建設業許可取得後に守るべき義務と定期的な報告について徹底解説

建設業許可を取得すると、会社の信用度が上がり、公共工事の受注や元請からの取引条件が改善されるなど、大きなメリットがあります。しかし、許可を得たことで義務も同時に発生します。

許可取得後の義務を怠ると、更新申請が通らない・許可が失効する・場合によっては行政処分を受けるといった重大なリスクにつながります。

本記事では、東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業を営む皆さまに向けて、建設業許可取得後に必要となる義務や定期的な報告について、実務に即して詳しく解説します。

目次

1. 許可取得後にまず行うべきこと

(1) 許可看板(建設業の標識)の掲示

建設業法第40条により、建設業者は営業所や工事現場に「建設業の標識」を掲示しなければなりません。

一般的には金属プレートやアクリル板に印刷したものが多く、玄関や事務所の目立つ場所に設置されています。

掲示すべき内容は次のとおりです。

  • 商号または名称
  • 許可番号
  • 許可を受けた業種
  • 許可の年月日
  • 許可行政庁(東京都知事、沖縄県知事、国土交通大臣など)

実は、必ずしも金属プレートである必要はなく、印刷した紙を額に入れて掲示しても法的には問題ありません。ただし、耐久性や信頼性を考えると、専門業者に依頼して標識を作成するケースが一般的です。

2. 建設業者として守るべき日常的な義務

(1) 帳簿の整備

建設業者は、工事の請負契約に関する帳簿(契約書控え、請負金額、工期、相手方情報など)を作成・保存しなければなりません。保存期間は5年間です。

江東区や那覇市の中小企業では紙媒体での保存がまだ多いですが、最近は電子帳簿保存法の利用を検討する事業者も増えています。

(2) 契約書の作成と交付

1件の工事につき請負金額が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の場合、契約書を作成し、相手方に交付することが義務付けられています。

契約内容を口約束にしてしまうと、トラブル発生時に重大なリスクを負うため注意が必要です。

(3) 標識の掲示(工事現場)

営業所だけでなく、実際の工事現場でも標識を掲げる必要があります。現場に入る下請業者や施主に対して、適法に許可を受けた建設業者であることを示す役割を果たします。

3. 定期的な報告義務

許可業者には、毎年または数年ごとに提出が義務付けられている書類があります。

(1) 経営事項審査(経審)

公共工事を請け負う場合に必要な審査です。経審では、直近の決算内容や経営状況、技術者の保有資格、社会性(社会保険の加入状況など)が評価され、点数化されます。

江東区の事業者は東京都庁、那覇市の事業者は沖縄県庁が窓口になります。毎年の決算後に提出が必要となり、公共工事を希望する業者は必須の手続きです。

(2) 事業年度終了報告書

建設業法第11条に基づき、毎事業年度終了後、原則として4か月以内に「事業年度終了報告書」を提出する必要があります。

提出先は許可を受けた都道府県(江東区なら東京都庁、那覇市なら各土木事務所)または国土交通省です。

報告内容には以下が含まれます。

  • 工事経歴書
  • 財務諸表(貸借対照表・損益計算書など)
  • 使用人数、労務状況

提出を怠ると更新時に指摘を受け、更新申請がスムーズにいかなくなる場合があります。

4. 許可の更新

建設業許可の有効期間は5年間です。更新を忘れると許可は失効し、再度新規申請からやり直しになってしまいます。

更新の流れ

  1. 更新申請書類の作成
  2. 財務諸表や経営管理責任者・専任技術者の状況確認
  3. 提出(更新期限の30日前までに行うのが安全)

更新にあたり、過去の「事業年度終了報告書」が未提出だと補正や追加提出を求められ、結果的に更新できないリスクもあります。

5. 変更が生じた場合の届出義務

許可を取得した後に、会社の状況が変わると「変更届」が必要です。代表的なものは以下のとおりです。

  • 商号や名称の変更
  • 本店所在地や営業所の移転
  • 経営業務の管理責任者の交代
  • 専任技術者の変更
  • 資本金額の変更

変更届を怠ると、次回更新時や公共工事の入札参加資格審査で問題になる場合があります。

6. 違反した場合のリスク

建設業許可業者が義務を怠ると、以下のような不利益が生じます。

  • 更新ができず許可が失効する
  • 指示処分や営業停止処分を受ける
  • 信用失墜により取引先を失う
  • 公共工事の入札参加資格が取り消される

特に江東区や那覇市では地域密着で元請・下請の信頼関係が重要であり、一度の行政処分が大きなダメージにつながります。

7. 江東区・那覇市の事業者が注意すべきポイント

江東区のケース

  • 東京都は提出書類が細かく定められており、報告書の不備による差し戻しが比較的多い傾向があります。
  • 都庁のホームページで最新の様式を確認することが大切です。

那覇市のケース

  • 沖縄県では各土木事務所が窓口ですが、離島の事業者は郵送提出を利用することもあります。提出期限を守るためには早めの準備が不可欠です。
  • 地域特有の工事(台風被害復旧工事など)に従事する事業者は、帳簿や報告書の整備を特に徹底する必要があります。

8. まとめ

建設業許可を取得した後は、以下の義務を確実に果たす必要があります。

  1. 許可標識の掲示
  2. 帳簿の整備と契約書の交付
  3. 事業年度終了報告書の提出
  4. 経営事項審査の受審(公共工事を希望する場合)
  5. 変更届の提出
  6. 5年ごとの更新申請

これらを怠ると、更新ができなかったり行政処分を受けたりと、大きな不利益につながります。

江東区や那覇市で建設業を営む皆さまは、許可取得後こそ本当のスタートラインと考え、日常的に法令遵守を意識した経営を心がけることが大切です。

建設業許可申請は行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。

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