相続手続・遺言における「寄与分」とは?~長年介護した相続人がより多く相続するために~

相続は、多くの方にとって人生で何度も経験するものではありません。しかし、いざその場面を迎えると、想像以上に複雑で感情的な問題に直面することも少なくありません。特に「寄与分(きよぶん)」については、知識がないまま話し合いに臨むと、大きなトラブルに発展してしまうこともあります。

この記事では、東京都江東区や沖縄県那覇市にお住まいの方々に向けて、「寄与分」について、具体例を交えながらわかりやすくご説明します。


目次

そもそも「寄与分」とは?

寄与分とは、相続人の中に、被相続人(亡くなった方)の財産の維持または増加に特別な貢献をした人がいる場合、その貢献を考慮して相続分を増やしてもらえる制度です。

例えば、何十年も親の介護を続けてきた長男と、まったく親に関心を持たず疎遠だった次男がいる場合、同じ割合で遺産を分けるのは不公平に思われるでしょう。こうした場合に、長男の特別な貢献を認め、相続分を増加させるのが「寄与分」の考え方です。


寄与分が認められる具体的なケース

寄与分が認められるためには、単なる親族間の助け合いを超える「特別の寄与」が必要です。具体的には次のような場合が考えられます。

1. 被相続人の事業に対する労務提供・財産提供

  • 親が営む家業(例えば小売業や農業)に無償または著しく低い報酬で長期間働き、事業の拡大・財産の増加に貢献した場合
  • 事業の運転資金を援助し、倒産を防ぐなどして財産の維持に寄与した場合

2. 療養看護による財産維持

  • 長年にわたって、介護施設に入所させず、自宅で介護を行い、施設利用費用の支出を抑えて被相続人の財産を維持した場合
  • 医療費や介護費を本人に代わって支払い、財産の目減りを防いだ場合

注意点

単に一緒に住んでいた、買い物や通院に付き添った、といった一般的な親族間の扶助行為は「特別の寄与」とは認められないことが多いので注意が必要です。


寄与分を主張できるのは誰か?

原則として、寄与分を主張できるのは相続人に限られます。
しかし、2019年の民法改正により、相続人ではない親族(例えば、被相続人の長男の妻など)でも、被相続人に特別な貢献をしていた場合には、「特別寄与料」を請求できるようになりました。これにより、さらに幅広い貢献が評価されるようになっています。


寄与分の金額はどう決まる?

寄与分は、基本的に相続人同士で話し合って決めます。具体的な考慮要素には次のようなものがあります。

  • 寄与の内容(労務提供、介護、財産給付など)
  • 寄与の期間や頻度
  • 被相続人との関係性
  • 寄与がなければ財産がどうなっていたか

これらを総合的に考慮し、相続人間で協議して決めるのが原則です。

例えば、
「母の介護を10年以上続けた長女が、施設費用を抑えることで500万円相当の財産維持に貢献した」
といった場合、500万円分を寄与分として主張することが考えられます。


寄与分の話し合いがまとまらない場合は?

実際には、寄与分の主張は簡単には受け入れられないことが多いです。

  • 「そんなに大したことをしていない」
  • 「自分だって少しは手伝った」

といった反論が出て、話し合いがまとまらないことが珍しくありません。

その場合には、家庭裁判所に「寄与分の審判申立て」を行うことができます。
家庭裁判所が、証拠や事情を総合的に審査し、寄与分を認めるかどうか、また金額をいくらとするかを判断します。

ただし、最近では遺産分割調停の手続きの中で、寄与分の問題も一緒に解決することが一般的です。
したがって、まずは遺産分割調停を申し立て、その中で寄与分について主張・立証していくことになります。


寄与分の申立てに必要な証拠とは?

寄与分を認めてもらうには、主張だけでなく「証拠」が非常に重要です。
主な証拠としては、

  • 介護日誌(介護記録)
  • 病院の通院記録
  • 被相続人名義の財産一覧
  • 介護費用や医療費を負担した領収書
  • 近隣住民や親族の証言

などが有力です。

「何年から何年まで、どのような形で貢献したか」を具体的に証明できる資料があればあるほど、寄与分は認められやすくなります。


江東区・那覇市の方へ 寄与分問題を円満に解決するために

江東区や那覇市でも、近年は高齢化により、親の介護に携わる子どもたちの負担が大きくなっています。
にもかかわらず、相続手続の場面でその苦労が報われないまま終わってしまうケースも少なくありません。

寄与分をきちんと主張し、正当に評価されるためには、

  • 日頃から介護・援助の状況を記録しておく
  • 必要な証拠を残しておく
  • 遺言書の作成時に「〇〇には特別な貢献がある」旨を記載しておく
    などの対策が重要です。

また、遺産分割協議を始める前に、専門家(行政書士・弁護士)に相談し、寄与分の主張に必要な準備をしておくと、スムーズな解決につながります。


まとめ

  • 寄与分は、被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人が、その分多く相続できる制度です。
  • 寄与の内容は、単なる親族間の扶助ではなく、財産上の効果を伴うものでなければなりません。
  • 相続人同士の協議がまとまらない場合は、家庭裁判所で解決を図ることができます。
  • 日頃から証拠をしっかり残し、主張の裏付けを準備しておくことが重要です。

寄与分を適切に認めてもらうことで、真に被相続人に尽くしてきた方の努力が正当に評価され、より円満な相続が実現できるはずです。

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