
遺言書があっても、実際にその内容を実現するには「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」の存在が欠かせません。
遺言執行者は、亡くなった方(被相続人)の最終意思を実現するために、遺言に記された内容を法律的・実務的に遂行する役割を担う人物です。
しかし、すべての遺言において遺言執行者が指定されているわけではありません。
特に、自筆証書遺言などでは遺言執行者の指定がないケースが多く見られます。
そのような場合、家庭裁判所に申し立てをして、正式に「遺言執行者を選任してもらう」必要があります。
この記事では、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらう手続きの流れを、東京都江東区および沖縄県那覇市の方々に向けて、わかりやすく解説します。
1 遺言執行者が必要となる理由
まず前提として、遺言執行者が必要になるのは、遺言に「財産の分配」「相続人の廃除」「認知」「遺贈」など、法律上の効果を持つ内容が記載されている場合です。
たとえば、
・長男に自宅不動産を相続させる
・次男に預貯金の一部を遺贈する
・特定の相続人を廃除する
・特定の子を認知する
といった内容は、誰かが手続を代行して実現しなければ、単なる「紙上の意思」にとどまってしまいます。
その役割を担うのが遺言執行者です。
ただし、遺言書に「〇〇を遺言執行者に指定する」と明記されていない場合は、相続人や利害関係人の申立てにより、家庭裁判所が遺言執行者を選任します。
2 家庭裁判所に申し立てる人
遺言執行者の選任を家庭裁判所に申し立てできるのは、
- 相続人
- 受遺者(遺言によって財産を受け取る人)
- その他の利害関係人
です。
たとえば、受遺者が「自分に遺贈された財産を受け取るために誰かが執行してくれないと困る」という場合、その受遺者自身が申立人となることができます。
また、相続人の間で誰が手続きを進めるか話し合いがまとまらない場合なども、家庭裁判所が中立的な立場で遺言執行者を決定する仕組みが用意されています。
3 どの家庭裁判所に申し立てるか
申立て先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
たとえば、
- 被相続人が東京都江東区に住んでいた場合は「東京家庭裁判所」
- 被相続人が沖縄県那覇市に住んでいた場合は「那覇家庭裁判所」
がそれぞれ管轄します。
4 申立てに必要な書類
遺言執行者の選任申立てには、次のような書類を提出する必要があります。
- 遺言執行者選任申立書(家庭裁判所に備え付け)
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの一連のもの)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言書(原本または写し)
- 申立人の住民票または戸籍附票
- 申立手数料(収入印紙800円程度)
- 連絡用の郵便切手(裁判所によって金額が異なる)
遺言書が公正証書遺言の場合は、公証役場で交付を受けた「謄本」を提出します。
自筆証書遺言が法務局に保管されている場合は、「遺言書保管証」または「遺言書情報証明書」を添付します。
また、家庭裁判所によっては追加の書類(相続関係説明図など)が求められることもありますので、事前に管轄の家庭裁判所へ確認しておくとスムーズです。
5 申立て後の手続きの流れ
申立てを行うと、家庭裁判所は内容を審査し、必要に応じて補足資料の提出や事情聴取を行います。
このとき、相続人や利害関係人全員の同意が必要というわけではありませんが、裁判所は公平性の観点から、関係者に対して意見照会を行う場合もあります。
選任の審理が完了すると、裁判所が正式に「遺言執行者選任審判」を下します。
これにより、遺言執行者が法的に確定します。
審判書が確定すると、申立人や利害関係人に対して「審判書謄本」が送付されます。
遺言執行者に選ばれた人物は、この謄本をもとに各金融機関や法務局などで遺言執行手続きを進めることができます。
6 誰が遺言執行者に選ばれるか
遺言執行者に選ばれるのは、利害関係が少なく中立的に遺言内容を実行できる人物が望ましいとされています。
一般的には、
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 信頼できる親族
などが候補となります。
特に、相続人間で意見の対立がある場合や、複雑な不動産・預金の処理が必要な場合には、専門職(弁護士・司法書士・行政書士など)が選任されることが多くあります。
江東区や那覇市では、地域密着で相続に詳しい専門家が多数おり、家庭裁判所でも専門職を推薦するケースが増えています。
7 選任された遺言執行者の義務
遺言執行者に選ばれると、以下のような法的義務を負います。
- 就任通知:就任後、相続人全員に対し「遺言執行者に就任した」旨を通知します。
- 財産目録の作成・交付:相続財産の一覧を作成し、相続人に交付します。
- 遺言内容の実行:不動産の名義変更、預金の解約・分配、遺贈の執行などを行います。
- 完了報告:遺言の内容をすべて実行した後、その結果を相続人に報告します。
遺言執行者は、被相続人の意思を正確に反映し、相続人や受遺者が安心して手続きを終えられるように進める責任を負っています。
8 まとめ ―専門家の支援を受けて確実な執行を―
遺言があるのに執行者が指定されていない場合、家庭裁判所への申立てが欠かせません。
しかし、戸籍の収集、遺言書の確認、家庭裁判所への書類提出など、一般の方には煩雑に感じられる手続きも多いのが実情です。
特に東京都江東区や沖縄県那覇市のように、相続人が遠隔地にいるケースや不動産の登記が複数の地域にまたがるケースでは、専門家によるサポートが非常に有効です。
行政書士や弁護士など、相続に精通した専門職に相談することで、手続きの遅延やトラブルを防ぎ、被相続人の想いを確実に実現することができます。
行政書士見山事務所は遺言の作成での遺言執行者の指定を多数受けております、お気軽にご相談下さい。