
建設業許可の取得や更新においては、「申請書の内容を裏付ける資料」を数多く提出しなければなりません。
その中でも実務経験や経営経験、完成工事高などの証明に必要となるのが、契約書・注文書・請求書等の商取引に関する書類です。
本記事では、これらの書類を確認資料として活用するための整備方法と保存ルールについて、行政庁の運用実務に沿ってわかりやすく解説します。
1. 建設業許可で「契約書・注文書・請求書」が求められる場面
建設業許可の新規取得や更新、業種追加などの申請において、以下のような証明にこれらの書類が使われます。
- 経営業務管理責任者としての経営経験の証明
- 専任技術者の実務経験の証明
- 工事経歴書に記載した工事実績の裏付け
- 決算変更届における完成工事高の根拠
- 確定申告書に記載された売上高の補足資料
これらの目的のために、工事ごとの契約関係や金銭授受の記録を明確にし、いつ・誰と・どのような内容の工事を行ったかを示すことが重要です。
2. 契約書・注文書・請求書の整備方法
2-1. 契約書の整備ポイント
契約書は、元請・下請いずれの立場でも、基本的には書面で交わすことが原則です。内容として以下の点を明記しましょう。
- 契約当事者の名称・住所・代表者氏名
- 工事名・工事内容・工事場所
- 契約金額(税込・税抜を明記)
- 契約日・着工日・完成日
- 契約形態(元請・下請の区別)
署名または記名押印があることが望ましく、法人の場合は社印(角印)を用いた正式なものが好まれます。
2-2. 注文書・請書(受注者側)で代替する方法
契約書が交わされていない場合は、以下の2点で代替が可能です。
- 発注者が発行した注文書
- 受注者が返送する請書(受領書)
この場合、注文書と請書が対になっていること(=相手の確認を得ていること)が大切です。
また、注文書のみによる一方的な証明では不十分とされるケースもあるため、可能な限り請書もあわせて整備するようにしましょう。
2-3. 請求書と入金記録
契約の実行性を示すためには、請求書とそれに対する入金記録(銀行の振込明細など)を合わせて保存することが推奨されます。
これにより、単に契約があっただけでなく、実際に工事が遂行され、報酬が支払われた事実を立証できます。
3. 書類を証明資料として活用するための具体的ルール
3-1. 行政庁に提出する場合の必要事項
建設業許可において、証明力のある契約書等として認められるには、以下の要素が含まれていることが原則です。
必須事項 | 内容例 |
発注者と受注者の情報 | 会社名、代表者名、住所等 |
工事内容 | ○○マンション外壁補修工事 等 |
工事場所 | 東京都江東区○○丁目○番地 |
契約(注文)金額 | 1,200,000円(税込)など |
契約(注文)年月日 | 令和6年4月1日など |
契約当事者の署名・押印 | 会社印または代表者印 |
これらがそろっていない書類は、補正を求められることがあります。
3-2. 金額と期間の整合性を取る
例えば、実務経験10年以上を証明する際には、各年度において工事実績があったことを示す契約書等を連続して揃える必要があります。
また、完成工事高を示す書類と整合性が取れるよう、請求書の日付・金額が決算内容と一致していることを確認することも重要です。
4. 保存ルールと注意点
4-1. 保存期間の目安
建設業法において直接的な保存義務はありませんが、以下を目安とすると実務上安心です。
書類の種類 | 推奨保存期間 |
契約書・注文書 | 10年間 |
請求書・領収書 | 7年間 |
振込明細・入金記録 | 7年間 |
4-2. 電子保存も可能
最近では、紙ベースの書類だけでなく、スキャンデータやPDFファイルとして保存する企業も増えています。
ただし、建設業許可申請においては、原則として紙の原本提出が求められるため、最低限スキャン前の原本は保管しておきましょう。
5. よくあるトラブルと対処法
5-1. 契約書を交わしていなかった
→ 注文書と請書を整備することで代替可能ですが、内容の一致が確認できる書類をペアで提出することが求められます。
不足している場合は、当時の発注者からの「取引証明書」を依頼する方法もあります。
5-2. 金額が口頭契約だった
→ 口頭契約だけでは許可申請には不十分です。後日でもかまわないので、確認書や念書などとして双方の合意を文書化して整備することが望ましいです。
5-3. 過去の請求書等が手元にない
→ 税理士が保管している場合も多いため、顧問税理士に相談して過去帳簿を調査してもらうのがよいでしょう。
6. まとめ
契約書・注文書・請求書といった商取引に関する書類は、建設業許可申請における実績や経験を裏付ける上で極めて重要です。
- 契約内容の明記、署名・押印、日付の明確化
- 請求書・入金記録による履行実績の証明
- 書類同士の整合性と保存体制の構築
東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業許可を申請する場合も、こうした書類の整備と保管が、スムーズな許可取得につながります。
「普段から整えておく」ことが、いざというときに許可取得のチャンスを逃さないための鍵になります。