近年、認知症や精神疾患などにより判断能力が低下する人が増える中で、法的なサポートが必要な場面が増えています。その一つが「保佐人」の制度です。この記事では、保佐人の役割や成年後見人との違い、選任手続きの流れを詳しく解説します。沖縄県那覇市や東京都江東区にお住まいの方にも分かりやすくまとめていますので、身近な人が必要になった際の参考にしてください。
1. 保佐人とは?
保佐人は、判断能力が著しく低下している人(被保佐人)をサポートする役割を持つ人で、成年後見制度の一つです。
保佐人が必要な状況
保佐人が支援する「被保佐人」とは、「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」(民法第11条)を指します。これは、次のようなケースに該当します:
- 契約内容を一人で十分に理解し、判断するのが難しい
- 財産の管理や重要な取引において支援が必要
保佐人は家庭裁判所の審判により選任されます。資格は必要なく、家族のほか、弁護士や司法書士などの専門家も選ばれることがあります。
2. 保佐人と成年後見人との違い
保佐人と成年後見人は似ていますが、支援する範囲や本人の判断能力の違いから、次のように役割が異なります。
項目 | 保佐人 | 成年後見人 |
判断能力の状態 | 事理を弁識する能力が「著しく不十分」 | 事理を弁識する能力を「欠く常況」にある |
代理権の範囲 | 原則なし。家庭裁判所の審判で個別に付与される | 財産に関するすべての法律行為に代理権あり |
取消権の範囲 | 民法第13条1項で定める行為について、同意がない場合は取り消せる | 財産に関するすべての法律行為(ただし日常生活行為は除く)を取り消せる |
被保佐人は、支援があれば自ら判断できる能力を一部有しているため、保佐人の役割は「補助的」な性質を持ちます。一方、成年被後見人はほとんど判断能力を有していないため、成年後見人は広範囲な代理権と取消権を持ちます。
3. 保佐人の4つの権限
保佐人が被保佐人を支援するための主な権限は以下の4つです:
3-1. 同意権
被保佐人が次の9つの重要な法律行為を行う際には、保佐人の同意が必要です。
- 元本の受け取りや使用
- 借入れや保証
- 不動産など重要な財産の売買
- 訴訟行為
- 贈与や和解
- 相続の承認や放棄
- 負担付き贈与の承諾
- 新築や改築などの大規模工事
- 長期の賃貸借契約
保佐人の同意がない場合、これらの行為は取り消すことが可能です。
3-2. 取消権
被保佐人が保佐人の同意を得ずに行った重要な法律行為について、保佐人は取り消すことができます。例えば、不動産売買契約を保佐人の同意なしに結んだ場合、保佐人が契約を無効にすることが可能です。
3-3. 代理権
原則として保佐人に代理権はありませんが、家庭裁判所の審判により特定の法律行為について代理権が付与される場合があります。これにより、被保佐人に代わって財産管理や契約を行えます。
3-4. 追認権
被保佐人が保佐人の同意を得ずに行った法律行為について、保佐人が後から「問題ない」と判断すればその行為を追認できます。この場合、行為の取り消しはできなくなります。
4. 保佐人ができる具体的な支援
4-1. 不動産取引のサポート
軽度の認知症の親が不動産を管理しきれない場合、保佐人がサポートすることで適切な取引が可能になります。
4-2. 財産の管理
被保佐人が家族や第三者に財産を浪費されるのを防ぎます。たとえば、母親が判断能力の低下を利用されて借金させられる場合、保佐人の同意が必要となるため、不正を防げます。
4-3. 不当契約の取り消し
悪質な業者による詐欺行為などで被保佐人が契約を結ばされた場合、保佐人がその契約を取り消すことが可能です。
5. 被保佐人が一人でできること
被保佐人は、日常生活に関連する行為や結婚、遺言の作成などは保佐人の同意を得ずに行うことができます。これにより、生活の自立性を保ちながら法的支援を受けられる仕組みとなっています。
6. 保佐人選任の手続き
保佐人を選任する流れは次のとおりです。
- 家庭裁判所への申立て
本人、家族、親族、または検察官が申し立てを行います。 - 診断書の提出
医師の診断書を提出して判断能力低下の状況を証明します。 - 家庭裁判所の審判
必要に応じて保佐人を選任し、代理権の範囲を決定します。
7. まとめ
保佐人制度は、判断能力が低下した本人の権利と利益を守る重要な仕組みです。特に、家族や近しい人が困難な状況に陥った場合に備え、あらかじめ制度の概要を理解しておくことが大切です。
那覇市や江東区にお住まいで制度の利用を検討している方は、ぜひ専門家に相談し、スムーズに手続きを進めましょう。