建設業の経審対策と公共工事入札参加までのステップについて徹底解説

~経営事項審査の準備から入札参加資格取得までの流れを解説~

建設業者にとって、公共工事の受注は安定的な事業運営の鍵となる要素です。特に東京都江東区や沖縄県那覇市のように、公共インフラ整備や都市開発が進むエリアでは、公共工事に参入する意義は年々高まっています。

しかし、公共工事の入札に参加するためには、単に建設業許可を持っているだけでは不十分です。経営事項審査(経審)という制度を経て、さらに入札参加資格審査(指名願)の手続きを踏まなければなりません。

本記事では、経審対策の基本から、公共工事入札に参加するための一連の流れについて、実務経験に基づいて解説いたします。

1. 公共工事に参加するために必要な3つのステップ

公共工事の入札に参加するには、以下の3つのステップを踏む必要があります。

  1. 建設業許可の取得(一般または特定建設業)
  2. 経営事項審査(経審)の受審
  3. 入札参加資格審査申請(指名願)

特に2番目の「経審」は、単なる形式審査ではなく、企業の経営状況・技術力・社会性などを総合的に点数化するもので、入札の“参加資格の重み”を左右する重要な制度です。

2. 経営事項審査(経審)とは?

経審とは、公共工事を発注する官公庁が、民間の建設業者を評価するための基準となる制度です。具体的には、以下のような内容を数値化し、「総合評定値(P点)」として算出されます。

審査項目とその内容:

項目内容
X1点完成工事高(売上)
X2点営業利益・利益剰余金・自己資本などの財務指標
Y点技術職員数・資格の保有状況
Z点労働福祉・防災体制・法令遵守・社会性など
W点経営状況分析(財務健全性)

この総合評定値(P点)は、発注者側の格付や指名選定、等級別の入札参加資格の判断材料となるため、公共工事での活躍度を決める指標になります。

3. 経審を受けるための準備と書類

経審は「事前準備」と「申請時の正確な対応」が結果を左右します。以下のような点に注意しましょう。

必要な準備:

  1. 決算後4か月以内に「事業年度終了報告書(決算変更届)」を提出していること
  2. 建設業財務諸表の作成(国土交通省所定様式)
  3. 元請工事の実績を示す契約書・請求書・通帳コピーの整備
  4. 保有技術者の資格証明書類(国家資格、監理技術者証など)

よくある注意点:

  • 法人税申告書と建設業財務諸表が一致していないと減点の可能性あり
  • 技術職員の在籍確認は、社会保険加入証明や雇用契約書で裏付けが必要
  • 工事経歴書に記載する工事は、「完成工事高に計上されたもの」に限る

4. P点(総合評定値)の上げ方

経審におけるP点を高めるには、次のような戦略が考えられます。

(1) 財務体質の改善(X2点、W点)

  • 利益剰余金を積み増すことで、自己資本比率を上げる
  • 借入金を減らし、負債依存体質を見直す
  • 毎年赤字決算を出していると著しく評価が下がるため、税理士と連携した節税対策と利益確保の両立が必要

(2) 技術者の強化(Y点)

  • 国家資格(1級・2級施工管理技士)を持つ職員の採用・育成
  • 技術者登録は、常勤性が原則(兼務や外注は評価されません)

(3) 工事実績の充実(X1点)

  • 元請としての大型工事を計画的に受注
  • 同一発注者との継続契約も、安定評価に繋がります

(4) 社会性項目(Z点)

  • 法定福利費の適切な支払い
  • 健康診断実施・労働災害ゼロ・建退共への加入
  • 女性・高齢者の活用なども評価対象

5. 経審を受けた後にやるべきこと

経審の結果通知が届いたら、「総合評定値通知書」を基に、次のステップである入札参加資格審査申請(指名願)に進みます。

6. 入札参加資格審査(指名願)とは?

各自治体(都道府県、市町村)や国の発注機関は、それぞれ独自の「業者登録制度」を設けています。この登録申請を行わなければ、経審で高得点を得ても入札に参加できません。

申請先例:

  • 国:国土交通省、防衛省、農林水産省など
  • 都道府県:東京都、沖縄県など
  • 市町村:江東区、那覇市など

申請に必要な書類(例):

  • 経審の結果通知書の写し
  • 建設業許可証の写し
  • 納税証明書(法人税、消費税等)
  • 工事実績一覧や誓約書
  • 技術者一覧、配置予定技術者の履歴書 など

受付時期:

  • 多くの自治体は、年1回(例:11月〜1月)の受付期間を定めている
  • 書類不備があると、受付不可または評価対象外になる場合もあるため、早めの準備が肝要

7. よくあるトラブルと防止策

ケース1:赤字決算でP点が極端に下がる

→ 財務改善の時間が必要。数期連続の黒字を目指し、事前対策が重要。

ケース2:技術職員の常勤性が否定される

→ 健康保険証、雇用契約書、賃金台帳などで常勤性を裏付けましょう。

ケース3:公共工事の実績がないと申請を諦めてしまう

→ 経審は実績ゼロでも受審可能。P点が低くてもまずは登録しておくことで、小規模案件や共同体入札の機会が生まれます。

8. まとめ 経審から始まる公共工事への道

経審と入札参加資格申請は、建設業者にとって公共工事参入の“登竜門”です。最初はハードルが高く感じられますが、段階を追って進めれば、確実に整備できます。

特に江東区や那覇市といったエリアでは、再開発事業や国の補助事業を含む中小規模の公共工事も多く、地域密着型の建設業者が活躍できるフィールドは十分に存在します。

事業の成長に向けて、「自社の強み」を数値で見える化し、公共工事を事業の柱に据える準備を今から始めてみてはいかがでしょうか。