個人事業から法人化する際の建設業許可の取り扱い、廃業届と新規許可申請の判断ポイントを徹底解説

目次

1. 個人事業から法人化するケースとは

建設業を長年個人事業として営んでこられた方が、業績の拡大や信用力の向上を目的として「法人化(法人成り)」を検討するケースは多く見られます。
法人化によって、取引先からの信用度が高まり、金融機関からの融資も受けやすくなるなど、事業上のメリットは大きいといえるでしょう。

しかし注意すべきは、「建設業許可は個人と法人で別の主体に対して与えられる」という点です。
そのため、たとえ同じ代表者であっても、個人の許可をそのまま法人に引き継ぐことはできません。
つまり、個人で建設業許可を受けていた場合でも、法人を新設した時点で「個人の許可は一度廃止」し、「法人として新たに建設業許可を申請」する必要があります。

2. 許可は「人」に帰属するもの

建設業許可は、会社という「法人」や個人事業主という「人」に対して発行されます。
したがって、許可業者が法人化するということは、まったく別の事業主体に生まれ変わることを意味します。

このため、法人成りの際は次のような流れが基本になります。

  1. 個人事業としての建設業許可を「廃業届」によって終了する。
  2. 新たに設立した法人で「新規許可申請」を行う。

この手続きを怠ると、個人の名義で工事を受注していたことになり、無許可営業と判断されるおそれもあります。
特に、公共工事を請け負う事業者は許可の継続性が重要ですので、法人設立の時期と許可申請の準備を慎重に進めることが必要です。

3. 個人許可の廃業届について

個人として建設業許可を受けていた方が法人化する場合、まず行うのは「廃業届の提出」です。
これは「建設業を辞める」という意味ではなく、「個人名義での許可を終了する」という手続きになります。

廃業届は、法人としての新規許可申請を行う都道府県(または国土交通省地方整備局)に対して提出します。
提出期限は、個人事業の廃止日から30日以内とされています。

このとき、法人化のための設立登記が完了していれば、廃業届と新規申請を同時に提出することも可能です。
事業が途切れないようにするためには、登記のタイミングと申請書類の準備を事前に整えておくことが大切です。

4. 法人での新規許可申請の流れ

法人設立後は、個人の許可を引き継ぐことはできないため、「法人名義での新規許可申請」が必要です。
ただし、まったくの新規申請というよりも、個人時代の実績や体制を引き継ぐ形での申請が可能な場合もあります。

法人としての許可申請にあたっては、以下の要件を満たしていることが必要です。

  1. 経営業務の管理責任者がいること
     個人事業主本人が引き続き代表取締役となる場合は、個人時代の経営経験を活かして経営業務管理責任者として認められるケースが多いです。
  2. 専任技術者がいること
     技術資格や実務経験をもつ方が引き続き法人の常勤職員として在籍していることが必要です。
     個人事業主本人が技術者であった場合、そのまま法人の専任技術者になることも可能です。
  3. 財産的基礎(500万円以上の資金力)があること
     個人時代に比べて法人では資本金が設定されるため、これをもって資金力を証明するのが一般的です。
  4. 誠実性・欠格要件に該当しないこと
     過去に不正行為や許可取消処分を受けていないかなどの確認が行われます。

これらの要件を満たしていれば、法人化後も比較的スムーズに新規許可を取得できます。

5. 個人時代の実績を活かすポイント

法人化の際に多くの方が気にされるのが、「個人事業の実績を新しい法人に活かせるか」という点です。
結論から言えば、個人時代の経営経験・工事実績は、一定の条件のもとで法人の許可申請に活用できます。

たとえば、

  • 個人事業主がそのまま法人の代表取締役となる
  • 個人の専任技術者が法人でも引き続き勤務する

といったケースでは、過去の実績を証明することで、経営業務管理責任者や専任技術者の要件をクリアできる場合があります。
ただし、税務署への開業・廃業届や確定申告書など、個人事業の実在を証明する資料の提出が求められます。

6. 法人化のスケジュール管理が重要

法人化に伴う建設業許可の手続きで最も重要なのは「スケジュール管理」です。
個人許可を廃止してから法人許可が下りるまでの間は、無許可期間となるため、その間に工事を請け負うことはできません。

したがって、以下のようなスケジュールで進めるのが理想的です。

  • 1か月前:法人設立の準備開始、定款作成、登記書類の確認
  • 登記完了日:法人登記完了 → 同日に建設業許可の新規申請
  • 登記完了後30日以内:個人の廃業届を提出

東京都や沖縄県では、申請書類の不備や確認事項が多い場合、審査期間が1か月以上かかることもあります。
余裕をもって行政書士に相談し、段取りを整えておくことが望ましいです。

7. 法人化によるメリットと注意点

法人化の最大のメリットは、やはり信用力の向上です。
公共工事の入札や大手ゼネコンとの取引など、法人でなければ参入が難しい案件も多く存在します。
また、代表者の個人資産と会社の資産が分離されることで、リスク管理の面でも安心です。

一方で、法人化に伴い「法人としての決算」「税務申告」「社会保険加入義務」など、新たな手続きも増えます。
建設業許可も、法人として再取得する以上、毎年の決算変更届や5年ごとの更新手続きは引き続き必要です。

8. 東京都江東区・沖縄県那覇市での手続き上のポイント

東京都江東区で法人化する場合は、東京都都市整備局建設業課(新宿庁舎)への申請が必要になります。
一方、沖縄県那覇市では、沖縄県土木建築部技術・建設業課が窓口です。

どちらも、法人設立登記後すぐに申請を行うことが可能ですが、提出書類には細かな差があります。
特に沖縄県では、法人の代表者が離島在住の場合、常勤性の証明書類を追加で求められることがあります。
また、江東区のように公共工事入札資格を併せて申請する場合は、決算書や納税証明書の提出タイミングにも注意が必要です。

9. まとめ

個人事業から法人化する際の建設業許可は、単純な「名義変更」ではなく、廃業届と新規許可申請という2段階の手続きが必要です。
事業を止めずにスムーズに移行するためには、登記・申請・廃業届のタイミングを正確に管理することが重要です。

東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業を営む方にとっても、法人化は事業成長の大きなステップです。
適切な手続きを踏み、許可を継続的に維持していくことで、より安定した経営基盤を築くことができるでしょう。

建設業許可許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。

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