建設業許可を取得する際、申請書に添付する「財務諸表」は非常に重要な書類です。法人の場合は「決算書」、個人事業主の場合は「確定申告書」をもとに作成する必要がありますが、これらを単純に提出するだけでは済みません。建設業許可の申請用に適した形式に作り直す必要があります。
ここでは、財務諸表の作成におけるポイントや注意点を分かりやすく解説します。
財務諸表とは?建設業許可申請における役割
財務諸表は、会社や事業主の財務状況を示す書類です。建設業許可申請では、特に次の2種類が求められます。
- 貸借対照表(バランスシート)
会社の資産、負債、純資産の状況を示します。 - 損益計算書(P/L)
事業年度ごとの収益と費用、利益を示します。
これらをもとに、申請者が建設業を健全に運営できるだけの財務基盤を持っているかどうかが審査されます。
法人と個人事業主で異なる元資料
- 法人の場合
法人が提出する財務諸表は、「決算書」を基に作成します。決算書には、法人税の申告用に作成されたものが含まれますが、これをそのまま提出するわけではありません。建設業許可に適した形式へ加工が必要です。 - 個人事業主の場合
個人事業主の場合は、税務署に提出した「確定申告書」や「青色申告決算書」を基に作成します。
建設業許可用の財務諸表に必要な調整
税務申告用に作成された書類は、建設業許可申請の基準に合わせて加工が必要です。その具体例を見てみましょう。
1. 科目名の調整
建設業許可の財務諸表では、建設業特有の科目名を用います。以下はその代表例です:
- 「売掛金」 → 「完成工事未収入金」
建設工事で発生した未収金をこの科目に分類します。 - 「買掛金」 → 「工事未払金」
建設工事に関連する未払金を示します。
税務申告用の科目をそのまま記載してしまうと、建設業の審査基準に合わなくなるため注意が必要です。
2. 金額の単位
建設業許可用の財務諸表では、金額は「千円単位」または「百万円単位」で記入します。
- 例:2,000,000円 → 2,000(千円)
- 例:50,000,000円 → 50(百万円)
誤って円単位で記載すると、不備として書類が差し戻されることがあります。
3. 対象となる期間
申請には、直前の事業年度の財務諸表を使用します。たとえば、2024年3月期が終了していれば、その期の貸借対照表と損益計算書を提出します。
財務諸表作成の注意点
1. 必要な実務経験の証明との整合性
建設業許可では、財務諸表の内容が他の添付書類と矛盾しないことが重要です。特に「実務経験証明書」や「工事経歴書」の内容と一致しているかを確認しましょう。
2. 資本金や純資産の確認
建設業許可では、資本金や純資産額の基準を満たしている必要があります。これらが不足している場合、許可が下りない可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
3. 書類の提出形式
自治体によっては電子申請が可能な場合もありますが、多くの場合は紙での提出が求められます。提出先の要件を事前に調べ、正確に対応することが大切です。
建設業許可申請に向けた準備のすすめ
- 専門家に相談する
財務諸表の作成や科目の調整には専門知識が必要です。行政書士や税理士などの専門家に相談することで、ミスを防ぎ、スムーズに申請を進められます。 - 過去の資料を整理する
過去の決算書や確定申告書をきちんと整理しておくことで、必要な情報をスムーズに反映できます。 - 早めの準備を心がける
申請書類の不備が見つかると、申請が遅れることがあります。期限に余裕を持って準備を進めましょう。
まとめ
建設業許可申請において財務諸表は、会社の信頼性や経営状況を示す重要な書類です。税務申告用の決算書や確定申告書を単純に提出するのではなく、建設業特有の形式に調整する必要があります。
科目名の変更や金額単位の調整など、初めて作成する際には難しいポイントも多いですが、この記事を参考にしつつ、専門家の力を借りることでミスを防ぎ、スムーズに申請を進めることができます。
建設業許可の取得は事業の成長にとって大きな一歩です。適切な準備と正確な書類作成で、無事に許可を取得しましょう!