不要な不動産や負債付き遺贈を避けられる遺贈放棄の方法と期限、注意点について

目次

1.そもそも「遺贈」とは?

「遺贈(いぞう)」とは、被相続人(亡くなった方)が遺言によって、相続人または相続人以外の人に財産を贈与することを言います。
遺贈で財産を受け取る人は「受遺者(じゅいしゃ)」と呼ばれます。

たとえば、「自宅を長男に遺贈する」「友人Aに100万円を遺贈する」など、遺言書によって明確に意思を示すことで可能になります。

2.遺贈は「断る」こともできる

遺贈はありがたく受け取るだけのものと思われがちですが、受遺者には受け取る義務はありません。つまり、遺贈を放棄することができます

たとえば、以下のような理由から遺贈を放棄するケースがあります。

  • 不動産を遺贈されたが、老朽化しており維持費が高い
  • 財産よりも負債が多く、相続税や登録免許税の負担が見込まれる
  • 遺贈を受けると、他の相続人との関係に亀裂が入りそう

このような場合、受遺者の判断で遺贈の放棄が認められます。

3.遺贈放棄の方法とは?

遺贈放棄の方法は、「包括遺贈」か「特定遺贈」かによって手続きが異なります。

包括遺贈の場合

「全財産の○%を譲る」といった割合での遺贈です。
この場合、包括遺贈=相続人に準じる扱いになるため、家庭裁判所での相続放棄の手続きが必要です。

  • 手続き先:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 期限:相続の開始(死亡)を知った日から3か月以内

申立書を家庭裁判所に提出し、審査のうえ受理されれば、遺贈放棄が成立します。

特定遺贈の場合

「○○市の土地を譲る」「現金100万円を譲る」といった特定の財産を指定する遺贈です。
この場合は、家庭裁判所への申立ては不要で、受遺者が意思表示するだけで放棄が可能です。

  • 方法:明示または黙示による放棄の意思表示
  • 例:登記をしない、受取拒否の書面を送る、実務的に一切関与しないなど
  • 推奨:放棄の意思表示は書面で明確に残すのが望ましい

4.遺贈放棄の期限は?

包括遺贈の場合

→ 家庭裁判所への相続放棄手続きの期限は「3か月以内」

この「3か月」は、遺贈を受けることを知った時から起算されます。被相続人の死亡を知らなかった場合や遺言が後から発見された場合などは、「知った日」が起算日になります。

特定遺贈の場合

→ 法律上、厳密な期限は定められていませんが、できるだけ早く放棄の意思表示をするのが原則です。

なぜなら、不動産の登記手続きや、相続税申告の時期など、相続全体の手続きに大きな影響を与えるためです。

5.実務上の注意点

曖昧な態度はトラブルのもと

たとえば、「とりあえず相続税だけ納める」「登記だけしておいて売却は後にする」といった対応は、遺贈を受け入れたと見なされる可能性があります。
「意思表示を保留する」ことはできないため、放棄するなら明確に、速やかに

第三者との関係にも注意

遺贈された財産に借地権・賃貸契約・担保権など第三者の権利が付いている場合、放棄によって問題が複雑化することもあります。事前に内容を十分確認しましょう。

不動産を放棄しても「相続登記義務」は残る可能性も

特定遺贈の放棄をしても、相続人がいない場合や受遺者が複数いる場合には、名義の行き先が確定しないことで相続登記の義務が発生することがあります。令和6年から相続登記の義務化が進んでおり、不要なトラブルを避けるためにも、放棄の際は関係者と連携をとることが重要です。

6.法人への遺贈を放棄する場合の特例

受遺者が法人(公益法人、NPO法人など)の場合も、遺贈を放棄することは可能です。ただし、理事会の決議など法人内部の手続きが必要な場合があります。また、相続税申告や法人税申告の対応も検討する必要がありますので、早めに税理士などと相談することが望ましいです。

7.まとめ 遺贈放棄には判断と手続きのスピードが大切

遺贈放棄は、受遺者の判断で可能な柔軟な制度ですが、放棄のタイミングや方法によってはトラブルの原因にもなり得ます。以下の点を意識して行動することが大切です。

  • 包括遺贈は3か月以内に家庭裁判所で放棄の手続きを
  • 特定遺贈は速やかに書面などで放棄の意思表示を
  • 曖昧な態度は「承諾」とみなされるリスクあり
  • 不動産など実務上の処理が必要な遺贈には注意を

江東区・那覇市をはじめ都市部では、不動産や預貯金といった遺贈の価値も大きくなりやすいことから、手続きの正確さ・迅速さがより一層求められます。疑問があれば専門家へ相談し、確実に処理することが将来の安心につながります。

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