空き家・未登記土地を含む相続財産の管理方法〜相続財産管理人が行う実務と注意点〜

目次

1. はじめに 管理の難しい不動産が増えている

近年、相続により空き家や未登記土地を引き継ぐケースが増えています。
特に、相続人が不在であったり、相続人同士の話し合いがまとまらない場合には、適切な管理がされず放置されることも少なくありません。
倒壊や近隣への悪影響が懸念されると、行政からの指導や固定資産税の負担など、問題が大きくなることもあります。

こうしたケースで重要な役割を担うのが「相続財産管理人」です。
今回は、空き家や未登記土地など、扱いが難しい不動産を含む相続財産の管理方法について、実務の流れを詳しく解説します。

2. 相続財産管理人とは

相続財産管理人とは、相続人がいない、または不明な場合に、家庭裁判所の選任を受けて相続財産を管理・清算する人のことをいいます。
民法951条に基づく制度であり、主に弁護士や司法書士、行政書士などの専門職が選任されることが多いです。

相続財産管理人は、亡くなった方の遺産を調査・確定し、債権者への弁済、残余財産の帰属手続きまでを行います。
空き家や土地も「相続財産」の一部として扱われるため、これらの管理・処分も管理人の重要な任務です。

3. 管理が難しい不動産が含まれる場合の課題

空き家や未登記土地を含む相続財産の管理には、次のような課題が伴います。

(1)建物や土地の現況が不明確である
 長年放置された空き家や、名義が登記されていない土地では、所有関係や利用状況が把握しにくいことがあります。

(2)維持・管理費の負担が発生する
 固定資産税や草刈り、老朽化対策など、管理人が選任された後も費用が発生します。
 財産の中に現金が十分にない場合、これらの経費をどう賄うかが大きな課題になります。

(3)売却や処分の難易度が高い
 未登記土地は法的な手続きが複雑で、買い手が見つかりにくいのが現状です。
 また、空き家も老朽化が進むと市場価値が下がり、処分に手間がかかります。

4. 相続財産管理人による不動産管理の流れ

相続財産管理人が選任された後、空き家や土地を含む相続財産の管理は以下のような流れで行われます。

(1)財産の調査と目録作成

まず、亡くなった方の財産を調査し、相続財産目録を作成します。
不動産については登記事項証明書、固定資産税納税通知書、現地確認などを行い、現況を把握します。
未登記土地の場合は、地積測量図や公図、隣接地との境界確認が重要です。

(2)必要な維持・管理措置

現地の状況に応じて、次のような対応を行います。
・老朽化が進んだ建物の修繕や撤去
・定期的な清掃や草刈り
・不法侵入防止のための施錠や看板設置
・火災保険や損害保険の確認・加入

これらはすべて「相続財産の保存行為」として、管理人の権限に含まれます。

(3)財産の換価(売却)

必要に応じて不動産を売却し、その代金で債権者への弁済などを行います。
売却には家庭裁判所の許可が必要となる場合もあります。
特に未登記土地については、登記の手続を整えた上で換価が進められます。

(4)債権者・受遺者への弁済

公告期間を経て債権者が確定した後、財産の範囲内で債務の弁済を行います。
残余財産があれば、相続人がいない場合には国庫に帰属します。

5. 未登記土地の特有の問題点と対応

未登記土地は、登記簿上の所有者が存在しないため、所有権の確認に時間がかかります。
この場合、相続財産管理人は次のような方法で対応します。

(1)地元役所や法務局での調査
 課税台帳や土地台帳、過去の登記簿を確認し、被相続人の所有であったことを確認します。

(2)登記申請の実施
 被相続人名義での相続登記をまず行い、その後に売却や処分を行うことが一般的です。
 登記費用は相続財産から支出されます。

(3)土地の境界確認
 測量士などの専門家に依頼し、境界を確定する作業が必要になる場合があります。
 これにより、後の売却トラブルを防ぐことができます。

6. 空き家の管理と処分の実務

空き家を含む場合、相続財産管理人には次のような実務対応が求められます。

(1)建物の安全確認
 倒壊や雨漏りなど、近隣に危険を及ぼす恐れがある場合は、応急処置や解体の検討が必要です。

(2)固定資産税・公共料金の処理
 相続財産の範囲内で納付・精算を行い、無用な延滞金を防ぎます。

(3)売却または寄付の検討
 市場価値がある場合は売却して換価しますが、老朽化が激しい場合には、行政や社会福祉法人への寄付・譲渡を検討することもあります。

7. 江東区・那覇市での実務的ポイント

東京都江東区では、老朽化した空き家対策として「特定空家等に対する指導・助言制度」が整備されています。
相続財産管理人が選任されている場合には、区の担当部署と連携して管理・解体を進めるケースもあります。

沖縄県那覇市では、土地の登記漏れや旧土地台帳に基づく不動産が残っていることもあり、未登記土地の扱いには特に注意が必要です。
登記関係は那覇地方法務局や那覇市資産税課と連携して進めるのが実務上のポイントです。

8. まとめ 専門家による管理の重要性

空き家や未登記土地を含む相続財産は、管理・処分に高度な知識と実務経験が求められます。
特に、財産管理人として裁判所に選任されるためには、手続きの正確さと法的根拠が不可欠です。

相続人がいない場合や、相続人同士で話し合いが進まない場合には、早期に家庭裁判所への申立てや、専門家への相談を検討しましょう。
財産の適切な管理は、社会全体の安全や地域環境の保全にもつながります。

生前・終活相談、遺言作成、相続手続きに精通した行政書士見山事務所にお気軽にご相談下さい。

目次