
建設業を営んでいると、「もともとの業種に加えて、他の工事も請け負いたい」という場面が出てきます。このとき必要になる手続きが「業種追加」です。
例えば、
- 内装工事をメインにしていた会社が、空調や配管なども一括して受注するために「管工事業」を追加する
- 足場工事専門の業者が、ビルリフォーム全体を請け負うために「塗装工事業」や「防水工事業」を追加する
このようなケースが代表例です。
今回は、東京都江東区および沖縄県那覇市で建設業を営んでいる方に向けて、「業種追加とは何か」「申請の注意点」「許可管理のコツ」まで、わかりやすく詳しくご説明します。
業種追加とは?新規許可と何が違う?
「業種追加」とは、すでに建設業許可を持っている事業者が、新たに別の業種の許可を取ることをいいます。
つまり、建設業許可の「上乗せ」です。
すでに許可を持っているからといって、新しい工事を自由に請け負えるわけではありません。工事の種類ごとに許可が必要なため、追加で正式な手続きを行う必要があります。
注意点
業種追加の場合も、新規許可とほぼ同じ審査が行われます。 具体的には、
- 経営業務の管理責任者(経管)の要件
- 専任技術者の要件
- 財産的基礎(自己資本500万円以上など)
- 欠格要件に該当しないこと など、すべて改めてチェックされます。
「一度許可を取ったから簡単だろう」と思っていると、思わぬところで申請が止まってしまうこともあるので注意しましょう。
業種追加で求められる主な要件
業種追加をする際には、以下の3つが特に重要な審査ポイントになります。
1. 経営業務の管理責任者(経管)
新たに追加する業種に対応できる経営経験者が必要です。
たとえば、内装工事(内装仕上工事業)だけの経験者では、配管工事(管工事業)の経験がないとみなされる場合があります。
追加業種に対応した経営経験(原則5年以上)が必要になるため、取締役や役員の経歴がポイントになります。
もし現役役員にその経験がなければ、新たに役員を入れ替えるか、登用するなどの対策が必要になることもあります。
2. 専任技術者
新たな業種に対応できる技術者の資格や実務経験が求められます。
たとえば、
- 管工事業なら「管工事施工管理技士」
- 塗装工事業なら「建築施工管理技士」や実務経験証明 などが必要です。
既存の業種で配置していた専任技術者とは別に、新たな業種にふさわしい人材が必要になります。同一人物が兼任できるケースもありますが、詳細な要件確認が必須です。
3. 財産的基礎
業種追加をするときも、500万円以上の自己資本や直近決算の財務状況の確認が行われます。
許可取得時から年数が経っていれば、財務状況が悪化している場合もあるため、最新の財務諸表をチェックしておきましょう。
許可番号と有効期限の管理に注意!
業種追加をすると、許可番号と許可年度が複数になります。
許可番号は通常、次のような形式で表されます。
- (般-28)第12345号 → 平成28年に一般建設業で許可
- (般-30)第12345号 → 平成30年に別の業種を追加許可
このように、追加年ごとに別の番号が付与され、許可更新の時期もずれる場合があります。
つまり、それぞれの業種ごとに有効期限が違うことがあるのです。
これをうっかり管理ミスすると、たとえば「管工事業だけ失効していた」ということにもなりかねません。特定業種だけ失効すると、その工事を受注・施工することができなくなり、大きな損害リスクになります。
「許可の一本化」とは?
このような煩雑な許可管理を防ぐために、建設業許可には「一本化」という制度があります。
許可の一本化とは?
- 複数の業種ごとにバラバラだった有効期限を、すべて同じ時期に揃える手続きです。
- 更新時にまとめて一本化する申請が可能です。
- 一本化すれば、許可の管理が非常に楽になり、更新忘れを防ぐことができます。
たとえば、内装仕上工事業の許可が令和6年更新、管工事業の許可が令和8年更新だった場合、どちらかの更新時に「一本化」を行い、両方とも令和8年で統一する、という流れです。
許可の一本化には、適切な時期に窓口に相談し、手続きを整える必要がありますので、早めに準備をしておきましょう。
業種追加を検討するタイミングと戦略
建設業において業種を広げることは、大きなビジネスチャンスになります。
例えば、
- 顧客から「一括して頼みたい」と言われたとき
- 元請会社から「この工事もできないか」と打診されたとき
- 事業拡大で新分野にチャレンジしたいとき
こうしたタイミングで業種追加を考えるのは自然な流れです。
しかし、やみくもに業種を増やすと、技術者の手配や財務の負担が増え、かえってリスクになることもあります。
戦略的に業種追加するポイントは、以下の3つです。
- 既存事業と親和性の高い業種を選ぶこと
→ 例:内装業者が設備工事を追加する - 実際に受注見込みがある業種に絞ること
→ 単なる将来予測より、目の前のニーズを重視 - 人材確保や技術者の資格要件を事前に満たしておくこと
→ 資格取得支援や外部技術者の契約も検討
まとめ
建設業許可における業種追加は、事業拡大の大きなチャンスですが、慎重な手続きと管理が求められます。
特に東京都江東区や沖縄県那覇市など、都市開発やリフォーム需要が高まる地域では、業種追加によって大きくビジネスの幅を広げることが可能です。
- 新たな工事を請け負うには、その業種に応じた経営経験者と専任技術者が必要
- 財務基盤のチェックも再度行われる
- 許可番号と期限の管理が複雑化するため、「一本化」での整理が重要
- 無理な業種拡大ではなく、計画的・戦略的な追加を心がける
これらを意識して、建設業のさらなる成長を目指しましょう。