建設業を営む上で、必要不可欠な要素の一つが経営業務管理責任者の存在です。この役職は、会社が適切に経営され、工事が円滑に進行するための要となる人物であり、建設業許可を取得する上での最も重要な要件といえます。本記事では、経営業務管理責任者の役割や、その確認資料について東京都の建設業許可を基準に解説します。特に、建設業許可を持たない会社における取締役経験を証明するケースに焦点を当て、必要書類について詳しく説明していきます。
経営業務管理責任者の役割
経営業務管理責任者は、建設業において重要な経営判断を下す役職です。具体的には、工事の請負契約を結んだり、資金の調達を行ったり、従業員の管理をするなど、経営全般に関与する責任者としての役割を果たします。そのため、経営業務管理責任者となるためには、過去に一定期間の経営経験が必要です。許可要件に該当するためには、最低でも5年間の経験が求められます。
法人の役員であったことの証明
経営業務管理責任者としての役割を果たすには、まず法人の役員としての経験を証明する必要があります。これを証明するためには、法務局で取得できる登記事項証明書が必要です。
- 履歴事項全部証明書:直近の役員経験を証明するための書類で、現在の法人の役員情報が記載されています。新しい内容に対応する証明書として活用されます。
- 閉鎖事項全部証明書:過去に法人が存在していたが、現在は解散している場合や、役員を退任した期間を証明する際に必要となります。古い役員履歴が必要な場合に法務局から取得します。
これらの証明書を通じて、申請者が法人の取締役として登記されていた期間を確認します。東京都の建設業許可では、これらの登記情報が確実に揃っていることが重要です。
工事請負に関する証明
取締役経験がある期間、その法人が建設業許可を有していなかった場合でも、実際に建設工事を請け負っていたかを証明しなければなりません。この工事請負の実態を証明する書類としては、以下のものが求められます。
- 請負契約書または注文書の写し
契約時に交わされた書類です。これにより、具体的な工事がどのように請け負われたのかが確認できます。 - 注文請書または請求書の写し+入金記録の写し
工事を依頼し、実際に支払いが行われたことを証明します。これにより、工事の実施とその対価が明確になります。
書類の名称が異なる場合でも、内容が同一であれば問題ありません。例えば、注文書が「発注書」として記載されていても、それが同様の証明力を持つ書類と認められれば使用可能です。
証明資料の件数
経営経験期間の証明資料としては、原則毎月1件の資料を提出する必要があります。しかし、全ての月に資料を用意する必要はなく、3ヶ月未満であれば省略が認められるケースもあります。この場合、経営経験期間確認表という書類を作成して提出することが求められます。
経営業務管理責任者の常勤性
東京都の建設業許可では、経営業務管理責任者が申請会社の常勤役員であることを証明する必要があります。常勤役員とは、原則として申請会社の主たる営業所で毎日所定の時間中に職務を行っている者を指します。具体的には、他の職務や個人事業、他社での役員職と兼ねることはできません。また、通勤が常識的に不可能な遠距離に住んでいる場合も、常勤性が認められないことがあります。
常勤性を証明するために、東京都では通常健康保険証の写しを提出します。この健康保険証には、申請会社の名前が記載されていることが条件です。
高齢者の常勤性証明
経営業務管理責任者が後期高齢者であり、健康保険に加入できない場合には、後期高齢者医療被保険者証の写しと併せて、次のいずれかの書類で常勤性を証明する必要があります。
- 住民税特別徴収税額通知書の写し
- 住民税特別徴収切替届出の写し(新規認定者)
- 直近決算の法人確定申告書の写し
これらの書類により、後期高齢者でも常勤役員としての実態を証明できます。
健康保険証に会社名が記載されていない場合の対応
もし申請者が健康保険組合等に加入していて、健康保険証に会社名が記載されていない場合でも、以下の書類を提出することで常勤性を証明することが可能です。
- 健康保険・厚生年金標準報酬決定通知書の写し
- 資格取得確認及び標準報酬決定通知書の写し
- 住民税特別徴収税額通知書の写し
- 住民税特別徴収切替届出の写し(新規認定者)
- 厚生年金の被保険者記録照会回答票
- 資格取得届の写し(新規認定者)
- 健康保険組合等による資格証明書
これらの書類は、申請者が実際にその会社で働き、役員としての職務を果たしていることを裏付けるものです。
まとめ
経営業務管理責任者の確認資料は、東京都の建設業許可を取得する上で非常に重要な要素です。法人の役員経験を証明する登記事項証明書や、工事請負の実績を示す契約書類、そして常勤性を示す健康保険証や税金関連の証明書類など、必要な書類を整えて適切に提出することが求められます。これらの資料を正確に準備することで、スムーズな申請が可能となります。