民泊業界に100億円の投資マネー流入!政府系「民泊ファンド」誕生がもたらすものとは?

コロナ禍が収束し、再び訪日観光客が戻りつつある中、国内宿泊業界が活気を取り戻しています。そして、その波に乗るように「民泊」も再び注目され始めました。特に今回、日本政策投資銀行(政投銀)が民泊事業を支援するための不動産ファンド、通称「民泊ファンド」を設立したことで、大きな話題を呼んでいます。本記事では、民泊ファンド誕生の背景やその影響について詳しく解説します。

民泊市場の再活性化を目指す政府系ファンドの狙い

日本政策投資銀行によって設立されたこの民泊ファンドは、最大100億円規模の運用を目指しています。主なターゲットは、東京23区をはじめとする都市部にある中古マンションで、ファンドはこれらを一棟購入し、民泊やマンスリーマンションとして運営します。

政投銀が目指しているのは、インバウンド需要の高まりに応じて都市部の宿泊施設を強化することです。特に、建設費の高騰や人手不足が背景にある中、既存の建物を有効活用して宿泊需要を支えることが求められています。

政府の後押しに対する期待と懸念の声

「民泊ファンド」が誕生したことについて、歓迎の声が上がる一方で、SNSなどでは「民業圧迫」への懸念も見受けられます。一般的に「民業圧迫」とは、政府系機関が民間事業者の領域に資本を投入することで、民間企業の利益を損なう可能性があることを指します。

特に今回のケースでは、民泊ファンドが特定の民泊事業者「マツリテクノロジーズ」(以下、マツリ社)と提携していることもあり、「特定の企業が優遇されているのではないか」という批判が上がっています。実際、西日本で不動産投資を行うある事業者からは「政府の投資が他の民泊事業者に恩恵をもたらさず、一部の企業だけを支援しているように見える」という声も上がっています。

民泊ファンドによる運用と新たな課題

民泊ファンドが既存の中古マンションを購入して運用する方法についても課題があります。具体的には、民泊と通常の賃貸居住者が混在することにより、居住者の住環境に悪影響が出る可能性があります。過去には、宿泊者が荷物を玄関に広げたり騒音を立てたりと、住民とのトラブルが頻発したことから、マンションの管理規約で民泊を禁止しているケースも少なくありません。

ファンドが購入した物件でも、既存の住民がいる場合は順次退去させ、空室を民泊に転用する方針ですが、この方針に対しても「既存の住民を無理に退去させているのではないか」という懸念があるのが現状です。

民泊ファンド設立の背景と日本政府の意図

日本政府が民泊事業に注力する背景には、訪日客の増加に伴う宿泊施設の不足が関係しています。コロナ禍前の水準を上回る訪日客数に対し、東京都内の宿泊施設数は微増にとどまっています。特に新築ホテルの建設はコスト面の問題があり、既存の賃貸マンションの空室を活用する民泊は、効率的な宿泊施設整備として注目されています。

一方、民泊運営には多くの課題も残っています。2018年に施行された「民泊新法」では、営業日数が年間180日以内とされ、自治体によってはさらに厳しい運営制限もあります。また、ランニングコストも通常の賃貸住宅に比べて高く、清掃費や光熱費、さらにAirbnbなどの仲介手数料も負担が大きくなっています。こうした制約の影響で、民泊事業から撤退する事業者も少なくありません。

これからの民泊参入はアリか?

コロナ禍以降、淘汰された民泊事業が再び注目を集めているものの、民泊事業に参入するリスクは依然として高いです。民泊運営にかかるコストは多岐にわたり、物件購入やリフォームの初期費用に加え、光熱費や清掃費などのランニングコストも考慮しなければなりません。また、外部委託する場合は、売上の20%が運営代行費用に充てられるケースもあり、収益性を確保するには綿密な計画が必要です。

さらに、不測の事態によるリスクも考慮する必要があります。コロナ禍のように観光客の大幅な減少が起きた場合、民泊収入が見込めなくなる可能性があり、資金繰りが困難になる場合もあります。

那覇市や江東区の方々が民泊に参入する際のポイント

沖縄県那覇市や東京都江東区で民泊運営を検討している方々にとっては、地域特有の観光資源やインバウンド需要を活かした戦略が求められます。しかし、法規制やコストの高さ、さらに地域住民との調整も重要です。特に江東区では、マンションなどの管理規約に民泊が禁止されている場合も多く、事前に確認しておくことが必要です。

那覇市の場合は、観光地が多い特性を活かした民泊運営も考えられますが、地域の住宅街に民泊施設を設置する際には、近隣住民とのトラブルを避けるため、管理体制や利用者のマナーに関する対策も重要です。

民泊ファンドの影響と今後の展望

今回の民泊ファンドの誕生により、大量の投資マネーが流入することで、再び民泊事業に対する関心が高まることは間違いありません。しかし、国が主導するファンドが市場に与える影響は多岐にわたるため、特に個人事業者や投資家が安易に参入するのは避け、慎重に判断することが求められます。

この先、日本政府は2030年までに訪日客を年間6000万人まで増やす目標を掲げています。したがって、宿泊施設の不足を補う施策として民泊が活用される機会も増えていくことでしょう。しかし、法規制の強化や運営コストの高さを踏まえれば、個人での参入にはリスクが伴うため、民泊を行う際には、十分なリサーチと計画が必要です。

以上のように、民泊ファンドはインバウンド需要の受け皿として期待されていますが、安易な参入はリスクも伴うため、今後も民泊業界の動向を注視しながら検討することをおすすめします。

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