相続・遺言の法律改正で導入された「特別寄与料請求制度」について〜江東区・那覇市にお住まいの方へ〜

目次

1. 特別寄与料請求制度が生まれた背景

相続において「寄与分」という制度は、従来から存在していました。これは、被相続人(亡くなった方)の財産形成や維持に特別の貢献をした相続人に対して、その貢献を考慮して相続分を増やす仕組みです。
しかし、従来の寄与分制度には大きな限界がありました。それは 「法定相続人でなければ寄与分は認められない」 という点です。

例えば次のようなケースを考えてみましょう。

  • 長男の妻が義父母と同居し、長年にわたり介護や家事を担ってきた
  • 実子である相続人は遠方に住んでおり、ほとんど介護に関与しなかった

このような場合でも、長男の妻は法定相続人ではないため、寄与分を主張することはできませんでした。介護や看病を担ったにもかかわらず、相続財産に対する権利は一切ない。この不公平感がトラブルの火種となり、多くの家庭で問題となっていたのです。

こうした課題を解消するために、2019年7月1日施行の民法改正により「特別寄与料請求制度」が新設されました。

2. 特別寄与料請求制度の内容

新制度のポイントは次の通りです。

  1. 相続人以外の者でも請求できる
     例えば、長男の妻や長女の夫、被相続人の事実上の養子の配偶者など、これまで対象外だった方も、被相続人に対して特別な貢献をしてきた場合には請求可能となります。
  2. 対象は金銭請求に限られる
     特別寄与料を請求できるのはあくまで「金銭」であり、遺産そのものを分け合う権利までは与えられていません。したがって、請求者は遺産分割協議に参加することはできません。
  3. 請求先は相続人
     特別寄与料は、被相続人の遺産から直接支払われるのではなく、相続人に対して請求する形になります。つまり、相続人全員がその負担を分担するイメージです。

3. 江東区・那覇市でよくあるケース

制度の運用を理解するために、地域ごとに見られる典型例をご紹介します。

江東区の場合

江東区はマンションや住宅地が多く、高齢の親と同居する長男夫婦や長女夫婦が介護を担うケースが目立ちます。例えば、

  • 長女の夫が義母の通院や日常生活を10年以上サポート
  • その結果、母が亡くなった後、相続人である兄弟姉妹から「あなたは相続人ではないから財産は一切分けられない」と言われる
    こうした状況で、新制度に基づき「特別寄与料」を請求できる道が開けたのです。

那覇市の場合

那覇市や沖縄本島では、土地が広く、親世代と子世代が同居する「大家族形態」も比較的多く残っています。そのため、嫁や婿が長年家業を手伝ったり、高齢の義父母を介護するケースが頻発します。

  • 例えば、長男の妻が10年以上にわたり義父母を介護
  • 実際の相続は本土に住む子どもたちが中心に進めようとする
    この場合、嫁の尽力が「なかったこと」にされないよう、特別寄与料請求が大きな意味を持ちます。

4. 特別寄与料の金額はどう決まるのか?

最も問題になりやすいのが、 「いくらが適正な額か」 という点です。

金額は法律で具体的に定められていません。そのため、介護や労務提供の内容・期間・程度を総合的に考慮して算定されます。
例えば、

  • 介護期間が長く、要介護度も高かった
  • 専門の介護施設を利用した場合にかかるであろう費用を参考にする
  • 家業に無償で従事し、会社の維持に大きな貢献をした

といった要素をもとに協議・調停で金額が調整されます。

実務上は、まず相続人と特別寄与者との間で話し合いを行い、合意に至らなければ家庭裁判所での調停・審判に委ねる流れとなります。

5. 特別寄与料請求の流れ

実際に請求する場合の流れは以下のとおりです。

  1. 請求意思の表明
     相続開始後、できるだけ早い段階で「特別寄与料を請求したい」という意思を相続人に伝えます。
  2. 協議
     相続人と請求者との間で、寄与の内容や金額を協議します。必要に応じて介護記録や領収書、診断書などの資料を揃えて主張を裏付けます。
  3. 家庭裁判所への申立て
     協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てます。裁判所が関与して金額を判断することになります。

6. 制度があっても遺言はなお重要

ここで重要なのは、特別寄与料請求制度ができたからといって、遺言や生前対策が不要になったわけではないという点です。

  • 請求額が適正かどうかは不明確で、争いになりやすい
  • 請求できるのはあくまで金銭であり、遺産そのものを取得できるわけではない
  • 調停や裁判に発展すれば、時間も費用もかかる

したがって、被相続人が元気なうちに、遺言書や生前贈与を通じて「誰にどれだけ渡すのか」を明確にしておくことが、トラブル防止に直結します。

特に江東区や那覇市では、不動産を中心とする資産が多く、現金での調整が難しいケースが目立ちます。そのため、生命保険の活用や遺言による代償分割の指定など、複数の手段を組み合わせることが推奨されます。

7. 実務での注意点

  1. 証拠の確保が重要
     介護日誌、医療費や介護用品の領収書、ヘルパー利用記録などを残しておくことで、請求の根拠が強化されます。
  2. 請求のタイミング
     特別寄与料は相続開始後に請求するため、早めに動くことが大切です。相続人による遺産分割が終わった後に請求すると、紛争が複雑化する可能性があります。
  3. 専門家への相談
     制度が新しいため、実際の金額水準や裁判所の判断基準はケースごとに異なります。行政書士や弁護士といった専門家に早めに相談することで、適切な主張や証拠準備が可能となります。

8. まとめ

2019年7月の法律改正で導入された「特別寄与料請求制度」により、相続人以外でも被相続人に特別な貢献をしてきた方が報われる仕組みが整いました。特に、

  • 江東区のように高齢の親と同居し介護を担うケース
  • 那覇市のように家族ぐるみで介護や家業を支えるケース

では、実際に活用の場面が増えています。

しかし、金額の算定は不明確でトラブルになりやすいため、最も確実なのは遺言書や生前対策による明示的な意思表示です。特別寄与料請求制度はあくまで「救済措置」であり、相続を円滑に進めるためには、事前の準備が欠かせません。

江東区や那覇市にお住まいの皆様も、ご家族の介護や生活支援に尽力されている方がいらっしゃる場合は、ぜひ早めに専門家にご相談いただき、将来の相続トラブルを未然に防ぐことをおすすめします。

行政書士見山事務所は終活相談や相続、遺言作成のプロフェッショナルです、お気軽にご相談下さい。

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