建築一式工事の建設業許可を取得するには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。この記事では、その要件を簡潔に説明し、特に初心者でも理解しやすい形で解説します。
1. 建築一式工事とは
「建築一式工事」とは、建物の設計、施工、調整を総合的に管理する工事を指します。東京都の建設業許可のガイドラインによると、具体的には「建築確認を必要とする新築や増改築工事」を行うことができるものです。
ただし、建築一式工事の許可を取得していれば、すべての建設工事を請け負えるわけではありません。例えば、500万円以上の内装工事を行う場合には、別途「内装仕上工事業」の許可が必要です。この点を誤解してしまう方も多いので注意が必要です。
2. 常勤役員等(経営業務管理責任者)の要件
「常勤役員等」とは、会社や個人事業主が日常的に建設業務を運営・管理するための責任者を指します。法人の場合は役員、個人事業主の場合は本人または支配人の1名がこれに該当します。以下のいずれかの経験が求められます。
・建設業において5年以上の経営業務管理責任者としての経験
・建設業で5年以上、経営業務管理責任者に準ずる地位での経験
・6年以上、経営業務管理責任者を補佐した経験
なお、これらの経験は、必ずしも「建築一式工事」に限定されるものではなく、他の工事業種での経験でも構いません。
経験の証明方法
役員の経験を証明する方法としては、建設業許可を受けている会社では、登記事項証明書や建設業許可の通知書などの書類を用います。許可を受けていない場合は、請負契約書や注文書を提出して、実績を証明します。個人事業主の場合は、確定申告書を使って事業を行っていたことを証明します。
常勤性の証明方法
常勤役員であることを証明するためには、健康保険証の写しが一般的です。ただし、保険証に会社名が記載されていない場合や、後期高齢者のため健康保険に加入できない場合は、住民税の特別徴収税額決定通知書などを代わりに使用します。
3. 専任技術者の要件
専任技術者は、建築工事を技術的に管理する責任者です。建築一式工事の専任技術者となるためには、以下の資格や実務経験が求められます。
必要な資格
・一級建築士
・二級建築士
・一級建築施工管理技士
・二級建築施工管理技士(建築)
資格がなくても、建築一式工事において10年以上の実務経験があれば、専任技術者となることが可能です。
実務経験の短縮条件
建築や都市工学を学んだ学歴がある場合は、実務経験が短縮されます。具体的には、大学で関連学科を卒業している場合は3年、高校で建築学科を卒業している場合は5年に短縮されます。
実務経験の証明方法
実務経験を証明するには、勤務していた建設業者が建設業許可を持っているかどうかで異なります。許可を持つ会社では、厚生年金の記録や建設業許可の通知書などが証拠となります。許可を持たない会社の場合は、請負契約書などで実績を証明します。
常勤性の証明
専任技術者も、許可を受けようとする営業所に常勤している必要があります。常勤性の証明は、常勤役員等と同じく、健康保険証や住民税の通知書で行います。
4. 社会保険の要件
建設業許可を取得するには、適切な社会保険に加入していることが必要です。
・法人の場合は、社長1名のみの会社でも、健康保険や厚生年金に加入する必要があります。
・個人事業主の場合は、常勤従業員が5名以上いる場合に、健康保険と厚生年金への加入が求められます。
・雇用保険は、従業員が1名でもいる場合には加入が必須です。
この社会保険の加入は、建設業許可取得において重要なポイントです。違反している場合、許可が取り消されるリスクもあるため、十分な注意が必要です。
5. 財産的基礎の要件
建設業許可を取得するためには、財産的に十分な基礎を有していることが求められます。具体的には、以下の要件を満たす必要があります。
一般建設業許可の場合
・直近の決算で純資産額が500万円以上
・純資産が500万円未満の場合、許可申請の日から1か月以内の500万円以上の預金残高証明書を提出
会社設立直後の場合
設立時資本金が500万円以上であれば、財産的基礎の要件を満たします。資本金が500万円未満の場合も、預金残高証明書の提出が必要です。
特定建設業許可の場合
特定建設業許可では、さらに厳しい財務要件があります。資本金は2,000万円以上で、以下の全てを満たす必要があります。
・欠損比率が20%以下
・流動比率が75%以上
・純資産が4,000万円以上
欠格要件に注意
建設業許可を取得する際、いくら他の要件を満たしていても、欠格要件に該当する場合は許可が下りません。例えば、過去に刑事罰を受けたことがある、暴力団と関係がある、破産者であるが復権していないなどが欠格要件に該当します。許可申請の前に、自身や会社がこれに該当しないかを確認することが大切です。
まとめ
建築一式工事の建設業許可を取得するためには、常勤役員等の経験や資格、財産的基礎、社会保険の加入状況など、いくつかの厳しい要件をクリアする必要があります。特に、常勤役員や専任技術者の常勤性や実務経験の証明は、申請の成否を左右する重要なポイントです。