建設業許可を一度廃業した後、再取得する際のポイントと注意点について

建設業を続けていると、さまざまな事情で建設業許可を「廃業」するケースがあります。
事業の縮小や一時的な休業、代表者の高齢化、会社組織の再編など理由はさまざまですが、廃業した後に再び建設業を再開したいという相談も少なくありません。
ここでは、建設業許可を一度廃業した後に再取得する際の流れと注意点について、東京都江東区や沖縄県那覇市で申請する場合を中心に詳しく解説します。

目次

1 建設業許可の「廃業」とは何か

建設業許可の「廃業」とは、建設業の許可を自主的にやめることをいいます。
「事業を完全に辞める」という意味ではなく、「建設業法上の許可を返上する」という手続きです。
許可業種の一部をやめる場合は「一部廃業」、すべての業種をやめる場合は「全部廃業」と呼ばれます。

たとえば、土木一式工事ととび・土工工事の2業種で許可を持っていた会社が、土木一式だけをやめる場合は「一部廃業届」を提出します。
一方で、すべての許可をやめる場合には「全部廃業届」となります。

廃業届は、廃業の日から30日以内に提出する必要があります。
提出先は、東京都江東区の会社であれば東京都の建設業課、沖縄県那覇市の会社であれば沖縄県土木建築部の建設業担当窓口です。

2 廃業届を提出する主な理由

実務上、建設業許可の廃業届を出す理由は大きく分けて次のようなものがあります。

  1. 代表者が高齢で引退するため
  2. 一時的に工事の受注をやめるため
  3. 他の事業に専念するため
  4. 経営業務管理責任者や専任技術者が退任して要件を満たさなくなったため
  5. 法人を解散・清算するため
  6. 個人事業主が死亡したため

「廃業」という言葉から強い印象を受ける方もいますが、将来的に再取得することは十分可能です。
ただし、再度許可を取得する場合には「新規許可申請」と同様の手続きが必要になります。

3 再取得は「再交付」ではなく「新規申請」

建設業許可を廃業した後に再度許可を取りたい場合、「許可の再交付」や「復活」といった制度はありません。
過去に許可を受けていたとしても、一度廃業届を提出した時点で許可は消滅します。
そのため、再度建設業を始めるには、新規の建設業許可申請を行うことになります。

ただし、以前に許可を受けていた経験がある場合、経営業務管理責任者や専任技術者などの要件を満たす資料が揃いやすく、完全な初めての新規申請よりもスムーズに進むケースが多いです。

4 再取得の際に求められる主な要件

新たに建設業許可を取得するためには、次の5つの要件を満たす必要があります。
これは廃業後の再取得でも同様です。

  1. 経営業務の管理責任者がいること
     過去に建設業の経営経験が5年以上ある者が必要です。
     以前代表取締役として許可を持っていた人であれば、再取得時にこの要件を満たす可能性が高いです。
  2. 専任技術者が営業所ごとにいること
     建設業の種類ごとに、一定の資格または実務経験を有する技術者を配置する必要があります。
  3. 誠実性があること
     過去に建設業法違反などの処分を受けていないことが求められます。
  4. 財産的基礎があること
     一般建設業では500万円以上の自己資本(または同等の資金調達能力)が必要です。
  5. 欠格要件に該当しないこと
     暴力団関係者や刑罰歴が一定条件に該当する場合は許可が下りません。

特に注意が必要なのは、廃業から再取得までの期間が長い場合です。
以前の実務経験が「経営業務管理責任者の要件」として有効に評価されるかどうか、申請前に慎重に確認しておくことが重要です。

5 法人の廃業と再設立の場合の注意点

法人が廃業届を提出した場合、会社登記上も「解散・清算」となっているケースがあります。
この場合は、同じ商号や所在地を使っても、法的には新しい法人として扱われます。
したがって、以前の許可を引き継ぐことはできず、新たに許可を取り直す必要があります。

また、同一人物が代表となって再設立する場合でも、資本金・役員構成・営業所所在地などの条件を再度満たさなければなりません。
過去の許可証や決算変更届の提出実績があっても、廃業後はそれらのデータが「参考資料」として扱われるにとどまります。

6 個人事業から法人化する際の再取得

個人事業で建設業許可を持っていた方が、法人化して事業を引き継ぐ場合も注意が必要です。
個人の許可はその個人に帰属するため、法人化により新しい主体となった場合には、個人許可を廃業して法人として新規申請を行う必要があります。
この場合、同一人物が代表者であっても、許可は自動的に引き継がれません。

ただし、個人時代の経営実績や技術者資格は、新たな法人の経営業務管理責任者・専任技術者として認められることが多いため、実務上は比較的スムーズに許可が取得できます。

7 廃業から再取得までの期間に注意

廃業から再取得までの期間に空白がある場合、次のような影響が生じます。

  • 経営業務管理責任者としての経験が「直近の実績」として認められない場合がある
  • 決算書類や残高証明書など、過去の資料が古くなり再提出が必要になる
  • 一度解散した法人の場合、過去の営業実績は新法人の信用として使えない

特に経営経験の証明は、許可要件の中でも厳格に審査されます。
廃業から再開までに数年経過している場合、許可要件を満たせるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。

8 再取得の手続きの流れ

再取得を行う際の手続きの大まかな流れは以下の通りです。

  1. 要件の確認
     経営業務管理責任者・専任技術者・資本金など、許可要件を満たしているかを確認します。
  2. 書類の準備
     履歴事項全部証明書、納税証明書、残高証明書、経営経験証明書、技術者資格証明書などを収集します。
  3. 申請書の作成と提出
     東京都江東区の会社は東京都庁へ、沖縄県那覇市の会社は沖縄県庁へ申請します。
  4. 審査期間
     おおむね1か月から2か月ほどで審査が行われ、問題がなければ許可通知書が発行されます。

9 再取得時の注意点

再取得をスムーズに行うためには、次の点に注意が必要です。

  • 廃業時に提出した書類の控えを保管しておく
  • 廃業届の日付と再取得申請の日付が矛盾しないよう整理する
  • 経営経験の証明に使える資料(契約書・請求書・工事台帳など)を保存しておく
  • 資本金や登記内容を最新の状態にしてから申請する
  • 経営業務管理責任者や専任技術者が他社に在籍していないことを確認する

10 まとめ

建設業許可を一度廃業した後でも、要件を満たしていれば再取得は可能です。
ただし、「復活」ではなく「新規許可申請」となるため、改めて要件を確認し、資料を整える必要があります。
過去に許可を持っていたからといって自動的に許可が再開されるわけではない点に注意が必要です。

東京都江東区や沖縄県那覇市では、地域ごとに提出窓口や添付書類の細部が異なるため、事前に所管窓口に確認してから手続きを進めることが重要です。
再取得を円滑に進めるためには、経営経験・技術者資格・財務基盤などの要件を一つひとつ確実に整えることが成功の鍵になります。

建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。

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