
建設業を営むには、一定の要件を満たして都道府県知事や国土交通大臣から「建設業許可」を受ける必要があります。
この許可を取得するための要件は多岐にわたりますが、近年特に重視されているのが健康保険や厚生年金、雇用保険などの社会保険・労働保険の加入状況です。
これは単に「形式的なチェック」ではなく、国土交通省と厚生労働省が連携し、業界全体の健全化と労働者保護を目的として強化されている分野です。
沖縄県那覇市でも東京都江東区でも、社会保険未加入のまま営業を続けると、公共工事の入札から排除されたり、許可更新時に指導を受ける事例が増えています。
1. なぜ社会保険等の加入が重視されるのか
1-1. 労働者の生活と安全の確保
建設業は事故やケガのリスクが高い業種です。労災保険や健康保険が未加入であれば、事故発生時に労働者やその家族が大きな経済的負担を負うことになります。
1-2. 公平な競争環境の確保
社会保険未加入事業者は保険料負担がない分、見積もり単価を下げられるため、加入事業者との間で不公平が生じます。
国や自治体はこれを是正するため、許可申請や更新の場で加入状況を厳しく確認しています。
1-3. 国交省・厚労省の連携強化
平成24年以降、国土交通省と厚生労働省は共同で「社会保険未加入対策」を推進。許可申請書類にも、健康保険・厚生年金・雇用保険の加入状況を必ず記載させる仕組みになりました。
2. 建設業許可申請時の加入状況確認
許可申請書では、以下の項目を正確に記載する必要があります。
これは新規取得だけでなく、更新や業種追加の際にも求められます。
2-1. 営業所の名称
様式第二号(1)に記載されている営業所名称を正確に転記します。
支店や出張所がある場合も、それぞれの正式名称を記載します。
2-2. 従業員数
営業所ごとの従業員数を記入します。役員等はカッコ書きで人数を示し、たとえば「10(役員2)」のように明示します。
2-3. 保険加入の状況
加入状況は数字で区分します。
- 加入している場合 → 「1」
- 未加入の場合 → 「2」
- 適用除外の場合 → 「3」
適用除外とは、例えば法人役員1人だけの会社で雇用保険が適用されない場合などが該当します。
2-4. 事業所整理番号等
各保険ごとに以下の番号を記載します。
- 健康保険・厚生年金 → 事業所整理番号
- 雇用保険 → 事業所番号
これらの番号は保険証や適用通知書に記載されています。
3. 未加入の場合の対応
許可申請の段階で加入義務があるのに未加入であれば、申請は受理されても審査の過程で「是正指導」が入ります。
是正とは、加入手続きを速やかに行い、加入証明書を提出することを意味します。
3-1. 是正指導の流れ
- 未加入状態が判明
- 行政から改善の指示
- 社会保険事務所やハローワークで加入手続き
- 証明書類を提出
3-2. 加入義務の判断基準
- 健康保険・厚生年金 → 法人は全員加入、個人事業主は従業員5人以上で加入義務
- 雇用保険 → 労働者を1人でも雇用すれば加入義務
- 労災保険 → 労働者を1人でも雇用すれば加入義務
4. 地域ごとの留意点
4-1. 沖縄県那覇市の場合
沖縄は建設業の中小零細企業比率が高く、家族経営や短期雇用が多いため、社会保険未加入のまま長年経営してきた事業者も少なくありません。
しかし、公共工事への参入や元請けとの取引継続には加入が必須になりつつあり、那覇市内の業者でも急速に加入が進んでいます。
4-2. 東京都江東区の場合
江東区は首都圏の大規模工事案件が多く、下請けでも社会保険未加入では契約できないケースが一般的です。
区内の元請け企業は、下請けの保険加入状況を事前確認する体制を整えており、加入証明の提出を求めるのが常態化しています。
5. 許可申請書作成の実務ポイント
- 保険証や通知書で事業所番号を正確に確認
- 営業所ごとの従業員数を役員・一般で分けて記載
- 適用除外の場合はその理由を補足資料で添付
- 未加入の場合は申請前に加入手続きを完了させる
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 個人事業で従業員が4人の場合、健康保険・厚生年金は必要ですか?
→ 義務はありませんが、任意加入も可能です。雇用保険と労災保険は必要です。
Q2. 社会保険料の負担が重くて加入できない場合は?
→ 許可取得や公共工事受注を目指すなら、加入は避けられません。負担軽減制度や助成金活用を検討すべきです。
Q3. 番号を忘れた場合は?
→ 所轄の年金事務所やハローワークで照会可能です。
7. まとめ
建設業許可申請における健康保険・社会保険等の加入状況は、単なる形式ではなく、業界の信頼性や取引先との関係に直結する重要な項目です。
沖縄県那覇市でも東京都江東区でも、加入義務があるのに未加入という状態はもはや許されず、許可取得・更新、さらに事業の存続にも影響します。
今後許可を取得・維持して安定した経営を続けるためには、早めに加入状況を整え、正確な情報を申請書に記載することが欠かせません。