遺言書は、自分が亡くなった際、残された家族にどのように遺産を分けるかを伝える大切な手段です。しかし、民法で定められた方式に従わないと、遺言書は無効となり、家族間で争いが生じる可能性があります。本記事では、遺言書が無効になる事例とその対策について詳しく解説します。
遺言書が無効になるケース
遺言書にはいくつかの形式があり、一般的に使われるのは 自筆証書遺言 と 公正証書遺言 です。それぞれに無効になるリスクが異なります。
1. 自筆証書遺言が無効になるケース
自筆証書遺言は、自分で書いて作成する方法です。気軽に作成できる反面、形式の不備や保存方法の問題から無効になることが多い形式です。
主な無効事例
- 自筆で書かれていない場合
- 本文がパソコンで作成されたものや録音した音声は無効です。
- 署名のみ自筆であっても、本文が手書きでない場合は無効となります。
- 代筆されたものも認められません。
- 日付があいまいな場合
- 「○年○月吉日」など、特定できない表記は無効です。
- 明確な日付(例:2024年11月18日)を記載しましょう。
- 署名や押印がない場合
- 自筆証書遺言には、遺言者本人の署名と押印が必要です。
- 複数人が同じ遺言書を作成した場合
- 例えば夫婦が一緒に1通の遺言書を作成することは認められません。それぞれが別々に作成する必要があります。
- 遺言者に判断能力がない場合
- 遺言書作成時に認知症などで意思能力が不十分だと無効となります。この点は裁判で争われることが多いです。
自筆証書遺言の保管について
自筆証書遺言は紛失や改ざんのリスクもあります。これを防ぐため、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することをおすすめします。この制度を利用すれば、保管された遺言書は検認手続きが不要になります。
2. 公正証書遺言が無効になるケース
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成するため、形式的な無効になるリスクはほとんどありません。しかし、以下のような状況では無効となる場合があります。
主な無効事例
- 遺言者に判断能力がなかった場合
- 遺言者が軽度の認知症などであっても、公証人の質問に答えられれば作成可能です。しかし、後日、他の相続人が無効を主張する場合があります。
対策
判断能力が疑われる場合は、医師の診断書を取得しておくと有効性の証拠となります。
遺言書が無効と判断されるまでの流れ
遺言書が無効かどうかは、裁判所での判断を必要とする場合があります。
- 家庭裁判所で調停を申し立てる
- 調停で合意が得られない場合は次の段階へ進みます。
- 地方裁判所で遺言無効確認訴訟を起こす
- 訴訟では遺言書の有効性が具体的に審議されます。筆跡や判断能力の有無が争点となります。
- 証拠の準備
- 筆跡鑑定が必要な場合は遺言者が書いた過去の手紙などを用意します。
- 判断能力が争点の場合は、当時の診断書やカルテが重要な証拠となります。
無効リスクを防ぐためのポイント
遺言書が無効になることを防ぐためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
1. 自筆証書遺言を書く際の注意点
- 日付・署名・押印を正確に記載する。
- 形式や内容に不備がないよう、専門家の確認を受ける。
- 法務局の保管制度を活用する。
2. 公正証書遺言を選ぶ
- 公証人が作成するため、形式の不備を防げます。
- 証人が立ち会うため、遺言者の意思を証明しやすくなります。
3. 判断能力が十分なうちに作成する
- 遺言書は早めに作成しましょう。判断能力が低下するリスクを避けるためです。
- 診断書を取得することで、後日争いが起きた際の証拠になります。
遺言書の作成は専門家に相談を
遺言書は、残された家族が円満に相続できるようにするための重要な手段です。しかし、無効になってしまうと相続トラブルの原因になりかねません。
沖縄県那覇市や東京都江東区にお住まいの皆様、遺言書の作成に不安がある場合は、ぜひ専門家に相談してください。行政書士などの専門家は法律的に有効な遺言書作成をサポートし、相続全体のプランニングをお手伝いします。
家族の未来のために、正確で確実な遺言書を準備しましょう。