
目次
はじめに
高齢化が進む中、「財産の管理」と「将来の介護・生活サポート」をどう備えるかは、多くのご家庭にとって避けて通れない課題です。
特に、家族信託と後見制度はどちらも有効な制度ですが、目的やカバー範囲が異なるため、両方を組み合わせるケースも増えています。
しかし、「両方使ったらコストはどのくらいかかるのか?」という疑問は、多くの方が持つポイントです。今回は、沖縄県那覇市や東京都江東区で実務にあたる行政書士として、複合利用時のコストシミュレーションを具体的にご紹介します。
1. 家族信託と後見制度の役割の違い
家族信託
- 主に財産管理や資産承継設計を目的とする。
- 委託者(財産の持ち主)が元気なうちに契約を結び、受託者に財産管理を任せる。
- 不動産の売却・賃貸、金融資産の運用、二次相続以降の承継指定など柔軟に対応可能。
- 身上監護(介護契約や医療判断)はできない。
後見制度
- 判断能力が低下した後に、家庭裁判所が選任した後見人が財産管理や身上監護を行う。
- 成年後見は裁判所監督下での厳格な管理が特徴。
- 不動産売却には裁判所の許可が必要、投資や相続税対策は制限される。
- 任意後見の場合は、元気なうちに契約内容を決められる。
組み合わせの意義
→ 家族信託で「資産運用・承継設計」を行い、後見制度で「介護や生活の意思決定」を担保する。
2. コストの種類と発生タイミング
両制度を使う場合、費用は大きく以下に分類されます。
家族信託の主な費用
- 信託契約書作成費用(専門家報酬)
- 行政書士・司法書士報酬:30万~80万円(内容や資産規模による)
- 公証役場の手数料
- 公正証書化の場合:約5万~10万円
- 登記費用(不動産がある場合)
- 登録免許税:固定資産評価額の0.4%
- 司法書士報酬:5万~10万円
- 信託監督人・受益者代理人の報酬(必要に応じて)
- 年間5万~20万円程度
後見制度の主な費用
- 申立て費用
- 印紙代:800円
- 郵便切手代:3,000~5,000円
- 鑑定費用(必要な場合):5万~10万円
- 後見人報酬
- 法定後見人:月2万~6万円(年24万~72万円)
- 任意後見人:契約による(通常月2万~5万円)
3. 複合利用のコストシミュレーション
事例設定
- 委託者:那覇市在住の80歳女性
- 財産:自宅不動産(評価額2,500万円)、預金2,000万円
- 受託者:長男(東京・江東区在住)
- 信託内容:不動産の管理・売却、預金の管理運用、二次相続まで承継指定
- 後見:生活支援・介護契約・医療同意のため任意後見契約を併用
初期費用(契約時)
項目 | 金額(目安) |
信託契約書作成(専門家報酬) | 50万円 |
公証役場手数料 | 7万円 |
信託登記費用(登録免許税+司法書士) | 20万円 |
任意後見契約書作成(公正証書) | 7万円 |
合計 | 84万円 |
年間費用(運用時)
項目 | 金額(目安) |
信託監督人報酬(設置した場合) | 10万円 |
任意後見人報酬 | 36万円(3万円×12か月) |
合計 | 46万円/年 |
5年間利用した場合の総額試算
- 初期費用:84万円
- 年間費用(46万円×5年):230万円
- 総額:約314万円
4. コストを抑える工夫
- 信託契約の内容を精査
不動産だけ信託するなど対象を絞れば登記費用が下がります。 - 信託監督人は本当に必要か検討
家族間で監督可能なら設置しない選択も。 - 任意後見人の報酬設定を工夫
家族を任意後見人にすれば報酬は不要(ただし信頼性確保が必要)。 - 公証役場との事前打ち合わせ
手数料を抑える契約構成を相談。
5. 那覇市・江東区での実務ポイント
- 那覇市では地縁が強く、親族間で受託者・後見人を担うケースが多いですが、信託監督人を専門職にすることで安心感が高まります。
- 江東区は地価が高く、不動産評価額が大きいため登録免許税が高額になる傾向があります。信託対象を一部に絞る設計が有効です。
- 両地域とも、公証役場や家庭裁判所の手続き待ち時間に違いがあり、開始までのスケジュール管理が重要です。
まとめ
- 家族信託と後見制度の併用は、財産管理と生活支援の両立が可能ですが、コストは単独利用より高くなります。
- 初期費用だけでなく、年間の運用コストを把握しておくことが必須です。
- 専門家と相談しながら設計すれば、無駄を省きつつ必要な機能を確保できます。
このテーマは、実際の資産額・家族構成・希望する管理内容によって数字が大きく変動します。那覇市や江東区での具体的なコスト試算は、地域事情を熟知した専門家に依頼すると安心です。