財産的基礎の証明に必要な残高証明書・融資証明書の取得方法と注意点について

建設業許可の申請では、「財産的基礎」が法定要件の一つとして求められます。
特に「一般建設業」の新規申請においては、「500万円以上の自己資本」もしくは「500万円以上の資金調達能力」が必要です。

では、自己資本が要件に満たない場合、どうすればよいのでしょうか。
その際に重要となるのが、「残高証明書」または「融資証明書」の活用です。

この記事では、これらの証明書の取得方法と注意点を実務の視点から解説します。

目次

1. なぜ残高証明書や融資証明書が必要なのか?

建設業法第7条第2号に基づき、一般建設業許可の取得には以下のいずれかを満たす必要があります。

  • 自己資本が500万円以上ある
  • 500万円以上の資金を調達する能力がある
  • 許可を受けて5年以上継続して建設業を営んでいる実績がある

新規申請の場合、「過去の継続実績」がないことが一般的なため、
自己資本が足りなければ「資金調達能力」を証明する必要があります。

この「資金調達能力」を客観的に示す書類として、銀行の残高証明書または融資証明書が必要となるのです。

2. 残高証明書の取得方法

2-1. 残高証明書とは?

残高証明書は、指定日時点で銀行口座に保有している預金額を証明する書類です。
通常、法人名義または申請人個人名義の口座について発行されます。

2-2. 取得手続きの流れ

銀行によって手続き方法に若干の違いがありますが、一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 銀行の窓口またはインターネットバンキングで申請
    • 窓口で「残高証明書を発行してほしい」と申し出ます。
    • その際、「どの日付の残高を証明したいか」を指定します(通常は申請直近の日付)。
  2. 手数料の支払い
    • 発行手数料は銀行により異なります(300~1000円程度が一般的)。
    • 窓口の場合は即日発行できることもありますが、数日かかることもあるため余裕を持った申請が必要です。
  3. 証明書の受領
    • 原則として紙媒体で発行されます。申請書類に添付するため、原本が必要です。

2-3. 使用上の注意点

  • 金額は500万円以上であることが必要です(建設業許可の申請日時点で有効なもの)。
  • 発行日が古すぎると無効になる可能性があります。通常は申請から2週間以内が望ましいとされています。
  • 法人の申請であれば、法人名義の口座で発行したものを添付しましょう。

3. 融資証明書の取得方法

3-1. 融資証明書とは?

融資証明書(または融資可能証明書、融資内諾書とも呼ばれます)は、金融機関が申請者に対して「500万円以上の融資が可能である」と判断した旨を記載した書類です。

3-2. 取得までの流れ

  1. 金融機関(主にメインバンク)に相談
    • 「建設業許可申請に使いたいので、融資可能証明書を発行してほしい」と伝えます。
    • 明確な貸付契約がなくても、「融資可能である」との意思表示を文書で受けられる場合があります。
  2. 必要書類の提出
    • 通常、以下のような資料の提出を求められます。
      • 決算書(直近2~3期)
      • 税務申告書
      • 事業計画書
      • 代表者の身分証明書
  3. 銀行の審査
    • 事業内容や財務状況をもとに、金融機関が内部的な信用審査を行います。
  4. 融資証明書の発行
    • 「融資可能」と判断された場合、書式に沿った証明書が発行されます。
    • 内容に「融資額」「融資予定日」「担当者名」などが記載されます。

3-3. 使用上の注意点

  • 金融機関によっては「融資可能証明書」の発行を行っていない場合もあります。その場合は、残高証明書の取得に切り替えましょう。
  • 融資証明書は、「現実に融資を受けた証明書」ではなく、「融資の可能性を示す書類」である点に注意してください。
  • 証明書の発行日から日数が経過しすぎていると、提出時に無効とされる可能性があります。

4. 書類提出時の留意点

申請書に添付する際、次の点に注意してください。

  • 残高証明書または融資証明書は、原則として原本を提出します。
  • 金融機関発行の書類には「行印(公印)」が押印されている必要があります。
  • コピーは受け付けられない場合が多いため、事前に行政庁へ確認を。
  • 他の書類(例えば純資産額が明記された決算書等)と整合性があるかを確認すること。

5. よくある質問と回答

Q1:預金が複数の口座に分かれている場合、合算してよい?

→ 基本的には1つの口座で500万円以上あることが望ましいですが、場合によっては複数口座の残高証明書を提出して合算可能なケースもあります。事前に申請先(東京都や沖縄県等)に確認しましょう。

Q2:個人口座の残高証明でもよいのか?

→ 法人申請の場合、法人名義の口座が原則です。ただし、個人事業主や小規模法人で事実上の代表者口座しか存在しない場合などには、代表者名義の個人口座も一部認められることがあります

Q3:ゆうちょ銀行でも取得できますか?

→ はい、ゆうちょ銀行でも残高証明書の発行は可能です。ただし、申請から発行まで数日〜1週間程度かかることがありますので、余裕を持って手続きしましょう。

6. まとめ

建設業許可において、財産的基礎を証明する「残高証明書」や「融資証明書」は、自己資本が基準に達しない場合の有力な代替手段です。

  • 銀行窓口やオンラインで発行可能
  • 発行タイミングと金額が重要(500万円以上)
  • 原本提出が原則、事前確認は忘れずに

東京都江東区や沖縄県那覇市でも、こうした証明資料による申請が多数行われています。
資産要件がネックになりそうな場合は、早めに金融機関と相談し、残高証明書・融資証明書の取得準備を進めましょう。

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