
建設業許可を取得した後も、事業の状況は常に変化します。
時代や受注環境の変化に伴い、複数の業種で許可を受けていても「もうこの業種では工事を行わない」「特定の分野から撤退したい」といったケースは少なくありません。
このような場合に必要となるのが、「建設業許可の一部廃業」または「全部廃業」です。
この記事では、東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業を営む皆さまに向けて、建設業許可の廃業手続きやその意味、そして関連する許可の種類変更手続きまで、実務に即して詳しく解説していきます。
1. 「一部廃業」と「全部廃業」の違い
まず、廃業という言葉から「会社を辞める」「事業をたたむ」というイメージを持たれる方も多いですが、建設業許可における「廃業」は、あくまで許可の取り扱いを終了する手続きを意味します。
(1)一部廃業とは
建設業許可を複数の業種で取得している場合、そのうちの特定の業種のみ廃止することを「一部廃業」といいます。
たとえば、
- 「土木一式工事」「とび・土工工事」「舗装工事」の3業種で許可を受けていた会社が、
- 今後「舗装工事」は受注しない場合
このとき、「舗装工事業」の許可のみを廃止することが「一部廃業」です。
つまり、会社全体としての事業は継続しながら、一部の許可のみを整理するイメージです。
(2)全部廃業とは
これに対し、「全部廃業」とは、すべての建設業許可を廃止する手続きです。
建設業を完全にやめる場合、あるいは会社を解散・廃業する場合などが該当します。
たとえば、
- 建設業を営む個人事業主が高齢のため引退する
- 法人の代表取締役が亡くなり、後継者がいない
- 他業種へ事業転換するため、建設業から撤退する
こうしたケースでは、建設業許可をすべて返上する「全部廃業届」を提出します。
2. 「廃業届」とは?提出期限と必要書類
建設業許可に関する廃業手続きは、「変更届」とは異なり、廃業届を提出することで行います。
(1)提出期限
一部廃業・全部廃業のいずれも、廃業の日から30日以内に提出する必要があります。
(2)提出書類の例
- 廃業届出書(様式第23号の2)
- 建設業許可通知書(原本)
- 廃業理由を記した書面(任意)
- 登記簿謄本(法人の解散・清算の場合)
- 代表者の死亡届(個人事業の場合)
これらをまとめて提出することで、正式に許可が廃止されます。
また、廃業後に決算変更届や事業年度終了報告書の提出は不要になります。
3. 「廃業」という言葉に惑わされないように
建設業許可の世界でいう「廃業」は、一般的な意味の「会社をたたむ」とは異なります。
たとえば、一部廃業の場合は許可業種の整理にすぎず、事業自体をやめるわけではありません。
また、全部廃業をしても、数年後に「やはり建設業を再開したい」となれば、再度許可を取得することは可能です。
つまり、「廃業=永久的な撤退」ではありません。
むしろ、事業計画に応じて許可を柔軟に管理するための制度と考えると良いでしょう。
4. 廃業届が必要となる主なケース
実際の現場で廃業届を提出するケースとしては、次のような例があります。
- 経営の合理化のため、不要な許可業種を整理する(一部廃業)
- 経営業務の管理責任者や専任技術者の退職により、要件を満たせなくなった
- 代表者の死亡・会社の解散(全部廃業)
- 他業種へ転換するため建設業をやめる
- 許可更新をせずに期限切れとなるため、事前に廃業届を出して整理する
これらのいずれも、届出をしないまま放置することは避けなければなりません。
行政庁が実態確認を行った際、許可を持ったまま実際には活動していない状態が続くと、監査や指導の対象になることもあります。
5. 法人・個人別の手続きの違い
建設業許可の廃業手続きは、法人と個人で手続きの内容が異なります。
(1)法人の場合
法人が解散する場合は、まず法務局で解散登記・清算人登記を行います。
その後、登記簿謄本を添えて廃業届を提出します。
清算が完了したら、清算結了登記後の登記簿謄本も併せて提出するのが一般的です。
(2)個人事業主の場合
個人事業主が死亡した場合や自主的に事業をやめる場合は、相続人や本人が廃業届を提出します。
税務署や都道府県税事務所への「個人事業の廃業届」と同時に進めることで、事務手続きがスムーズになります。
那覇市のように家族経営の建設業者が多い地域では、相続や承継に伴う手続きと一緒に進めることも多く、行政書士など専門家に相談するケースが増えています。
6. 許可の種類が変わる場合の「変更」との違い
建設業許可においては、「廃業届」と似ていて混同されやすい手続きとして、「許可の種類変更」があります。
たとえば、
- 都道府県知事許可 → 国土交通大臣許可(営業所が2都道府県にまたがる場合)
- 一般建設業 → 特定建設業(元請として大規模工事を行う場合)
- 新しい業種の追加許可
これらは単なる「変更届」ではなく、新たに許可を取り直す手続き(新規申請)が必要です。
つまり、「一部廃業」や「全部廃業」とは全く別の扱いです。
申請に必要な書類は多く、経営業務の管理責任者や専任技術者の要件も再確認が求められるため、
「新規申請ほどではないが、決算変更届よりは数倍大変」と言われるほど手間がかかります。
東京都江東区では、建設業の多角化を進める企業が多く、「業種追加」と「一部廃業」を同時に行うケースもあります。
一方、沖縄県那覇市では、地元公共工事の入札資格に合わせて「特定建設業」へ切り替える事例が増えています。
7. 廃業届を提出する際の注意点
廃業届の提出時には、以下のような点に注意が必要です。
- 廃業日を明確にする(登記日や営業終了日など)
- 許可通知書を必ず返却する
- 提出期限(30日以内)を過ぎないようにする
- 他の行政手続き(税務・社会保険・入札資格など)も同時に整理
また、東京都や沖縄県では、建設業許可だけでなく入札参加資格・経営事項審査(経審)の登録情報も連動しているため、廃業届を提出した際はそれらの登録も併せて取り消す必要があります。
8. まとめ 廃業は「終わり」ではなく「再スタート」の準備
建設業許可の一部廃業・全部廃業は、会社の経営判断に基づく自然な手続きです。
「廃業」という言葉からネガティブな印象を受ける方も多いですが、実際には事業の整理や将来の再構築に向けた前向きなステップといえます。
東京都江東区や沖縄県那覇市のように、再開発や観光インフラ整備が進む地域では、時期を見て再び建設業に参入する事業者も少なくありません。
その際、過去の廃業届がきちんと提出されていると、再申請もスムーズに進みます。
建設業許可を適正に維持・整理することは、会社の信頼性を保つ上でも非常に重要です。
一部廃業・全部廃業の手続きに迷う場合は、早めに行政書士など専門家へ相談し、確実な対応を行うようにしましょう。
建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。