特定建設業許可申請における、よくある補正事例とその防止策について

〜江東区・那覇市で申請される皆様へ、実務経験に基づく注意点を解説〜

特定建設業への許可申請は、一般建設業よりも審査項目が厳格です。
特に「財務要件」と「専任技術者の要件」はハードルが高く、書類の不備や形式の不一致によって「補正」の連絡を受けるケースが少なくありません。

本記事では、行政書士としての現場経験をもとに、実務でよくある補正パターンを具体的に解説し、それぞれの予防策(防止方法)もあわせてご紹介します。

目次

1. よくある補正事例①

専任技術者の資格証明に不備がある

ケース例:
・施工管理技士の合格証のコピーしか提出していない
・実務経験10年以上で申請したが、証明工事の内容が不十分
・在職証明書の記載者が代表者で、裏付け書類がない

防止策:

  • 国家資格証明の場合は、「合格証」ではなく「登録証」や「免状の写し」が必要(特に2級施工管理技士は注意)
  • 実務経験証明では、工事名・発注者・請負金額・工期などが分かる書類(契約書・請求書・注文書等)を添付し、最低でも3〜5件の実績を明記
  • 在職証明書に加え、健康保険資格取得証明書源泉徴収票を併せて提出して、常勤性・継続性の証明力を強化する

2. よくある補正事例②

財務諸表の記載誤り・整合性の不足

ケース例:
・貸借対照表と損益計算書の数値に整合性がない
・資本金が2,000万円以上と記載しているが、登記簿が未更新
・直前決算で「自己資本4,000万円」に届いていない

防止策:

  • 財務諸表は、税務署提出済の決算書と一致するものを提出。経理士と事前に相談し、勘定科目も統一する
  • 増資をした場合は、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)にその内容が反映されているか確認。申請前に法務局への登記が完了していること
  • 自己資本不足の場合は、増資・利益繰越・役員借入の処理を早めに準備し、複数年の計画でクリアするのが基本

3. よくある補正事例③

役員・従業員の身分証明関連の不備

ケース例:
・「登記されていないことの証明書」の発行日が3か月以上前
・「身分証明書」が本籍地ではなく現住所の自治体から発行されている
・住民票に「個人番号(マイナンバー)」が記載されている

防止策:

  • いずれの証明書も発行日から3か月以内のものが原則
  • 「身分証明書」は本籍地の市区町村で発行されたものを使用
  • 住民票は「個人番号省略」「住民票コード省略」にチェックを入れて取得し、記載がある場合は再取得が必要

4. よくある補正事例④

営業所の実態確認資料が不十分

ケース例:
・営業所の写真が提出されていない、または外観しかない
・「営業所使用権限の確認書類」が不鮮明・名義が法人でない
・レンタルオフィスやバーチャルオフィスが使用されている

防止策:

  • 外観・内観(机・帳簿・電話などが写っている)を最低2〜3点添付
  • 賃貸契約書の契約者が法人名義であること、期間が申請時点で有効であることを確認
  • 建設業許可における営業所は、「常勤職員が出勤して業務に従事していること」が必要条件。物理的空間がないオフィスは基本的に不可

5. よくある補正事例⑤

許可区分・業種の選択ミスや記載不備

ケース例:
・「建築一式工事」と「大工工事」の区別がつかず、誤って選択
・「特定建設業」なのに申請書では「一般」にチェック
・業種追加でなく、誤って新規扱いで申請してしまった

防止策:

  • どの業種が「一式工事」に該当し、どれが「専門工事」かを事前に確認(例:建築一式は500万円超の総合的な工事)
  • 申請区分(新規/業種追加/更新/変更許可申請)を誤ると受理されないこともあるため、事前相談で必ず確認すること

6. よくある補正事例⑥

代表者の兼任・他社役員との関係の確認漏れ

ケース例:
・申請者の代表者が、他の建設業許可法人の代表も兼ねていた
・専任技術者が他法人と兼務していたことが後日発覚

防止策:

  • 他法人との関係(登記・役員関係)を事前に調査
  • 専任技術者の雇用契約書や出勤簿・給与明細等を添付して、「常勤」であることを証明
  • 「専任」は一つの事業所につき一人のみであり、他法人との兼任は禁止

7. 補正を避けるための「三原則」

申請前に以下の三原則を意識しておくことで、補正の大半は防げます。

客観資料の用意

→ 資格、経験、財務…どれも「証拠」が必要です。

一貫性のある書類作成

→ 登記情報・住民票・決算書など、すべてが一致していることが重要。

事前相談の徹底

→ 都道府県の建設業担当課に事前相談を行うことで、提出時のトラブルを未然に防げます。

8. まとめ 補正は防げる。事前の準備がすべて

補正通知が来ると、再提出や資料差替えに時間を要し、審査期間が1〜2ヶ月遅れることもあります。許可がなければ受注できない仕事もあるため、補正は企業活動にとっても大きなリスクです。

今回ご紹介した補正事例と防止策をもとに、申請書作成前から「証明力」と「整合性」を意識し、スムーズな許可取得を目指してください。

江東区・那覇市の建設業者様が安心して事業展開できるよう、行政実務の現場から今後もサポート情報を発信してまいります。

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