特別寄与料を請求するときの具体的な手続きと注意点について詳しく解説

2019年の民法改正によって新設された「特別寄与料」の制度。
相続人ではない親族が、被相続人に対して無償で療養看護などの特別な貢献をした場合に、
相続人に対して金銭の支払いを請求できる仕組みです。

しかし、特別寄与料を請求するためには、手続きや注意点をしっかり押さえておかなければ、
せっかくの貢献が正当に評価されない恐れもあります。

この記事では、東京都江東区・沖縄県那覇市にお住まいの方に向けて、
特別寄与料を請求する際の具体的な流れと、注意すべきポイントをわかりやすく解説します。


目次

そもそも特別寄与料とは?

特別寄与料とは、被相続人に対して無償で特別な貢献(療養看護など)を行った相続人以外の親族が、
相続人に対して金銭請求できる権利のことです。
民法第1050条に規定されています。

たとえば、長男の妻や孫など、法定相続人ではない親族が、
被相続人の介護や生活支援を無償で続けたケースが対象となります。


特別寄与料を請求できる人

  • 相続人ではない親族(例:長男の妻、孫、兄弟姉妹など)
  • 被相続人に対して無償で療養看護、その他の労務提供を行った人
  • その貢献が特別なものであったと評価できる場合

ここで重要なのは、「無償」であり、かつ「特別な寄与」であることです。
単なる手伝いや日常的な関わりでは、認められない場合もあります。


特別寄与料請求の具体的な流れ

特別寄与料の請求は、次の手順に沿って行います。

1. 相続人に請求意思を伝える

まず、相続人に対して、特別寄与料を請求したい旨を伝えます。
この段階で、口頭ではなく書面で意思表示することをおすすめします。
書面にしておくことで、後日の証拠となり、トラブルを防ぐことができます。

【ポイント】

  • いつ、誰に、どのような貢献をしたか、具体的に説明する
  • 特別寄与料としてどの程度の金額を希望するかも提示する

2. 協議による合意を目指す

相続人との間で協議を行い、特別寄与料の金額について合意できれば、その内容を書面にまとめます。
合意書や示談書の形にしておくとよいでしょう。

【ポイント】

  • 客観的な証拠(介護日誌、医療記録、近隣住民の証言など)を準備しておく
  • 感情的な対立を避け、冷静に事実を説明する

3. 協議がまとまらない場合は家庭裁判所へ申立て

協議が整わない場合、家庭裁判所に特別寄与料請求の調停を申立てることができます。
調停では、家庭裁判所の調停委員を介して話し合いを行い、合意を目指します。
調停でもまとまらなければ、最終的には審判によって家庭裁判所が特別寄与料の金額を決定します。

【必要な書類】

  • 申立書
  • 特別寄与の事実を証明する資料(介護記録、領収書など)
  • 相続関係説明図(被相続人と申立人、相続人の関係を示す図)

【申立先】

  • 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

特別寄与料請求の際の注意点

特別寄与料の請求には、いくつか重要な注意点があります。

1. 請求期限に注意

特別寄与料は、
相続開始および相続人を知ったときから6か月以内
または相続開始から1年以内に請求しなければなりません(民法1050条3項)。

この期間を過ぎると、特別寄与料の請求権は消滅します。
できるだけ早めに請求手続を進めることが必要です。

【注意】

  • 相続人との話し合いが長引く場合でも、期限を過ぎないよう家庭裁判所への申立てを検討する

2. 特別寄与の証明が必要

単に「介護をした」と主張するだけでは認められません。
どの程度の頻度・内容で、どれだけ長期間にわたって療養看護などの労務提供を行ったのか、
具体的な証拠をもとに証明する必要があります。

【証拠例】

  • 介護日誌
  • 医療機関の診断書・看護記録
  • 介護保険サービスの利用記録
  • 家族・近隣住民の証言書
  • 被相続人からの感謝状や手紙

特に、無償であったこと(報酬を受け取っていなかったこと)も重要な要素です。

3. 金額の決め方に注意

特別寄与料の金額は、

  • 貢献の内容、程度、期間
  • 被相続人の財産の状況
  • 相続人間の公平
    を考慮して決定されます。

必ずしも「介護にかかった実費」や「労務提供の市場価格」と一致するわけではありません。
過去の家庭裁判所の審判例では、数十万円から数百万円程度の範囲で認められることが多いです。

現実的な金額で請求を行うことが、協議成立への近道となるでしょう。


実際のトラブル事例と対策

トラブル例1:請求期限を過ぎてしまった

被相続人が亡くなったあと、特別寄与料の請求を検討していたものの、
半年以上放置してしまい、請求権が消滅したケース。
→ 早期に専門家へ相談し、期限管理を徹底することが重要です。

トラブル例2:証拠が不十分で認められなかった

介護をしていたことは事実でも、日々の記録がなかったため、
家庭裁判所で十分な証明ができなかったケース。
→ 日常の介護状況はこまめに記録しておきましょう。


まとめ 特別寄与料の請求は早めに、準備はしっかり

特別寄与料は、相続人ではない立場でも、被相続人への貢献が正当に評価される道を開いた重要な制度です。
しかし、

  • 請求期限(6か月以内)
  • 証拠の確保
  • 現実的な金額設定
    といった注意点を押さえて行動しないと、せっかくの権利を失うことになりかねません。

東京都江東区・沖縄県那覇市にお住まいで、
「特別寄与料を請求したいが、どう進めたらいいかわからない」という方は、
早めに相続に詳しい専門家へ相談し、スムーズな手続きを進めましょう。

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