利用するケースが多く見られます。
一方、那覇市の場合、固定資産評価額と市場価格の差が大きい物件もあるため、正確な評価が重要になります。
4 自宅を売却して現金で分ける方法
相続人全員が公平に分けることを重視する場合、自宅を売却して現金に換える「換価分割」が有効です。
この方法のメリットは明確です。
- 公平に分けられる
- 代償金の問題が発生しない
- 管理負担がなくなる
しかしデメリットもあります。
- 相続人が愛着のある実家を手放すことになる
- 売却のための準備に時間がかかる
- 売却後の税金の問題が発生する可能性がある
江東区の場合、マンションも戸建も市場価格が高いため、売却によって十分な現金を得られるケースが多い一方、売却までに時間がかかることもあります。
那覇市では、立地によっては売却しやすい場合もあれば、買い手が付きにくい物件もあるため、不動産会社との事前相談が不可欠です。
5 共有名義にする方法
相続人全員で共有名義にするという方法もあります。しかしこの方法は、相続手続としてはもっとも簡単である反面、将来の管理や売却の際に大きな負担となることが多く注意が必要です。
共有名義の主な問題点は次のとおりです。
- 不動産の売却には全員の同意が必要
- 管理費や固定資産税を誰が負担するかで揉めやすい
- 将来、共有者の一人が亡くなると共有関係がさらに複雑化する
- 賃貸にする場合でも全員の同意が必要
江東区や那覇市では、兄弟姉妹が広く散らばって生活していることも多く、共有名義のまま放置すると管理が困難になりがちです。
あくまで短期間のつなぎの方法として利用し、将来的に売却や代償分割を検討するケースが多くなります。
6 公平な分け方を考えるうえでの評価方法のポイント
自宅不動産しかない場合、評価額をどのように決めるかが相続人間の合意形成に直結します。
一般的な評価方法は次の三つです。
- 固定資産税評価額
- 路線価による評価
- 不動産会社の売却査定
どの評価額に基づくかは相続人間で決めることが原則ですが、実務上は複数の指標を併用して平均的な価格を採用することが多いです。
特に江東区ではマンション需要が高く、市場価格が固定資産評価額の数倍になるケースもあります。
一方、那覇市では近年地価が上昇傾向にあるとはいえ、地域差が大きいため、複数の査定を取ることが公平性を確保する上で重要です。
7 相続人間の意見が合わない場合の対応
自宅不動産しかないケースでは、相続人間の意見が割れることがよくあります。主な対立パターンは次のとおりです。
- 一人は住み続けたいが、他の相続人は売却したい
- 代償金額について考え方が合わない
- 誰が管理費や固定資産税を負担するかで揉める
- 感情的な対立により建設的な話し合いができない
これらは、第三者である専門家が入ることで円滑に進むことが非常に多いです。特に江東区や那覇市の家庭裁判所では、調停での解決も日常的に行われていますが、調停になる前に専門家の関与で合意が成立するケースも多くあります。
8 遺産分割協議書に盛り込むべきポイント
最終的に合意した内容は、遺産分割協議書として書面に残す必要があります。
特に自宅不動産しかない場合には、次の点を明確にしておくことが重要です。
- 誰が不動産を取得するのか
- 売却するのか、住み続けるのか
- 代償金の有無・金額・支払い方法
- 固定資産税の負担を誰が負うのか
- 将来の売却方針(共有名義の場合)
- 引渡し時期、持ち分割合
これらを明記しておくことで、後からトラブルになるリスクを大幅に減らすことができます。
9 まとめ
相続財産が自宅不動産しかないというケースは、相続手続の中でも非常に相談が多く、慎重な検討が必要です。
特に次の点が重要です。
- 自宅しかない場合、主な選択肢は三つである
不動産一人取得と代償分割、売却して現金分割、共有名義 - それぞれのメリット・デメリットを理解した上で判断する
- 評価額の決定が公平性の鍵になる
- 相続人間の意見調整が難しい場合は専門家の関与が有効
- 合意内容は遺産分割協議書で明確に記載する必要がある
江東区や那覇市の地域性も踏まえながら、家族関係を損なわず、円満に相続を完了させるためには、早めの準備と正確な情報が不可欠です。
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