入札参加資格審査申請(指名願い)とは〜公共工事に参加するための第一歩〜

目次

1.入札参加資格審査申請とは

建設業許可を取得したからといって、すぐに公共工事を受注できるわけではありません。
公共工事は、国・都道府県・市町村などの「発注機関」が行う工事であり、その多くは入札によって業者を選定します。
しかし、この入札に参加できるのは「入札参加資格」を持つ事業者だけです。

この「入札参加資格」を得るために行うのが、入札参加資格審査申請(指名願い)です。
簡単に言えば、「自社はこの発注機関の工事を受注する能力があります」ということを審査してもらい、登録を受けるための手続きです。

2.公共工事の流れと入札資格の位置づけ

公共工事は、次のような流れで進みます。

  1. 発注機関が工事の概要を公示(予定価格・工期・場所など)
  2. 登録済みの業者が入札に参加
  3. 落札者の決定
  4. 契約締結・工事着手

このうち、「② 登録済みの業者」が入札できるのは、前もって「入札参加資格審査申請」を行い、
その発注機関の登録名簿に登載されている場合だけです。

つまり、入札参加資格審査は「公共工事の出発点」といえます。
この申請を行わなければ、入札に参加することはできません。

3.発注機関ごとに申請が必要

入札参加資格は、発注機関ごとに独立した制度です。
したがって、東京都江東区の入札参加資格を持っていても、東京都庁が発注する工事や国の機関(たとえば国土交通省関東地方整備局)が発注する工事に自動的に参加できるわけではありません。

同様に、沖縄県那覇市の入札参加資格を取得していても、沖縄県庁発注の工事や内閣府沖縄総合事務局の工事には参加できません。

つまり、自社がどの範囲の公共工事に関わりたいかによって、申請先が変わります。
たとえば次のように分かれます。

  • 市町村が発注する工事 → 市町村ごとの入札参加資格が必要
  • 都道府県が発注する工事 → 都道府県の入札参加資格が必要
  • 国の機関が発注する工事 → それぞれの省庁や地方整備局などの資格が必要

例を挙げると、江東区内の区立小学校改修工事は江東区が発注しますが、
同じ区内の都道沿い歩道工事は東京都の発注です。
また、那覇市にある自衛隊施設の外構工事は防衛省の所管になります。

このように、「工事の場所」ではなく「発注者」が誰かによって、申請先が異なります。

4.入札参加資格の審査内容

入札参加資格審査では、発注機関がその事業者の経営状況・技術力・信用性を総合的に評価します。
審査の観点はおおむね次の通りです。

(1) 経営事項審査(経審)の結果

建設業者が公共工事に参加する際の基礎資料となるのが「経営事項審査(経審)」です。
経審とは、国土交通大臣または都道府県知事が実施する評価制度で、
経営状況(Y点)、技術力(Z点)、社会性(W点)などを数値化して評価します。

多くの発注機関では、この経審の点数をもとに格付け(ランク付け)を行い、
工事規模や内容に応じて参加可能な工事の範囲を決めています。
したがって、経審を受けていない業者は、そもそも入札参加資格審査の対象外になることが一般的です。

(2) 経営状況・財務体質

直近の決算内容や自己資本比率、負債の状況、黒字経営かどうかといった要素も重視されます。
財務的に健全でない企業は、途中で工事が頓挫するリスクがあるため、登録されにくい傾向があります。

(3) 技術職員・施工実績

専任技術者や現場代理人となる社員の資格・経験年数、過去の施工実績も評価対象です。
特に特定建設業者の場合、大規模工事の実績があると高く評価されます。

(4) 法令遵守・社会的信用

建設業法・労働法令・税法などに違反がないか、暴力団排除条例への遵守誓約書なども求められます。
公共工事は社会的信頼が前提であるため、法令違反や不正経理があると登録は認められません。

5.申請の時期と有効期間

多くの発注機関では、入札参加資格審査申請を定期的に(通常2年または3年ごと)受け付けています。
これを「定期申請」と呼び、通常は年度初めに受付が行われます。

ただし、年度途中で新たに建設業許可を取得した場合や、事業形態が変わった場合には「随時申請」が可能なこともあります。
申請時期や受付期間は発注機関ごとに異なるため、江東区や那覇市のように複数の発注機関が存在する地域では、
各自治体のホームページや公告を確認しておくことが重要です。

東京都江東区の場合

江東区では、建設工事や委託業務などの入札参加資格を区が独自に定めています。
申請受付は原則2年に1度で、申請書は「江東区契約課」へ提出します。
経審結果通知書、決算書、誓約書などを提出し、区内業者・区外業者で取り扱いが異なる点にも注意が必要です。

沖縄県那覇市の場合

那覇市でも同様に、建設工事と測量・コンサル業務に関する入札参加資格審査を実施しています。
申請窓口は「那覇市契約課」、受付は2年ごとです。
また、那覇市だけでなく「沖縄県」「沖縄総合事務局(国)」「防衛省沖縄防衛局」など、
複数の発注機関が存在するため、希望する発注先ごとに申請を行う必要があります。

6.申請書類の一例

申請に必要な書類は発注機関によって異なりますが、主なものは次の通りです。

  • 建設業許可証明書の写し
  • 経営事項審査結果通知書
  • 直近の決算書
  • 登記簿謄本
  • 納税証明書(法人税・消費税など)
  • 技術者資格証明書
  • 誓約書・暴力団排除に関する誓約書
  • 社会保険加入状況の証明

書類の形式や提出方法(紙提出か電子申請か)は発注機関により異なります。
近年は電子申請システムが導入されている自治体も増えており、
東京都では「電子調達システム」、沖縄県では「電子入札共同システム」を利用するケースが一般的です。

7.登録後の管理と注意点

入札参加資格は一度取得すれば終わりではなく、
登録後も定期的な更新・届出が必要です。

(1) 定期更新

有効期間満了前に再度審査申請を行い、資格を継続する必要があります。
更新を忘れると資格が失効し、入札に参加できなくなります。

(2) 変更届出

商号・所在地・代表者・役員・資本金などに変更が生じた場合は、
速やかに発注機関へ変更届を提出することが求められます。

(3) 経審の更新

経営事項審査の結果も有効期間が1年のため、毎年度の決算後に再審査を受け、最新の結果を登録機関へ提出します。

8.戦略的な入札資格の取得

建設業者にとって、入札参加資格の取得は「営業範囲の拡大」に直結します。
ただし、無計画に多数の発注機関へ申請するのは得策ではありません。

申請先を選ぶ際は、次の観点で検討しましょう。

  • 自社の施工エリアと人員配置で対応可能か
  • 発注機関の発注実績(工事内容・金額帯)
  • 経審点数による格付けで、どのランクの工事に参加できるか
  • 維持管理コスト(更新・書類作成負担)

江東区であれば、区内の小規模修繕や施設改修工事に強い企業が多く、地元密着型の受注が期待できます。
一方、那覇市や沖縄県内では、国や県が発注する港湾・道路・基地関連工事が多く、
県・国両方への資格申請を併用するケースが一般的です。

9.まとめ

入札参加資格審査申請(指名願い)は、公共工事に携わるための「入口」にあたる手続きです。
建設業許可を取得しても、この資格がなければ入札には参加できません。

  • 発注機関ごとに独立した資格制度であること
  • 経営事項審査や決算内容など、経営の健全性が審査されること
  • 定期的な更新と管理が必要であること

これらを理解し、どの機関の工事に参加したいのかを明確にしたうえで、
江東区や那覇市など地域の実情に合った戦略的な申請計画を立てることが、
建設業者としての安定的な発展につながります。

建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。

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