
建設業許可を維持していくうえで、非常に重要な要件の一つが「経営業務の管理責任者(以下、経管)」です。
この経管は、営業所ごとに常勤の取締役等から選任することが義務付けられているため、退任や人事異動が発生した場合には注意が必要です。
もし経管が不在の状態が続くと、建設業許可の要件を満たさないことになり、最悪の場合は許可取消しという事態に発展することもあります。
この記事では、経営業務の管理責任者を変更する際の具体的な手続きの流れや、注意すべき実務上のポイントを、東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業を営む事業者の方向けに詳しく解説します。
1.経営業務の管理責任者とは
経営業務の管理責任者とは、簡単に言えば「会社の経営に関する責任を持つ人」であり、建設業許可を維持するための中核的な存在です。
具体的には、常勤の取締役・個人事業主本人・支店長などの使用人で、建設業の経営経験を一定期間有している人が該当します。
経管の主な役割
経管は、次のような業務を統括的に行う立場にあります。
- 経営戦略の立案や予算管理
- 工事受注に関する意思決定
- 下請・元請の管理
- 契約締結や入札手続きの統括
- 経理・人事を含めた経営全般の監督
つまり、単なる名義上の役員ではなく、実質的に会社の経営に関わっている人物であることが求められます。
2.経営業務の管理責任者が不在になるとどうなるか
建設業許可は、「経営業務の管理責任者が常勤していること」が許可の前提条件です。
したがって、経管が退任・辞職・死亡などにより不在になると、その時点で建設業許可の要件を欠く状態となります。
例えば、次のようなケースでは注意が必要です。
- 経管が退職したのに、後任を選任していない
- 取締役の登記変更が遅れた
- 支店の経管が転勤となり、支店に常勤者がいなくなった
このような状態が長期間続くと、許可行政庁(東京都の場合は都庁、沖縄県の場合は県庁)から改善指導や許可取消処分を受ける可能性があります。
そのため、経管の退任や変更が見込まれる場合は、早めの準備と手続きが重要です。
3.変更手続きのタイミングと届出期限
経営業務の管理責任者の変更は「事後届出」が原則です。
変更が生じた日から2週間以内に、変更届を提出しなければなりません。
期限を過ぎた場合の対応
ただし、実際の手続きでは次のような事情により、2週間以内に届出が間に合わないこともあります。
- 新任取締役の登記に時間がかかる
- 経営経験証明資料の収集に日数を要する
- 旧経管の退任と新経管の就任時期が重ならない
このような場合は、「申立書」や「事情説明書」を添付して、やむを得ない理由を明記することで受理されるケースがあります。
ただし、理由書の提出は例外的な措置であるため、あくまで期限内の届出を原則としましょう。
4.新しい経営業務の管理責任者に求められる条件
新任の経管となるには、次のような条件を満たす必要があります。
- 常勤であること
別の会社で勤務している兼業者や非常勤取締役は原則として認められません。 - 経営経験を有していること
建設業に関して、次のいずれかの経験が必要です。- 許可業者の役員として5年以上の経営経験
- 個人事業主としての経営経験が5年以上
- 役員等に準ずる地位で建設業に従事した経験が5年以上
- 書面で証明できること
実際に経営に携わっていたことを、決算書・登記事項証明書・契約書・工事請負実績などで裏付ける必要があります。
この「経営経験の証明」が最も難しいポイントであり、証拠書類の不備が原因で届出が差し戻されるケースも多いです。
5.変更届に必要な書類
経営業務の管理責任者の変更届には、主に以下の書類を提出します。
- 経営業務の管理責任者変更届出書
- 経営業務の管理責任者の経歴書
- 経営経験を証明する資料(決算書、登記事項証明書、請負契約書など)
- 変更後の役員の登記事項証明書
- 営業所の常勤性を確認できる書類(給与台帳、住民票など)
- 申立書・事情説明書(期限超過時のみ)
提出先は、許可を受けている行政庁となります。
東京都江東区の事業者であれば東京都庁 都市整備局 建設業課、
沖縄県那覇市の事業者であれば沖縄県土木建築部 建設業許可班が担当窓口です。
6.変更手続きの実務的な流れ
経管変更の一般的な流れは次の通りです。
- 退任予定の確認と新任候補の選定
取締役の改選や人事異動のタイミングに合わせて、次期経管候補を選定します。 - 経営経験の確認と証拠書類の準備
候補者の過去の経営歴を確認し、建設業許可業者の役員や個人事業主としての実績を資料化します。 - 取締役会・株主総会の決議と登記手続き
新しい経管を取締役として登記します。 - 変更届の作成・提出
変更日から2週間以内に、必要書類を整えて行政庁に提出します。 - 確認・補正対応
提出後、内容に不備がある場合は補正を求められることがあるため、行政とのやりとりを丁寧に行いましょう。
7.よくあるトラブルと防止策
① 経管の退任を失念していた
特に小規模事業者では、取締役の改選時に経管の登録変更を忘れてしまうケースが多いです。
退任届と同時に「経管変更が必要か」を必ず確認しましょう。
② 経営経験証明が不十分
単に「在籍していた」というだけでは経営経験として認められません。
具体的な請負契約書、決算資料、工事写真などの客観的資料を残しておくことが大切です。
③ 常勤性の証明不足
遠方に住民票がある場合や、他社で勤務していると見なされる場合は不認可となるおそれがあります。
給与台帳や出勤記録など、常勤を示す資料を整備しておきましょう。
8.まとめ 経営業務の管理責任者変更は「事前準備」が鍵
経営業務の管理責任者の変更は、単なる人事手続きではなく、建設業許可の根幹に関わる重大な変更です。
退任が決まってから慌てて探すのではなく、早い段階から後任候補を確保しておくことが何より重要です。
東京都江東区や沖縄県那覇市では、建設業の人手不足や経営者高齢化が進んでおり、経管の引継ぎに苦労する事業者も少なくありません。
しかし、適切な準備と書類の整備をしておけば、スムーズに変更手続きを完了できます。
「退任予定がある」「経管を新たに立てたい」という段階で、早めに専門家に相談し、許可を維持しながら安全に切り替えを進めましょう。
建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。